木曜日, 4月 9, 2026

LATEST ARTICLES

Don't Miss

食事補助の非課税枠が42年ぶり倍増へ エデンレッドジャパンが描く「普及率50%」への道筋

企業が従業員の食事代を補助する際に所得税がかからない非課税限度額が、2026年4月1日から月額3,500円から7,500円へと倍増される。1984年以来、実に42年ぶりの改正だ。この歴史的転換を前に、食事補助サービス「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンは3月30日、福利厚生大手2社および外食企業7社との大型連携を発表した。 「日本の食事補助を世界水準へ。社会のインフラへ」。都内で開かれた発表会で、エデンレッドジャパンの天野総太郎社長はこのキーメッセージを掲げた。背景にあるのは日本と諸外国との圧倒的な格差である。欧州を中心に食事補助の導入率が50〜70%に達する国々と比べ、日本の導入率はわずか14%。 非課税枠の上限も改正前は月額3,500円と、諸外国の月額2万5千円〜3万円に対して7倍から10倍の開きがあった。天野社長は「4月から2,500品目以上の食料品値上げが予定され、エネルギーコストも上昇している。このタイミングでの倍増は、働く世代の暮らしを支える最大の防波堤になる」と語った。 改正のインパクトは数字で見ると分かりやすい。年間最大9万円が非課税対象となるため、年収700万円の従業員が同額を現金で受け取った場合の手取り約5万7千円に対し、食事補助なら約7万7千円が手元に残る。その差は約2万円。企業側にとっても、同じ手取り増を現金支給だけで実現しようとすれば約14万円の予算が必要になる計算で、非課税枠の活用は双方にとってメリットが大きい。 福利厚生大手2社との連携で「届かなかった層」へ 今回の連携の柱の一つが、福利厚生業界大手であるベネフィット・ワンとイーウェルとの提携強化だ。両社が提供するカフェテリアプランのメニューにチケットレストランを組み込み、従業員がカフェテリアポイントを使ってカードにチャージできる仕組みを整えた。 ベネフィット・ワンの古賀清常務執行役員は、自社の顧客企業の現状をこう明かした。「カフェテリア制度の中で食事補助メニューを採用している企業はおよそ25%にとどまっている。その多くは社員食堂を前提とした設計がベースで、社食を持たない企業にとっては制度化が難しかった」。 チケットレストランなら利用先や金額、時間をコントロールできるため、社食のない企業でも導入しやすいと評価する。ベネフィット・ワンの顧客基盤は約1万8千団体にのぼり、この連携を通じて食事補助の恩恵を届けられる企業の裾野は一気に広がる。 連携を記念し、両社のプラットフォーム経由で申し込む企業にはカード発行などの初期費用を無料とする期間限定の優待プランを用意。さらに、申込先を問わず2026年内の手数料を最大50%オフにするキャンペーンも実施する。 外食7社12ブランドの「食のクーポン」始動 もう一つの柱が、加盟店との連携強化だ。4月1日から、チケットレストランの公式アプリ内で松屋、吉野家(※注「吉野家」の「吉」は、正しくは「土(つち)」の下に「口」の字です)、セブン-イレブン、ガスト、日高屋、和食さと、ロイヤルホストなど7社12ブランドの割引クーポンが利用できる「食のクーポン」サービスが始まる。毎日・いつでも・何度でも使えるクーポンとして、利用者の食事体験を底上げする狙いがある。 発表会に登壇した野家ホールディングスの寺澤裕士マーケティング企画部長は、自社の原点に触れながらこう述べた。「当社は1899年、日本橋の魚河岸で創業した。当時、多忙を極める現場で働く人たちが短時間でエネルギーをチャージできる存在として支持された。その精神は今も変わらない」。日常食を扱う企業として食のインフラの役割を果たしたいという思いが、エデンレッドジャパンの構想と重なったと語った。 松屋フーズの今野慎一郎ITソリューション部長も「食事を通じて働く人を応援したいというビジョンに共感する」と応じた。 あわせて4月1日からは、AIによるレシート自動解析機能「証憑スキャン」もオプション提供を開始する。従業員がアプリでレシートを撮影するだけでAIが購入内容を数秒で解析し、食事補助の対象外品目が含まれていないかを自動判定する。非課税運用の透明性を高めることで、企業が安心して導入できる環境を整える。 「普及率14%→50%」、次は物価スライド制へ 天野社長は発表会の締めくくりで「今回の非課税枠見直しや連携強化をゴールとは考えていない。やっとスタート地点に立てたと思っている」と述べ、今後の3つのアクションを示した。 第一に食事補助の認知拡大と普及率の50%到達、第二に非課税運用に関するガイドライン策定やオンライントレーニングの提供、そして第三に物価スライド制の構築だ。42年間据え置かれた上限額が物価変動に応じて柔軟に改定される仕組みを、行政との対話や業界団体の設立を通じて実現していく方針を掲げた。 エデンレッドの創業者が1962年にフランスで食事券を「発明」してから60年余り。決済型の食事補助は欧州では国家レベルの経済政策として機能し、OECDも現金支給にはない経済波及効果があると評価している。日本でこの仕組みが社会インフラとして根づくかどうか。42年ぶりの制度改正を起点に、その試金石となる取り組みが動き出した。

