一色萌のアイドル、色々。第18回 「アイドルと”強さ”」

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こんにちは。プログレアイドル・XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

史上最大規模とも言われる台風が日本を通過して間もない今日この頃、皆さまいがかお過ごしでしょうか。

大きな被害のあった地域にお住まいの皆さまにおかれましては、心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い再建をお祈りいたします。

台風が去ってからというもの、東京は急に気温が低くなりました。

私は春と秋が好きなので空気がほんのり冷たくなってキンモクセイの香りがどこからか漂ってくると、少しうれしい気持ちになります。

ですがそんな気持ちとは別の問題として、私は季節の変わり目や気圧の変化で心身ともに調子をよく崩します。

これは毎シーズンのことで来ることがわかっている不調なわけですが、今回は急な冷え込みのわりに体調がそこまで悪くない。

やったー!と思ったのもつかの間、身体面で持ちこたえた分、精神面の不調が割り増しでやってきてしまいました。

体は元気なのに部屋にいる間じゅう、からっぽを煮詰めて焦げ付いたような無気力と暗い気分でどんよりと布団に横になる以外のことができないのです。

こういう時はひたすら安静にして、したいと心から思ったことだけするに限ります。

下手に元気を出そうと張り切ると空回って失敗して悪化する、ということを今までの経験で知っているので、最近は以前より気楽に構えてこの「最悪な気分で何もできない期」を乗り越えられるようになりました。

綿が詰まったような頭で長い時間ぼんやりと壁を見つめていると、いつもどこかのタイミングで

「強くなりたいなぁ」

という言葉が浮かんできます。

具合が悪いときに発するこの言葉は、まぁ単純に体が強くなって健康面が安定すればいいのになぁ、という意味に受け取ることもできますが、無意識の状況でなお、出てくる言葉は深層心理を反映しているのでは?というようにも思えます。

ならば一考の価値あり。

というか今は頭の中にこびりついた「強さ」という言葉が何につけてもつきまとってくるので、今回はその感情に向き合ってみたいと思います。
しばしお付き合いくださいませ。

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夜の深い時間にSNSを開くと「強くなりたい」というアイドルさんの呟きを見かけることがままあります。

ふとした瞬間に思わずその言葉が口をついて出るのは、どうやら私だけではないようです。

そんなとき私は、孤独の色を濃く感じる時間帯に、同じような気持ちの子がいるという事実に少し安心感を得るとともに、この子たちにとっての「強さ」はどんなものなんだろうということに興味がわきます。

か弱く脆い、中の人の心を思わずにはいられないのです。

そもそも「強さ」って、なんなのでしょうか。

人としての強さ?アイドルとしての強さ?

何に対して、私たちは強くあろうとしているのでしょうか。

きっと腕力や握力など、物理的な力が強くなりたいという意味でないことはわかります(全くいないわけではないのでしょうが、ごく少数でしょう)。

となると、目に見えない部分の強さが件の問題になってくるわけですが、目に見えない分、外から見てその「強さ」を完全に理解することは難しいでしょう。

きっと本人ですらなんとなくの雰囲気で使っている場合もよくあることで、正解があらかじめ定義されているとも限りません。

ですが、人気のないタイムラインにぽつりと浮かんだ「強くなりたい」からは、本来は強い・弱いで表すことのできない価値観をもふんわりと包んで補強しているようなニュアンスを感じます。

「やばい」という言葉が若者言葉として浸透していくに従って、本来のネガティブな意味だけではなくポジティブな意味でも使われるようになったように、もともと多くの意味を持っている「強い」という言葉もまた、さらに広くて複雑な意味を獲得している最中なのではないかと思うのです。

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では、私にとっての「強さ」とは、結局のところいったい何に対するものなのでしょうか。

少し考えてみたところ私の場合、求めているのは

「精神力の強さ」と、「生存力の強さ」

であるような気がしてきました。

「強くなりたい」

アイドルとして活動を始めるよりもずっと前から、私にとってその言葉はおまじないのようなものでした。

周りの子と比べて特段体が弱かったり小さかったりしたわけではなかったので、ここでいう「弱さ」はとりわけ精神面においてのもので、無邪気で愛らしい子どもらしさを存分に謳歌すべき時期から面倒くさい考えごとばかりして一人で思い悩む私は可愛げがなくて、愛しにくい、子どもとして「弱い」存在だったと思います。

