日曜日, 5月 31, 2026

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世界のニートはなぜ生まれるのか 各国データが映す若者排除の構造

裕福な家庭でギャップイヤーを楽しむ若者と、重いうつ病で部屋から出られなくなった若者。仕事を探しあぐねる失業者と、親の介護に追われて求職そのものをあきらめた女性。境遇はまるで異なるのに、労働統計の上ではどれも同じ「1」として数えられる。就学も就労も職業訓練もしていない若年層を指す「NEET(Not in Education, Employment, or Training)」という分類は、いまや若者の社会的排除や脆弱性を映す重要な指標となった。だが、その単純さがかえって実態を覆い隠してもいる。本稿では、概念の成り立ちから各国の固有事情までをたどり、世界のニート問題が個人の怠惰ではなく社会構造の矛盾の表れであることを、データに即して描き出す。 1 概念の系譜と統計の枠組みを解きほぐす 若年層の非労働力化・非就学化を示すNEETという概念は、単なる労働統計上の分類を超え、現代社会において若者の置かれた状況を測るリトマス試験紙となっている。ただし、これが世界各国で政策指標として導入される過程で、その定義や測定の方法には無視できない多様性と限界が生じた。マクロデータを表面的に比べるだけでは、誤った結論にたどり着きかねない。 1.1 「NEET」という言葉の誕生と国際機関による定義の分岐 NEETという言葉が生まれたのは1990年代の英国である。当初は16〜18歳の学校中退者や非就労者を対象とする労働政策の分析枠組みとして使われた。1999年、英国政府の社会的排除ユニット(Social Exclusion Unit)の年次報告書で公式に採用されると、若者が労働市場の周縁へ押しやられる状況を示す指標として、世界へ急速に広まっていった。 現在、国際労働機関(ILO)と経済協力開発機構(OECD)が用いる国際標準の定義では、NEETとは就業しておらず、かつ公式な教育や訓練も受けていない若年層を指す。ILOが示す標準的な算出式は、求職活動を行う失業者と、求職活動すら行わない非労働力人口を合算し、そこから教育・訓練を受けている者を差し引くという構造をとる。 指標算出式(構成要素) 分子(失業中の若者 + 労働力人口外の若者)-(教育・訓練を受けている失業中の若者 + 教育・訓練を受けている労働力人口外の若者) 分母総若年人口 この国際基準の眼目は、職を探している失業者と、探してすらいない非労働力人口を一つにまとめ、そのうえで教育・訓練の参加者を除いている点にある。欧州統計局(Eurostat)はこの枠組みを踏襲しながらも、分母となる総人口から、正規の教育・訓練に関する質問に答えなかった者を統計的な雑音として除く、より厳密な処理を施している。 対象となる若年層の年齢にも、国際的な統一はない。ILOや世界銀行の標準指標は15歳から24歳を対象とするが、Eurostatは15歳から29歳までと幅を広げ、日本の厚生労働省は15歳から34歳までを含める。国際比較を行う際には、こうした測定基準のずれを補正してからでなければ、数字は容易に人を欺く。 1.2 マクロ統計が覆い隠す「異質性」のジレンマ NEET率は、従来の若年失業率よりも若者の雇用課題の規模を正確にとらえる指標として評価されてきた。失業率には厄介な癖がある。進学率が上がって労働力人口、すなわち分母が縮むと、失業者の実数が増えていなくても失業率は上昇してしまう。NEET率はこの分母効果の歪みを受けにくい。 ただし、単一の数字としてのNEET率は「森を隠す木」と批判される。その内側に、まったく性質の異なる集団を抱え込んでいるからだ。モロッコの労働力調査を分析した研究は、NEETという統計上のカテゴリが少なくとも5つの下位集団に分かれ、それぞれに別個の政策対応を要すると指摘している。 第一は求職者で、短期あるいは長期の失業状態にありながら、積極的に仕事を探している層である。第二は制約者と呼ばれ、家族の介護や育児、家事労働といった避けがたい責任のために求職活動ができない。第三は失望失業者で、過去の就職活動でくり返し挫折し、意欲そのものを失って受け身になっている。第四は選択的NEETであり、裕福な家庭や厚い人脈を背景に、自らの意思でギャップイヤーや休息を選び取っている。