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NFTは死んだのか 2026年、投機の灰から立ち上がるデジタル経済の地下水脈
NFT(非代替性トークン)はどこへ行ったのか。Bored Ape Yacht Club(BAYC)はどうなったのか。この2つの問いに最も率直に答えるなら、こうなる。投機の対象としてのNFTは死に、代わりに実体経済を支えるインフラとしてのNFTが立ち上がった。
2021年から2022年にかけてのプロフィール画像(PFP)バブルは、2024年の暗号資産市場の冬を経て完全に崩壊した。2026年5月、市場は「Fear of Missing Out(FOMO、取り残される恐怖)」に動かされる価格の乱高下から離れ、実用性、トークン経済の持続性、現実世界での知的財産(IP)活用といった、より地味な指標で評価される段階に入っている。
ブルーチップと呼ばれた優良プロジェクトは、未曾有の価値毀損に直面しながらも生き残りの道を模索している。Pudgy Penguinsのように物理的な小売市場へIPを展開する者もいれば、メタバースや法的権利の確立に投資する者もいる。機関投資家による現実資産(RWA)のトークン化は数兆ドル規模の市場予測を生み、米欧の法整備が完了したことで、NFT技術は金融インフラの一部としての実装段階に入った。
本稿では、2026年現在のNFT市場の全体像を、数字と構造変化の両方から解きほぐしていく。
1 投機資産としてのNFTは終わり、インフラとしてのNFTが生まれた
冒頭の問いに戻ろう。NFTは死んだのか。答えは「死んだ部分と、新たに生まれた部分がある」となる。死んだのは、BAYCに代表される高額PFPの投機市場だ。生まれたのは、所有権の証明と即時移転というNFTの本質を、企業のロイヤルティプログラム、自治体の行政サービス、機関投資家の金融商品といった実需に応用した領域である。
2026年5月時点で、フォーチュン500企業のうち40%以上がNFT技術を業務やサプライチェーンに組み込んでいる。当初は投機の象徴と見られていた技術が、3年あまりで業務インフラへと用途を切り替えた格好になる。米欧の規制当局も、本年に入って暗号資産とNFTの法的位置づけを正面から整理した。市場は熱狂を失った代わりに、社会実装の基盤を手に入れたと言える。
2 市場規模と利用者の地殻変動
2026年のNFT市場は、ピーク時と比べれば縮小したままだ。一方で、2024年の底値からは明確に回復している。資本は一部の優良資産に集中する傾向を強めており、参加者の質も変化した。
イーサリアム市場の現状
イーサリアム基盤のNFT市場を時系列で見ると、変化の幅がよく分かる。
指標(イーサリアムNFT)2022年ピーク時2024年調整期2026年現在(推定値)
月間取引高約35億ドル約4億8000万ドル約7億2000万ドル
アクティブウォレット数(30日間)約120万約28万約50万5000
月間取引高はピーク時から約79%減少した。だが、2024年の最低水準と比べれば50%反発している。アクティブウォレット数も前年から80%伸びており、市場の参加意欲そのものは戻ってきていると読み取れる。
2026年初頭の数カ月だけを見ると、別の動きも観察される。2月に3億400万ドルあったグローバルのNFT売上高は、4月には1億7500万ドルへと急減した。取引高と利用者数はともに半減した。ところが、平均販売価格は3月の30.60ドルから4月の67.38ドルへ、わずか1カ月で2倍以上に跳ね上がっている。需要全体が回復したというより、限られた資本が一部の優良銘柄に集中する「コンソリデーション」が進行している兆候と読むのが妥当だろう。
新興国が牽引する利用者層
世界全体のNFT利用者は、2026年5月時点で約1158万人に達している。今後も微増が見込まれている。市場全体の評価額は約6億8390万ドル、利用者1人あたりの平均収益は59ドル前後だ。
注目したいのは国別の分布で、上位を占めるのが新興国である点である。
順位国名NFTユーザー数
1タイ565万人
2ブラジル499万人
3アメリカ合衆国381万人
4中国268万人
5ベトナム219万人
タイ、ブラジル、ベトナムが上位を占める背景には、従来の銀行口座を持たないアンバンクト層の厚さと、GameFiエコシステムを通じたデジタル資産への親和性がある。これらの国では、NFTは芸術投資の道具というよりも、グローバル経済にアクセスするための代替的な金融インフラとして機能している。
