AIを日常的に使う親の75パーセントが、子の宿題でのAI利用を認識していた。一般家庭の数字ではない点に注意が要る。
1 見出しになった数字と、その中身
オーストラリアで実施された調査が報じられた。学齢期の子を持つ親の4分の3が、子どもが宿題や調べ物にAIを使っていると答えた、というものである。
数字だけ見ると衝撃的だが、調査の設計を読むと印象が変わる。
実施したのはTrendLife、対象は1,030人のオーストラリアの親。ただし選定条件がある。汎用AIを日常的に使っており、かつ学齢期の子どももAIを使っている家庭、という条件だ。
つまりこれは、すでに親子ともAIを使っている家庭の中での75パーセントである。オーストラリアの全家庭を代表する数字ではない。報じた媒体自身がその限界を明記している。
2 それでも、この調査には読む価値がある
代表性がないから無意味かというと、そうではない。むしろ「AIが家庭に入ったあと何が起きるか」を先取りして見せているという点で、参考になる。
年齢別の数字が出ている。10代の子が日常的にAIを使っていると答えた親は52パーセント。5歳から12歳では32パーセントだった。小学生の3人に1人が日常的に使っている計算になる。
そして、いちばん重要な数字はここだ。
子どものAI利用を定期的に確認したり話し合ったりしていると答えた親は、42パーセントにとどまった。

3 使わせているのに、中身は見ていない
つまり、AIを自分でも使っている親でさえ、半数以上は子どもの使い方を把握していない。
これは「AIを使わせるべきか」という問いより、はるかに手前の問題である。使わせる・使わせないを議論する前に、何にどう使っているかを見ていない状態が先に来ている。
理由は想像がつく。親自身がAIを便利に使っているので、子が使うことにも抵抗がない。抵抗がないので話題にならない。話題にならないので中身を知らない。禁止されているものなら隠れて使うぶん話題になるが、容認されているものはそのまま透明になる。
4 読書感想文という、日本最大の激戦区
日本に置き換えたとき、この話が最も具体的になるのが読書感想文である。
課題図書を読み、原稿用紙に数枚書く。この宿題は、生成AIが最も得意とする作業とほぼ完全に重なっている。本のあらすじは学習済みで、感想の型もいくらでも出せる。指定枚数に合わせて長さも調整できる。
親の立場で困るのは、出来上がったものを見ても判別がつきにくいことだ。誤字がなく、構成が整い、語彙が少し背伸びしている。それだけでは証拠にならない。
問題なのは「AIを使ったこと」ではない
ここで論点を整理しておきたい。読書感想文の目的は、うまい文章を提出することではない。本を読み、自分が何を感じたかを言葉にする経験を積むことにある。
AIに全部書かせた場合、失われるのは点数ではなく、その経験である。逆に言えば、経験が残る使い方なら問題は小さい。
たとえば、自分で書いた下書きをAIに読ませて「分かりにくい箇所はどこか」と聞く。使うべき言葉が出てこないときに「こういう気持ちを表す言葉を10個挙げて」と頼む。これらは経験を奪わない。
丸ごと生成させて提出する使い方と、詰まったところを補助してもらう使い方は、同じ道具でもまったく別の行為である。
親ができる、いちばん簡単な確認
出来上がったものを疑う代わりに、書いた本人に聞けばいい。
どの場面がいちばん印象に残ったか。主人公のどこが気に入らなかったか。この一文はどういう意味で書いたのか。自分で考えて書いたなら、すぐに答えが返る。返らなければ、そこが出発点になる。
責める必要はない。42パーセントしかやっていない「一緒に見る」を、やるかやらないかだけの話である。
5 禁止は、たぶん機能しない
小学生の3人に1人が日常的に使っている段階で、家庭内の全面禁止はほぼ実効性がない。学校で使い、友人の家で使い、スマートフォンから使う。
現実的な落としどころは、使ってよい場面と、使ってはいけない場面を一緒に決めることだろう。調べ物には使ってよい。提出物を丸ごと書かせるのは駄目。分からない言葉を聞くのはよい。考える工程を飛ばすのは駄目。
線の引き方は家庭ごとに違っていい。重要なのは、線が引かれていない家庭が半数以上あるという事実のほうである。
よくある質問
「親の4人に3人」という数字はどこまで信用できるのか?
調査の対象が限定されている点に注意が必要である。TrendLifeが実施した調査は、汎用AIを日常的に使う親1,030人で、かつ学齢期の子どももAIを使っている家庭を対象としている。つまりAIがすでに浸透した家庭の中での割合であり、オーストラリアの全家庭を代表する数字ではない。報じた媒体自身もこの限界に触れている。
子どもが読書感想文にAIを使うのは問題か?
使い方による。丸ごと生成させて提出する場合、本を読んで自分の感じたことを言葉にするという経験そのものが失われるため、目的から外れる。一方、自分で書いた下書きの分かりにくい箇所を指摘させたり、表現の候補を挙げさせたりする使い方は、考える工程を残したまま補助を受けることになる。同じ道具でも行為としては別物である。
AIを使ったかどうか、親はどう確認すればよいか?
文章そのものを疑うより、本人に質問するほうが確実である。どの場面が印象に残ったか、主人公のどこが気に入らなかったか、この一文はどういう意味かといった問いに自分の言葉で答えられるかを見る。調査では、子どものAI利用を定期的に確認したり話し合ったりしている親は42パーセントにとどまっていた。
家庭で全面禁止にするのは有効か?
実効性は低いと考えられる。同じ調査では5歳から12歳の32パーセント、10代の52パーセントが日常的にAIを使っており、学校や友人宅、スマートフォンからも接触できる。使ってよい場面と使ってはいけない場面を一緒に決めるほうが現実的で、線の引き方は家庭ごとに異なってよい。