第五は健康問題を抱える層で、身体や精神の障害、慢性疾患のために就労が難しい。 これら異質な集団を一つのNEET率へ束ねることは、政策立案者を誤った方向へ導きかねない。労働市場に関心を持たない富裕層の子弟と、重いうつ病で引きこもる若者が、マクロ統計の上ではまったく同じ「1」として数えられてしまう。とりわけ労働力調査(LFS)にもとづく統計は、調査票の設計やサンプル規模、回答者の自己申告の正確さに大きく左右され、測定誤差や実態とのずれが生じやすい。数字の粗さを承知のうえで読む姿勢が要る。 2 マクロ経済へのインパクトと労働市場の構造的欠陥 NEETの増加は、個人のキャリアが遅れるというミクロな話にとどまらない。国家全体の経済成長を鈍らせ、社会保障の土台を揺るがすマクロな脅威である。 2.1 莫大な経済的コストと「賃金の傷跡」 高水準のNEETがもたらす経済的コストは、3つの経路をたどって現実のものとなる。一つは放棄された生産性、すなわち本来生み出されたはずの付加価値が失われること。次いで人的資本の喪失で、訓練も経験も積まれないまま能力が朽ちていくこと。最後が、失業給付や生活保護といった財政負担の増大である。複数の経済推計は、このコストがEU加盟国の総GDPの約1%、OECD諸国の総GDPの0.9%から1.5%に達すると見積もっている。 事態がとりわけ深刻なのが英国だ。約100万人のNEETがもたらす累積的な年間損失は1250億ポンドにのぼると試算され、これは教育機関への国家予算全体を上回る規模である。英国政府の推計では、企業の生産性低下で年間850億ポンド、国家の財政負担で年間2120億ポンドが失われており、合わせてGDPの約7%に相当する。 無業の代償は、その時点の損失では終わらない。ミクロ経済学の実証研究は、若いころの無業期間が将来の所得に消えない傷を残す「賃金の傷跡」を明らかにしている。英国の縦断データを用いた分析では、22歳時点での1年間の若年失業が、42歳時点の賃金を13%から21%も押し下げる。米国の研究でも、22歳でのわずか6か月の失業が、30歳時点の所得を約4%下げると確認された。いま英国でNEET状態にある24歳の若者の45%は就労経験をまったく持たず、仮に労働市場へ戻れたとしても、生涯賃金で最大30万ポンドを失うと推計されている。 2.2 マクロ経済指標との相関 マクロ経済環境とNEET率のあいだには、はっきりとした構造的な関係がある。国連経済社会局(DESA)の分析によれば、一人当たり実質GDP、つまり経済発展の度合いとNEET率のあいだには強い負の相関があり、豊かな国ほど若者の労働参加が進む。所得の不平等を測るジニ係数とのあいだには正の相関が認められ、格差の大きい社会ほど若者を包み込むことに失敗している。 世界銀行の「ビジネス環境の現状」とNEET率を突き合わせると、新規創業への規制が緩く、企業の成長を妨げない環境を持つ国ほど、NEET率が低く抑えられる傾向が見える。アフリカ諸国などの例外はあるものの、おおむねこの関係は成り立つ。とはいえ、ビジネス環境ランキングで最上位にある米国でさえ13%のNEET率を抱える。企業活動の自由化だけでは若者の労働市場への統合は完結しない。より広い社会的セーフティネットや、教育制度の作り替えが要るという事実を、この数字は静かに告げている。 2.3 「学校から職業への移行」をめぐる制度比較 若者が労働市場で成人と比べてどれほど不利を被るかは、各国が築いてきた「学校から職業への移行(School-to-Work)」の仕組み次第で大きく変わる。ドイツでは若年層と成人の失業率にほとんど差がない。ところが南欧や東欧では、若年失業率が成人の3倍から4倍に跳ね上がる。 この隔たりを生む最大の要因が、労働市場と教育システムの結びつきの強さである。ドイツをはじめ中央ヨーロッパで機能してきた「デュアルシステム」は、学校での座学と、企業での実地訓練であるアプレンティスシップを同時並行で進める制度だ。失業率の低下、NEET率の抑制、長期的な雇用の安定のいずれにも効果があると実証されている。若者は企業に固有のスキルを実践のなかで身につけながら、段階を踏んで正規の労働市場へ入っていける。 デュアルシステムの伝統を持たない国でも、制度を移植した成果が現れはじめた。