OpenAIが2026年7月に投入したChatGPT Workは、やり方を教えるのではなく作業そのものを代行するAIだ。関連製品の利用者は週1000万人を超えた。
はじめに
これまでのChatGPTは、いわば物知りな相談相手だった。「この作業はどうやればいい」と聞けば、手順を教えてくれる。だが実際に手を動かすのは、いつも自分だった。
その関係が、いま変わりつつある。OpenAIが2026年7月に投入した「ChatGPT Work」は、手順を教える代わりに、作業そのものを引き受ける。ファイルを消し、ウェブサイトを操作し、アプリを作ってしまう。相談相手が、実働する部下に変わったようなものだ。
しかも普及の速さが尋常でない。コーディング製品Codexと統合されたChatGPT Workの週間アクティブユーザーは、2026年7月時点で1000万人を超え、この4カ月でおよそ5倍に増えた。日本の会社員にとっても、遠い話ではなくなってきている。
本稿では、ChatGPT Workが具体的に何をしてくれるのか、実際に試した検証者の記録をもとに見ていく。得意なことと、まだ苦手なことの両方を、誇張せずに確かめたい。
1 「教える」から「やってくれる」へ

ChatGPT Workの本質は一言で言える。これまでのChatGPTが「やり方の説明」を返していたのに対し、Workは「作業の実行」までやってしまう点だ。
たとえば「このフォルダの画像を消して」と頼めば、従来なら手順を教えられ、自分でエクスプローラーを開いて消す必要があった。Workは、指示を受けて実際にフォルダの中身を書き換える。指示と手作業のあいだを何度も往復する手間が、まるごと消える。
OpenAIは2026年7月9日、コーディング支援ツールのCodexをChatGPT Workに統合した。デスクトップアプリを通じて、各プランの利用者へ順次開放されている。チャットボットから、実際に手を動かす「AIエージェント」への移行が、ここではっきりと形になった。
2 実際に何ができるのか──検証者が試した3つ
では、どこまでできるのか。テクノロジーメディアMakeUseOfの検証者が、通常のChatGPTでは不可能だった3つの作業を試している。時間まで計測した記録は、この製品の実力を測るうえで参考になる。
ローカルのファイルを直接操作する
まず、パソコン内のフォルダやファイルの操作だ。検証者はWindowsのフォルダを接続し、中にある画像3枚の削除を指示した。Workは1分10秒でこれをやり遂げた。「エクスプローラーを開き、フォルダを探し、自分で全部消す必要がなかった」と検証者は書く。ただし削除された画像はゴミ箱を経由せず完全に消えた点、また画像加工などより複雑な操作は何度試みても失敗した点には、注意が必要だ。
ブラウザを自律的に動かす
次に、内蔵ブラウザを使ったウェブ操作である。検証者はソフト一括インストールサイト「Ninite」で、Chrome、Firefox、VLC、GIMP、7-Zipの5つを選び、ダウンロードの直前で止めるよう指示した。Workは2分31秒で、指示どおり正確にこなし、指定された場所できちんと手を止めた。チャットの指示と手作業のクリックのあいだを行き来する必要が、ここでもなくなる。
Webアプリを作って公開する
3つ目は、Webアプリの作成とホスティングだ。「Sites」という機能を通じて、検証者は「週次の家事チェック表」を作るよう頼んだ。日々の家事にチェックを入れられる、シンプルなアプリである。Workは7分18秒で、パスワード保護つきの動くアプリを仕上げた。進捗の記録が端末ごとに閉じてしまい、複数端末で同期されない限界はあったものの、指示ひとつで実用的なツールが立ち上がったことに変わりはない。
3 声で指示する時代──音声モードの追加

さらにOpenAIは2026年7月23日、デスクトップ版に音声モード「ChatGPT Voice」を加えた。スマートフォン向けに先行導入されていた音声技術を、パソコンにも広げたものだ。
この音声モードでは、手を止めずに会話を続けながら、ひとつのやりとりから複数の作業を同時に走らせられる。エージェントが裏で処理を進めるあいだ、自分は別の作業を続けられる。ホットキーを割り当てておけば、コーディングなど他のアプリを開いたまま、すぐに呼び出せる。アイデアを口に出して話しながら、その場で文書や構成案を作らせることもできる。この音声機能は、Codexを含むChatGPT Workと連携して動く。
キーボードに向かって指示を打つ時代から、声で仕事を投げる時代へ。地味な追加のようでいて、働き方の手触りを変えうる一歩である。
4 爆発的な普及と、その限界
普及の勢いは数字が物語る。前述のとおり、CodexとChatGPT Workの週間アクティブユーザーは1000万人を超え、4カ月で約5倍に伸びた。2026年7月9日のCodex統合が、この急拡大の起点になっている。
とはいえ、万能ではない。MakeUseOfの検証者は率直に「便利だが、完璧ではなかった」と結んでいる。時間のかかるフォルダ操作は失敗することがあり、作ったアプリの進捗記録は端末をまたいで共有されなかった。任せきりにできる段階には、まだ達していない。実行するAIである以上、誤った操作がそのまま実害につながるリスクもある。重要なデータを扱わせる前には、バックアップを取っておく慎重さが要る。
5 日本のサラリーマンが明日から試すなら
ここからは記者の見立てだ。ChatGPT Workをいきなり本業の中核に据える必要はない。まずは失敗しても痛くない、周辺の作業から任せるのがよい。
たとえば、定型的な調べ物、資料の下ごしらえ、繰り返しの単純作業。こうした「やり方は分かっているが、手を動かすのが面倒な仕事」こそ、Workの得意分野である。うまくいけば、空いた時間を、機械が苦手とする判断や対人的な仕事に振り向けられる。
一方で、社内の機密データや個人情報を扱わせるときは、勤務先のルールを必ず確認したい。実行するAIは、便利さと危うさが背中合わせだ。相棒として使いこなせるかどうかは、任せる範囲を自分で線引きできるかにかかっている。
ChatGPT Workについてよくある質問
ChatGPT Workは普通のChatGPTと何が違うのか
従来のChatGPTが作業の「やり方」を説明していたのに対し、ChatGPT Workは作業そのものを実行する。パソコン内のファイル操作、ブラウザの自律操作、Webアプリの作成とホスティングなどを、指示を受けて自分でこなす点が大きな違いだ。相談相手から、実際に手を動かすAIエージェントへと役割が変わっている。
料金はかかるのか
MakeUseOfの検証によれば、ChatGPT Workはデスクトップアプリを通じて各プランの利用者へ順次開放されている。具体的な価格体系は記事では明示されていないため、最新の提供条件はOpenAIの公式情報を確認するのが確実だ。
ChatGPT Workは何が得意で何が苦手か
得意なのはブラウザの自律操作やシンプルなWebアプリの作成で、検証では正確かつ短時間でこなした。一方、複雑な画像加工や時間のかかるフォルダ操作は失敗することがあり、作ったアプリの進捗記録が端末をまたいで同期されないなどの限界も報告されている。
音声モードはどう使うのか
2026年7月23日に加わったデスクトップ版の音声モードでは、手を止めずに会話しながら複数の作業を同時に走らせられる。ホットキーを割り当てれば他のアプリを開いたまますぐ呼び出せ、話しながら文書や構成案を作らせることもできる。
情報漏えいなどのリスクはないのか
実行するAIである以上、誤操作がそのまま実害につながる可能性がある。削除がゴミ箱を経由しない事例も報告されている。機密データや個人情報を扱わせる際は勤務先のルールを確認し、重要なデータは事前にバックアップを取っておくのが安全だ。


