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顔認証決済、VTuber 1on1、高精度AR──シナガワテックショーケース現地ルポ
4月15日夜、品川インターシティB1階の屋外広場とアトリウムで「SHINAGAWA TECH SHOWCASE」が開幕した。日鉄興和不動産が主催し、17日までの3日間、17の技術ブースと未来の食材を使ったフードメニューが並ぶ。「コミュニティ×テクノロジー」「共創×テクノロジー」「自治体×テクノロジー」を3テーマに掲げ、世界的大企業、スタートアップ、自治体が横並びで出展する構成だ。
開場直後から列が伸びたのは、トヨタ自動車とNTT東日本が組んだVTuberとの1on1コミュニケーション空間だった。トヨタの可動産事業で使うラッピング済みのモビリティを会場に持ち込み、NTT東日本の次世代光通信で遅延を抑えたうえでVTuberとの対面を実現する実証実験で、初日17時からはメディア向けの体験枠も用意されていた。
顔認証決済のDXYZは、「FreeiD」と連動した自動販売機「顔ダケで、自販機。」を展示していた。事前に顔とクレジットカードを登録すれば、財布もスマホもなしに決済できる仕組みだ。パナソニック エレクトリックワークスは次世代照明「LANTERNA」と街演出クラウド「YOI-en」を組み合わせ、来場者がスマートフォンから屋外照明の色を切り替えられる「YOI-iro」を披露。フォーラムエイトはVRプラットフォーム「UC-win/Road」を使った外壁検査・物流支援ドローンのデモ飛行を行っていた。
横並びで眺めた中で、記者が足を止めたのはソニーグループ系SoVeCのAR展示である。AR業界はこの1年で地殻変動が起きた。Meta Spark ARが2025年1月、Adobe Aeroが同年11月にサービスを終了し、NianticのWebAR基盤「8th Wall」も段階的にOSS化しつつホスティングを畳みつつある。Apple Vision Proも初代の生産縮小が報じられ、M5チップを積んだアップデート版が2025年10月に出たものの勢いは鈍い。
その逆風のなかで、SoVeCの「XR CHANNEL」はソニーのVPS技術を採用し、センチメートル単位の位置認識を売りにしている。ブースでは端末を素早く振りながら3Dオブジェクトを追跡するデモが実演されており、動きに対する表示のズレはほとんど気にならない。iPadには、4月初めにKアリーナ横浜で展開された音楽フェス「CENTRAL」のNUROブース向け3DちゃんみなARコンテンツの映像をスタッフから見せてもらった。アリーナを指ハートで出迎える巨大3Dモデルは、位置精度が甘ければ一瞬で世界観が崩れる類のコンテンツだ。精度が伴うからこそ、この規模の演出が壊れずに成立している。
自治体枠で目を引いたのは愛知県豊橋市の「TOYOHASHI AGRI MEETUP」である。全国有数の農業産出額を誇る同市は、農家とアグリテック企業のマッチング、賞金総額1000万円のアグリテックコンテスト、2年後の事業化を見据えた実証実験までを一貫して支援する仕組みや、豊橋技術科学大学との産学連携で、農業現場の「勘」をテクノロジーに置き換える取り組みがパネルで紹介されていた。
食エリアも実験場だった。サバの13倍のDHAを含むとされるスピルリナ系素材「うま藻」を使った鶏の唐揚げ、タマネギの旨味を凝縮した「タマネギぐるりこ」を使ったチリビーンズポテト、規格外魚をアップサイクルした「フィシュル」のおにぎり。ドリンクには、廃棄予定のパンの耳とフルーツの皮から作ったクラフトビール「CRUST BREAKING BREAD ALE」、日本酒を低温浄溜した「浄酎」も並ぶ。食品ロスを入口にしたフードテックが、展示フロアの緊張感をやわらげていた。
毎晩19時からはトークセッションも開催される。初日はロボット活用による社会課題解決、16日は自治体の地域課題、17日は日本企業のグローバル展開が題材だ。展示と議論がセットになって初めて、「テクノロジー×自治体」というテーマの輪郭が見えてくる。
■イベント名称
SHINAGAWA TECH SHOWCASE 2026
■開催日程
2026年4⽉15⽇(水)16⽇(木)17⽇(金)の3日間
■開催時間
17時30分〜21時00分
■会場
品川インターシティ「屋外広場」および「B1Fアトリウム」
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部活帰りのポテト、買い物帰りの今川焼き ポッポの味が冷凍食品で”帰ってきた”