カナダとオーストラリアは、フルタイムのアプレンティスシップに進む前段階として「プレ・アプレンティスシップ」を導入し、若者と労働市場の接点を増やしている。カナダの制度は座学の重複を避けるために明確な単位認定を行い、オーストラリアの制度は雇用主が不適格な候補者を早めに見極める役割も担う。フランスは、企業からの賦課金免除と公的補助金を組み合わせる制度改革によって、アプレンティスシップの開始件数を年間50万人規模まで一気に押し上げた。 対照的なのが、労働市場の保護規制が強く「二重労働市場」が生まれた南欧や、後述する日本のように移行の仕組みが極端に硬直した国々である。安定した高賃金のインサイダーと、不安定で低賃金の非正規にとどまるアウトサイダーとの分断が固定化し、アウトサイダーがNEETへと転がり落ちる危険が、構造として高まっていく。 3 家族・規範・アイデンティティ 文化人類学と社会学からの接近 NEET現象は、経済的な要因だけでは説明しきれない。それぞれの社会が抱く家族の定義、若者の独立をめぐる文化的な期待、そして労働倫理といった基盤が、この現象の発生の仕方と形を決めている。 3.1 家族主義と、福祉国家の機能的な肩代わり 人類学では、近代的な核家族を普遍の制度とみなす見方が、ブロニスワフ・マリノフスキらの機能主義への批判を通じて問い直されてきた。愛情や養育という機能が、核家族という特定の空間や特定の血縁だけに割り当てられるわけではない、というのが人類学的な知見である。家族の定義も機能も文化によって大きく異なり、その違いが若者の自立支援のかたちを左右する。 比較福祉国家論の視点に立つと、地理も歴史もまるで異なる南ヨーロッパ(イタリアやスペイン)と東アジア(日本や韓国)のあいだに、驚くほどの制度的な似通いが見つかる。どちらの地域も「家族主義的福祉国家」を形づくってきた。この体制のもとでは、失業給付や若者向けの住宅手当といった公的なセーフティネットが構造的に弱く、その穴を、親世代による経済的支援と住む場所の提供が暗黙のうちに埋めている。ケアや生活保障の責任を家族から切り離す「脱家族化」は、いちじるしく遅れたままだ。 結果として、これらの地域では若者の失業や無業がただちにホームレス化や絶対的貧困へ直結しにくい。その代わり、実家での生活に長くとどまることが可能となり、NEET状態の長期化と潜在化を促す巨大な温床が用意される。守られていることが、抜け出せなさへ反転していくのである。 3.2 無業の若者を名づける言葉と社会規範 家族主義のパラダイムのなかで、親に依存しつづける若者を言い表す独自の言葉が各国で生まれ、その社会の価値観を映してきた。 イタリアでは「バンボッチョーニ」と呼ぶ。2007年、当時の経済財務相が、30代になっても親元を離れない大勢の若者を「大きな赤ん坊」を意味するこの言葉で評し、論争を巻き起こした。ドイツの「ネストホッカー」は、巣立ちの遅い晩成性の鳥になぞらえた表現で、いつまでも「ホテル・ママ」に居つづける若者を指す。日本の「パラサイト・シングル」は、1997年に社会学者の山田昌弘が提唱した概念で、学校を出たあとも親と同居し、基礎的な生活費を親に頼りながら、自分の収入は娯楽や消費に回す若者を意味する。英語圏では、いったん独立しながら経済的な事情で実家へ戻る若者を「ブーメラン世代」、青年期と成人期のあいだで立ち往生する世代を「ツイクスター」と呼ぶ。 注目すべきは、同じ現象に対する社会規範が地域で大きく異なる点である。プロテスタンティズムの倫理が根を張る北欧やアングロサクソン圏では、労働を通じた自立が道徳的な義務とされ、実家への依存には強い烙印がつきまとう。東アジアや南欧では事情が違う。20世紀に経験した「圧縮された近代化」、その急成長が終わり長い停滞へ移るなかで、若者が実家にとどまることがむしろ経済合理的な選択となった。伝統的な世間体とのあいだで揺れる感情を抱えながらも、それは社会的に許容されている。 ジェンダーとNEETの関係にも、強い文化的な偏りが刻まれている。中東や北アフリカ、南アジアの多くの国では、女性のNEET率が男性をはるかに上回る。モロッコのデータでは、15〜24歳のNEET人口のうち73.4%を女性が占め、その大半が育児や家事を強いられる制約者だ。家父長制的な規範が女性を公的な労働市場から締め出し、家庭のなかへ囲い込んでいる現実が、そのままマクロ統計に表れている。 4...

