占いにベンチャー資本が流れ込んでいる。MidjourneyによるCo-Star買収を号砲に、AI占いの起業が相次ぐ。
1 SoHoのオフィスで開かれた夜
ニューヨークで、ローンチパーティーが開かれた。披露されたのはLoraという、生成AIと出生図の分析を組み合わせたソーシャル占星術アプリである。
主催は創業者のミシェル・パーソンズ。会場は、プレシード段階で出資したベンチャーキャピタルAlleyCorpのSoHo本社だった。投資家とテック系の起業家が集まり、話題は不安と、恋と、金の引き寄せだったと報じられている。
この光景を笑うのは簡単だが、集まった顔ぶれを見ると、笑い話では済まない。占いは、いまベンチャー投資の対象になっている。
2 号砲は、画像生成AIの会社が鳴らした
流れが変わったのは2026年7月24日である。画像と動画の生成AIで知られるMidjourneyが、ソーシャル占星術アプリのCo-Starを買収した。BloombergとTechCrunchが報じ、取引条件は公表されていない。
Co-Starは出生図を作って友人と共有する使い方が中心で、月間アクティブ利用者はおよそ430万人。AIと人間の書き手を併用して、星占いや相性診断を配信してきた。
MidjourneyのCEOデビッド・ホルツは、Co-Starは創業者バヌ・グラーの管理と方向性のもとに完全に残ると述べている。グラー自身も残留する。
画像生成の会社が、なぜ占いアプリを買うのか。答えは消費者向けアプリの運営経験である。Midjourneyは強力な生成技術を持ちながら、一般消費者が毎日開く自社アプリを持っていなかった。Co-Starはそこを埋める。

3 なぜ占いとAIの相性がいいのか
占いのコンテンツは、AIにとって都合のいい性質をいくつも持っている。
正解がない。外れても検証されない。むしろ抽象度が高く、どの利用者にも当てはまる文章のほうが評価される。そして毎日更新でき、利用者は毎日開く。
Loraが売りにしているのは、恋愛、キャリア、自己成長にまたがって、利用者の行動の反復パターンを見つけるAIエンジンだという。言い換えれば、その人が繰り返し同じ悩みを入力していることを検出して、それを星の配置と結びつけて返す仕組みである。
当たっていると感じさせる技術は、かなり前から知られている
心理学には、誰にでも当てはまる曖昧な記述を「自分のことだ」と感じてしまう現象が知られている。バーナム効果と呼ばれるものだ。「本当は人見知りな面がある」「頑張りすぎて疲れることがある」。この種の文章は、ほぼ全員が当たっていると感じる。
生成AIは、この種の文章を量産することにかけては人類史上もっとも優秀な道具である。しかも入力された悩みの語彙をそのまま反射できるので、精度が上がったように錯覚させることまでできる。
4 売っているのは占いではなく、不安である
パーティーのメニューが、不安と愛と金の引き寄せだったという描写は本質を突いている。
占いアプリが解決しているのは、星の運行に関する知的好奇心ではない。将来が見えないこと、関係が続くか分からないこと、金が足りないこと。この3つへの不安を、扱える形に切り分けて毎日少しずつ返している。
だからこそ事業として成立する。不安は尽きないし、答えが出ないほど再訪が増える。
日本の読者にとっての現実的な論点
日本でも占いは根強い市場を持ち、アプリ、電話占い、チャット占いが並んでいる。ここに生成AIが入ってくると、供給コストがほぼゼロになる。鑑定士を抱えずに24時間答えを返せるからだ。
利用する側として押さえておくべき点は三つある。
一つ、無料の範囲でどこまで返ってくるかを先に確かめる。不安が高まったところで課金に誘導する設計は、占いに限らず定番の手法である。
二つ、入力した悩みがどう扱われるかを見る。恋愛、健康、収入、家族関係。占いアプリに打ち込む内容は、個人情報のなかでも特に機微な部類に入る。
三つ、生成AIの占いは「占い師の見立て」ではなく「統計的にもっともらしい文章」であると理解しておく。当たっていると感じたなら、それは自分の悩みが言語化されただけかもしれない。
5 それでも、この市場は伸びる
冷静に見れば中身は文章生成だが、だからといって需要が消えるわけではない。むしろ供給側のコストが下がるぶん、価格は下がり、利用者は増える。Midjourneyのような資本力のある会社が入ってきた以上、体験の質も上がる。
投資家が集まる理由は単純である。人間の不安は景気に左右されず、しかも生成AIと相性がいい。SoHoの夜に集まったのは、そういう計算をした人たちだった。
よくある質問
AI占いは普通の占いと何が違うのか?
鑑定する主体が人間ではなく生成AIである点が異なる。出生図などの入力をもとに文章を生成するため、24時間対応でき供給コストが極めて低い。一方で内容は統計的にもっともらしい文章であり、占い師の経験に基づく見立てとは性質が違う。当たっていると感じる背景には、曖昧な記述を自分に当てはめてしまうバーナム効果が働いている。
なぜMidjourneyは占いアプリを買収したのか?
消費者向けアプリの運営経験を得るためとされる。Midjourneyは画像・動画の生成技術を持つ一方、一般利用者が日常的に開く自社アプリを持っていなかった。買収したCo-Starは月間アクティブ利用者が約430万人で、出生図の共有を軸にした消費者向けサービスの知見を持つ。2026年7月24日に発表され、取引条件は公表されていない。
占いアプリを使うときに注意すべきことは?
無料でどこまで使えるかを先に確認すること、入力した悩みの扱いを利用規約で確かめること、そして生成された文章を専門家の判断と混同しないことの3点である。恋愛、健康、収入、家族関係といった入力内容は機微な個人情報にあたるため、保存や学習の扱いは事前に見ておいたほうがよい。
なぜ占いにベンチャー資本が集まるのか?
不安に対する需要が景気に左右されにくく、コンテンツの正誤が検証されないため生成AIと相性が良いからである。毎日更新でき再訪も見込める。実際にAlleyCorpのようなベンチャーキャピタルがプレシード段階から出資し、Midjourneyのような資本力のある企業も参入している。