「ポッポ」と聞いて、イトーヨーカドーのフードコートが浮かぶ人は少なくないだろう。部活帰りに友達と山盛りポテトをつついた放課後。母親の買い物を待つあいだにかじった今川焼き。特別なごちそうではないのに、妙に忘れられない。あの味が4月6日、冷凍食品になって家庭の食卓に届きはじめた。イトーヨーカ堂がフードコートブランド「ポッポ」と共同開発した11品目を、全国196店舗で順次販売している。
50年愛された「何でも屋」の現在地
ポッポは1975年に生まれた。ラーメン、たこ焼き、今川焼き、フライドポテト、ソフトクリーム。屋台や縁日を思わせる幅広いメニューを、手頃な値段でそろえてきた。専門店がひしめくフードコートの中で、この「何でも屋」ぶりはむしろ異彩を放つ。最盛期には148店舗まで広がったが、イトーヨーカドーの閉店が続くなかで現在は首都圏を中心に24店舗。それでも年間の来店者数は約220万人にのぼる。
閉店が決まった店舗には「ポッポ、やめないで」というメッセージが貼り出されたこともあるほどだ。
ポッポ部の白澤光晴総括マネジャーはこう話す。「ポッポは商品として尖っていないかもしれない。ただ本当に普通で、安定した味で、ついまた食べたくなる。そういうものをずっと大事にしてきた」。平日の客層はシニアが中心だが、週末はファミリーであふれる。子どもの頃にポッポで食べていた世代が親になり、今度は自分の子どもを連れてくる。そんな循環が自然にできているという。
冷凍庫から届く「ポッポらしさ」
ラインアップは今川焼き、たい焼き、たこ焼き、からあげ2種(むね・もも)、アメリカンドッグ、牛肉コロッケ、ハッシュドポテト、ソーセージピザ、マヨコーンピザ、ポテト800gの計11品。価格は399円から699円(税抜)と、ポッポらしく手頃に抑えた。
開発で意識したのは「慣れ親しんだ味」「簡単調理」「ボリューム感」の3つ。ただし、フードコートのメニューをそのまま凍らせたわけではない。ポテトだけはフードコートとまったく同じ原料だが、ほかの商品には別の素材を使っている。揚げたてを出すフードコートと、電子レンジやオーブンで仕上げる冷凍食品では、同じ原料でも同じ味にはならない。家庭で調理したときに「これはポッポだ」と思えるかどうか。その基準で素材を一から選び直した。
この挑戦には伏線がある。2025年度に先行発売した「ポッポのポテト」500gが、冷凍ポテトカテゴリの売上で1位を獲得した。フードコートで年間80万食以上を売る看板商品のブランド力が、冷凍食品の売場でもそのまま通じることが裏づけられたかたちだ。
注目したいのは、11品のなかにフードコートにないメニューが混ざっていることだ。ハッシュドポテトと牛肉コロッケは完全な新作。ピザは創業当時に扱っていたものの、その後メニューから消えており、約50年ぶりの"復活"にあたる。白澤氏は「ハッシュドポテトは個人的にも楽しみにしている商品。お客様の反応がよければ、逆にフードコートで商品化してもいい」と明かす。冷凍食品発の新メニューがフードコートに逆輸入される日が来るかもしれない。
フードコートと冷凍庫をつなぐ
新商品の背景には、冷凍食品事業の課題がある。イトーヨーカ堂の冷凍食品売上は2015年比で約1.8倍と好調だが、「冷凍軽食」に絞ると市場が微増するなか自社は横ばいにとどまっていた。ここにポッポのブランドで切り込む。2026年度は冷凍食品全体の売上を既存店ベースで1割伸ばす計画で、ポッポ単体で冷食売上の5%を占める構成を目指している。
売場の考え方も変わる。冷凍食品コーナーを加工食品の棚から総菜売場のそばへ移し、改装店舗では面積を約1.5倍に広げる方針だ。デイリー食品部の小笠原優総括マネージャーは「総菜と同じように、その日のおかずとして冷凍食品を手に取ってほしい。冷凍食品は夕方以降に売上が伸びる。総菜売場との隣接は理にかなっている」と語る。
さらにポッポは、フードコート店舗の再拡大も視野に入れている。店舗で食べてファンになった人が冷凍食品を手に取り、冷凍食品で知った人がフードコートに足を運ぶ。その循環を描く構想だ。
店の数は減った。けれどポッポが50年かけて積み上げてきた「普通でいい、普通がいい」という味の記憶は、フードコートの外にも届きはじめている。あの頃の放課後を覚えている人も、ポッポをまだ知らない人も、まずは冷凍庫に一袋、忍ばせてみてほしい。
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