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パナソニックのビストロ最上位機が示した「鶏もも肉のアルデンテ」、家庭調理にやってきた美食の最前線

上段で鶏肉、下段でスープ。メインと汁物が1人分から同時に仕上がるスチームオーブンレンジ。パナソニックが2026年6月上旬、ビストロの最上位機NE-UBS10Eを発売する。 2026年6月上旬発売のスチームオーブンレンジ、ビストロ最上位機NE-UBS10E。ブラックの本体。 5月27日に開かれた新製品体験セッションでは、料理家の栗原心平さんがゲストとして登壇し、新機能「おまかせグリル&スープ」を実演した。鶏肉のシュクメルリ風グリルと刻み野菜のスープを、約30分で並行調理し会場を沸かせた。 体験セッションに登壇し、新機能「おまかせグリル&スープ」を実演する料理家の栗原心平さん。 ビストロの最新機種を前に、栗原さんからは電子レンジ観そのものを更新する発言「もう温めるだけの機器ではない。火を通すための調理器として使える」も飛び出した。栗原さんは、丁寧に作っても仕上がりがほとんど変わらない工程は機器に任せ、味を左右する部分にこそ手間をかければいいとコメント。「ボタン一つで誰が作っても同じ精度で仕上がる」点を評価し、プロが家電のおまかせ調理に頼ることへの抵抗を問われると「全くない」と即答した。 進化したフライ機能にも触れている。ビストロの最上位機NE-UBS10Eが、市販の調理済み冷凍フライまで対応するようになった点について、「作り置きの概念が変わる」とした。揚げてから冷凍するのではなく、自宅で作って揚げる前の状態で冷凍ストックし、食べるときにこの機能で仕上げる。弁当用のおかずや忙しい朝の段取りまで変わってくる、という見立てだ。 独自のヒートグリル皿で焼き上がった鶏肉のシュクメルリ風グリル。上段で焼き、下段でスープを並行調理する。 新しい美味さ、料理科学の最先端 筆者も体験セッションで、栗原さんが考案、ビストロが調理した「鶏肉のシュクメルリ風グリル」を実食。 完成した鶏肉のシュクメルリ風グリルと、刻み野菜のスープ。一皿で主菜と汁物が同時に揃う。 鶏もも肉は厚みがあり、火入れが難しい。家のガスレンジで肉汁を持たせたままフンワリ感を狙うと中に赤いところが残る、かといってしっかり火を入れるとパサつく、というのが定番の悩みだ。この日の鶏肉は、表現するなら「鶏もも肉のアルデンテ」だった。芯まで通っているのに、繊維がほどけるような弾力と肉汁が残っている。 一方で同席者からは、付け合わせのジャガイモがシャッキリしすぎているという声も。しかし筆者にとっては、新ジャガの食感が鶏の絶妙な火入れとよいコントラストとなり、むしろ面白いと感じた。 ここから先は私見だ。ガスレンジ、IH、レンジ加熱という火入れの土台に、炒め、揚げ、蒸しといったレイヤーが乗って料理は決まる。ビストロが見せたのは、そのどれとも違う「ビストロスタイル」と呼ぶべき仕上がりではないか。 少し褒めすぎかもしれないが、家庭の調理に新しい食の語彙が加わる可能性を感じた。フェラン・アドリアのエル・ブジが切り開いた分子ガストロノミー以降、世界の最先端ファインダイニングはスーヴィードや低温調理を使い、肉の繊維を壊さず質感そのものを設計してきた。 ヘストン・ブルメンタールのザ・ファット・ダック、コペンハーゲンのノーマ、日本ではナリサワやレフェルヴェソンスといった店が、「口中のアート」とも言われる調理科学に基づいた調理法を確立。そんな美食の前線が存在するのだ。 ましてやビストロは調理家電のトップ企業が開発した最新製品。調理科学を煮詰め、その独自の「料理表現」を完成させているなら、それは便利な調理家電どころの代物ではない。マーケティング上「便利で美味しく」に着地させているが、ユーザーが体験できるその味は、美食の最前線の可能性がある。 今回実食した鶏肉のグリルは、確実に美味かった、そして既存の調理とはどこか違う、新しい美味しさの地平を、ちょっと感じてしまったのだ(大げさで言い過ぎかも知れないが、料理をするのが好きな人がビストロで調理したものを食べたなら、このニュアンスをわかってくれると思う)。 レシピに縛られない調理への転換 独自のヒートグリル皿と20通りの加熱プログラム、スチームの組み合わせが新機能の中核。皿の裏側がマイクロ波で発熱する仕組みだ。 今回の新機能の中核は、独自のヒートグリル皿と、食材の状態に応じた20通りの加熱プログラム、そしてスチームの組み合わせだ。皿の裏側がマイクロ波で発熱する仕組みで、上段のグリルと下段のスープを並行して加熱する。1人分から対応できるのも嬉しいところ。 調理ソフトの開発拠点Panasonic Cooking@Labの明石英子さんは、20年で最大のブレイクスルーを「レシピに縛られない調理への転換」と位置づけた。単にメニューを増やしたのではなく、食材の状態や量の違いを踏まえて失敗なく仕上げる加熱制御への転換だ、と説明する。また商品企画の安井麻衣さんは、次の10年について「家庭の食を支えるパートナー、家族の一員のような存在を目指したい」と語った。設置体積は初代と比べ約68%まで小型化し、累計出荷は381万台に達している。 NE-UBS10Eのカラーはブラックとオフホワイトの2色展開。価格はオープン。 NE-UBS10Eのカラーはブラックとオフホワイトの2色。価格はオープン。便利で美味しい家電という枠の外側にもう一歩踏み出した、注目の一台だ。
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