Stay Connected

16,985ファンいいね
2,458フォロワーフォロー
61,453購読者購読
- Advertisement -

Latest Reviews

部活帰りのポテト、買い物帰りの今川焼き ポッポの味が冷凍食品で”帰ってきた”

「ポッポ」と聞いて、イトーヨーカドーのフードコートが浮かぶ人は少なくないだろう。部活帰りに友達と山盛りポテトをつついた放課後。母親の買い物を待つあいだにかじった今川焼き。特別なごちそうではないのに、妙に忘れられない。あの味が4月6日、冷凍食品になって家庭の食卓に届きはじめた。イトーヨーカ堂がフードコートブランド「ポッポ」と共同開発した11品目を、全国196店舗で順次販売している。 50年愛された「何でも屋」の現在地 ポッポは1975年に生まれた。ラーメン、たこ焼き、今川焼き、フライドポテト、ソフトクリーム。屋台や縁日を思わせる幅広いメニューを、手頃な値段でそろえてきた。専門店がひしめくフードコートの中で、この「何でも屋」ぶりはむしろ異彩を放つ。最盛期には148店舗まで広がったが、イトーヨーカドーの閉店が続くなかで現在は首都圏を中心に24店舗。それでも年間の来店者数は約220万人にのぼる。 閉店が決まった店舗には「ポッポ、やめないで」というメッセージが貼り出されたこともあるほどだ。 ポッポ部の白澤光晴総括マネジャーはこう話す。「ポッポは商品として尖っていないかもしれない。ただ本当に普通で、安定した味で、ついまた食べたくなる。そういうものをずっと大事にしてきた」。平日の客層はシニアが中心だが、週末はファミリーであふれる。子どもの頃にポッポで食べていた世代が親になり、今度は自分の子どもを連れてくる。そんな循環が自然にできているという。 冷凍庫から届く「ポッポらしさ」 ラインアップは今川焼き、たい焼き、たこ焼き、からあげ2種(むね・もも)、アメリカンドッグ、牛肉コロッケ、ハッシュドポテト、ソーセージピザ、マヨコーンピザ、ポテト800gの計11品。価格は399円から699円(税抜)と、ポッポらしく手頃に抑えた。 開発で意識したのは「慣れ親しんだ味」「簡単調理」「ボリューム感」の3つ。ただし、フードコートのメニューをそのまま凍らせたわけではない。ポテトだけはフードコートとまったく同じ原料だが、ほかの商品には別の素材を使っている。揚げたてを出すフードコートと、電子レンジやオーブンで仕上げる冷凍食品では、同じ原料でも同じ味にはならない。家庭で調理したときに「これはポッポだ」と思えるかどうか。その基準で素材を一から選び直した。 この挑戦には伏線がある。2025年度に先行発売した「ポッポのポテト」500gが、冷凍ポテトカテゴリの売上で1位を獲得した。フードコートで年間80万食以上を売る看板商品のブランド力が、冷凍食品の売場でもそのまま通じることが裏づけられたかたちだ。 注目したいのは、11品のなかにフードコートにないメニューが混ざっていることだ。ハッシュドポテトと牛肉コロッケは完全な新作。ピザは創業当時に扱っていたものの、その後メニューから消えており、約50年ぶりの"復活"にあたる。白澤氏は「ハッシュドポテトは個人的にも楽しみにしている商品。お客様の反応がよければ、逆にフードコートで商品化してもいい」と明かす。冷凍食品発の新メニューがフードコートに逆輸入される日が来るかもしれない。 フードコートと冷凍庫をつなぐ 新商品の背景には、冷凍食品事業の課題がある。イトーヨーカ堂の冷凍食品売上は2015年比で約1.8倍と好調だが、「冷凍軽食」に絞ると市場が微増するなか自社は横ばいにとどまっていた。ここにポッポのブランドで切り込む。2026年度は冷凍食品全体の売上を既存店ベースで1割伸ばす計画で、ポッポ単体で冷食売上の5%を占める構成を目指している。 売場の考え方も変わる。冷凍食品コーナーを加工食品の棚から総菜売場のそばへ移し、改装店舗では面積を約1.5倍に広げる方針だ。デイリー食品部の小笠原優総括マネージャーは「総菜と同じように、その日のおかずとして冷凍食品を手に取ってほしい。冷凍食品は夕方以降に売上が伸びる。総菜売場との隣接は理にかなっている」と語る。 さらにポッポは、フードコート店舗の再拡大も視野に入れている。店舗で食べてファンになった人が冷凍食品を手に取り、冷凍食品で知った人がフードコートに足を運ぶ。その循環を描く構想だ。 店の数は減った。けれどポッポが50年かけて積み上げてきた「普通でいい、普通がいい」という味の記憶は、フードコートの外にも届きはじめている。あの頃の放課後を覚えている人も、ポッポをまだ知らない人も、まずは冷凍庫に一袋、忍ばせてみてほしい。
- Advertisement -

EDITOR PICKS

POPULAR POSTS