3 Bored Ape Yacht Club、ハードモードのその後
「Bored Apeはどうなったのか」という問いには、極端な熱狂、その後の構造的な苦境、そして自己変革という3つの局面を順に追うことで答えられる。BAYCはNFTの歴史でもっとも成功し、同時にもっとも深い傷を負ったプロジェクトである。
9割の価値喪失とロイヤルティ崩壊
2022年5月、BAYCのフロア価格は128 ETHに達した。当時のレートで約35万4000ドルだ。サザビーズのオークションでは2400万ドル規模の落札も記録された。ジャスティン・ビーバーが130万ドル、エミネムが46万ドルでBAYCを購入したことが、PFPを新たなステータスシンボルに押し上げた。Yuga Labs自体も2022年、Andreessen Horowitz(a16z)などの主導で4億5000万ドルを調達し、企業評価額は40億ドル(約6000億円)に達した。当時のピッチデッキによれば、年間収益は1億3700万ドル、利益率は95%だったとされる。
その後の落差は急だった。2024年5月、フロア価格は13.395 ETH(約4万ドル)まで暴落し、ピーク時から90%の価値を失った。著名人が高値で買ったとされる個体のなかには、2026年初頭の最高入札額が2800ドル程度というものもある。事実上のワイプアウト(無価値化)に近い。2026年現在、ミームコイン主導のリスク選好の波に乗って一時的に93 ETH(約22万5000ドル)まで急騰した時期もあるが、一般的な市場統計では9.90 ETH(約2万2430ドル)から18 ETHの範囲を行き来している。
Yuga...
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「AIで何でも調べられる時代こそ、人と人のミーツを」 渋谷スマドリ5年目、女子大生が手がけた歴史展
古代のミードから禁酒法時代のスクリュードライバーまで、5つの時代をノンアルコールのカクテルで巡る。そんな体験型展示「タイムトラベル展 一杯から始まる、時代の旅」が、5月13日から31日まで表参道の体験型店舗「SUMADORI Meets」で開かれる。
企画したのは跡見学園女子大学・中西哲准教授ゼミの学生たちだ。スマドリ株式会社(東京都墨田区、アサヒビールと電通デジタルの合弁会社)が渋谷未来デザイン、渋谷区とともに進める「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」の一環として開催される。
「お酒の歴史を感じたことがない」7割の戸惑いから
企画の出発点は、学生たち自身による調査だった。約70%が「お酒に歴史的背景を感じたことがない」と答え、約90%が「自分にピッタリな飲み方を探してみたい」と回答した。歴史に触れる機会が乏しい一方で、自分なりの楽しみ方は探りたい。そんな等身大の関心が浮かび上がった。
学生たちが着目したのは「人類は時代に合わせてお酒との関わり方を自由に変えてきた」という視点だった。価値観は絶対的なものではなく、常に揺らぎ続けるもの。その認識を、展示全体の軸に置いている。発表会では「飲むか飲まないかではなく、どのように関わるかを一人一人が選べる」ことに意味がある、と学生たちは説明した。スマートドリンキングを規範や知識として教えるのではなく、選択の自由として体感してもらう設計だ。
5つの時代、3つの「ミーツ」体験
展示は3部構成で組まれている。最初の「Meet the History」では、古代、中世、大航海時代、江戸時代、禁酒法時代という5つの時代をたどり、それぞれの環境で人々がどうお酒と付き合ってきたかを学ぶ。続く「Meet the Cocktail」では、各時代をイメージしたノンアルコールカクテルを味わう。最後の「Meet Your Style」では、自分の飲み方を「飲み方ボード」に言語化し、持ち帰ることができる。
カクテルは全5種類で、いずれも900円。最古のお酒とされるミードを再現した「ミード・スピリッツ」(古代)、コーヒーでコクを加えた「グリューワイン」(中世)、ノンアルコールアブサンのハーブ感をアクセントにした「ダーク・アンド・ストーミー」(大航海時代)、梅とストロベリーで百花繚乱を表現した「プラムソーダ」(江戸時代)、シガーを模した菓子を添えた「スクリュードライバー」(禁酒法時代)が揃う。
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