「私は弱い」という前提は小学校に入るよりも前から漠然と、私が自身に対して下してきた絶対評価であり相対評価でした。

いつもいつでも私は弱くて、何においてもひとつも強くないからこそ、「強くなりたい」と願うこと自体が少し心を強くしてくれる、そんな言葉でした。

そしてそんな私にとって、いつも笑顔で、見ると元気を分けてもらえて、たくさんの人々の注目を浴びてきらきら輝くアイドルは精神的に「強い」人の象徴でした。

弱い自分を変えたくて、強い存在に憧れました。

私がアイドルになりたいと思った理由の中にも、「精神力の強さ」への追求が潜んでいたのです。

一方で、実際にアイドルになってから生まれたのが「生存力の強さ」への思慕です。

今までにない密度で人と関わって、歌やダンスや言葉で表現をするうちに、自分自身の目標達成だけでなく、他人に対して作用したいという欲求がわいてきました。

社会においては、よほどの事情がない限り生まれた途端に戸籍が登録されて、価値の有無に関係なく事務的な処理で存在が認められます。
しかし、いつだったか、私が私の意思によって生み出したアイドル・一色萌の存在は誰かに価値を見出されなければ意味がなく、簡単に死んでしまう!と気がついた瞬間がありました。

もともといなかったもので、いてもいなくてもいいもの。

強くならないと死んじゃう。周りよりも弱かったら死んでしまう。

そう思ったのです。

前回の連載でも少し触れましたが、私にとってアイドルの終わりは、「卒業」ではなく「忘れられること」です。

つまり生きていても誰かに認知され、誰かにとって多かれ少なかれ価値のある存在でなければ生きていても死んでいるのと変わりないのです。

存在自体が確かな形で担保されていないから、「いつ死んでもいいや」とか言っていられないわけです。我ながら余裕がないなぁと思いますが、なにぶん生きるのに必死なのでそこはちょっとだけ大目に見ていただけましたらと思います。

多くの人の記憶に残って、存在を肯定してもらうための力。

人を惹きつける魅力、引力を強くしたい。

そのためには総合的にさまざまな力を強化する必要があるわけですが、これを総じて現時点では「生存力の強さ」としたいと思います。

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アイドルのあり方が急速に多様化した分、新しい価値観もまた急速に構築され、発展途上の不完全な「強さ」が生まれます。

そうやって生まれたある個人にとっての「強さ」はまだ他の誰のものでもなく、その高みにまだ誰も到達していないからこそ、挑戦している最中のもどかしい想いが「強くなりたい」という言葉に集約されるのではないでしょうか。

オリジナルの単位の強さは他の誰とも比べられるものではないはずです。

「強さ」に執着し憧憬するのは、自分自身の中にある「弱さ」と今まさに向き合っているからこその姿なのかな、と感じます。

他人事のように書いてしまいましたが、それは私も例外ではなく。

半ばそうであってほしいという希望も込みでそう思います。

まだ得体のしれない「強い自分」にいつかなることができたとき、「強い」に代わる表現が出てくるのだとしたら。

それはどんな言葉だろうと考えると、少しわくわくしませんか。

【プロフィール】

一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと

WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

調布FM「キスエクのラジオ、キク!?」毎週月曜日19:00〜 レギュラー出演中

<一色公式Twitter> https://twitter.com/hiiro_moe

<公式Twitter> https://twitter.com/xoxo_extreme

<公式YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA

<取材・オファー等> Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】

xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)

楠 芽瑠・一色 萌・小嶋 りんの3名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。プログレとは、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等が特徴の楽曲です。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2018年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。

同年2月4日に記念すべき初のワンマンライヴを鹿鳴館にて開催。プログレッシヴロックを知っている人も知らない人も楽しめるLIVEと評判。

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