パナソニックが9月4日、東京ミッドタウンで可変圧力IHジャー炊飯器「ビストロ」X9Eシリーズの体験会を開いた。9月上旬に発売する最上位モデルで、5.5合炊きのSR-X910Eと1升炊きのSR-X918Eをそろえる。新米の季節を前にした発表会だが、この日の説明で繰り返し語られたのは新米そのものではなかった。
新米は美味しく炊けて当たり前。しかし今回発表されたモデルは、精米から時間が経って乾燥した米すらも美味しく炊ける、そんな実力を目の当たりにしたーー
冷蔵していない家庭が6割
同社が今年7月に600人へ行った調査では、米を冷蔵せず常温で保存している家庭は64.5%。1袋を食べきるまでに2カ月以上かかる家庭も約4割ある(筆者もまさにそう)。一方、米の含水率は精米後2週間で約2%減り、賞味期限は精米日から1カ月から2カ月程度とされる。
つまり、多くの家庭では、買ったときよりも不味くなった米を炊いているということだ。
炊飯器商品企画課課長の林田章吾氏は「お客様がどのようなお米を選び、炊飯されるのかがわからない中でも、おいしい炊き上がりを常に提供していく必要がある」と話す。
糊化の温度帯に30秒早く到達

新製品の特徴となるのが独自の炊き技「Wおどり炊き」、そしてそれを構成する高速交互対流IHだ。内釜の底面と底側面に配したIHコイルを高速で切り替えて泡の熱対流を起こす技術で、今回は内側への対流を強める制御を加えている。
狙いは炊き上げの工程にある。米が糊化してご飯になる温度帯は60度から98度で、ここに早く達するほど糊化の時間を長く確保できる。

最新機種は従来機のX9Dと比べ、この温度帯への到達を30秒早めることに成功。結果として乾燥した米でも粒表面のハリとみずみずしさが約6%、粒の中のやわらかさが約7%高まったという。ただし林田氏は、火力を強めればいいという話ではないと釘を刺す。米の状態に合っていなければ、焦げついたり、かさついたりするだけだからだ。
水加減は計量カップ通りでいい
質疑では、家庭でできる工夫として水加減を問う声が上がった。Panasonic Cooking@Lab上級主幹技師の加古さおり氏の答えは拍子抜けするほど単純で、基本は計量カップ通りに合わせてほしいというものだった。X9Eは4つのセンサーで米がどれだけ吸水したかを細かく捉えながら炊くため、日々の多少のばらつきは炊飯器の側が火加減で補正する。良かれと思って水を足したり引いたりするより、そのまま炊くほうがいいという。
試食に使ったのは精米後2週間のつや姫
会場では炊きたてのご飯が配られた。最上位のX9Eシリーズと、ベーシックモデルのN3Eシリーズで炊いたもの。米は令和7年産のつや姫を精米後2週間ほど置いたもので、加古氏は「ご家庭でよくあるお米」と説明。銘柄の格ではなく、家庭の実態に寄せた選定だ。コシヒカリを避けたのは、猛暑で品質を落とした米が全国で少なくないためだという。



違いは優劣ではなく表現

食べ比べてみて筆者が受けた印象は、どちらが分かりやすくおいしいか、という話ではなかった。最上位機のご飯には潤いのある艶やかさがあり、ベーシックモデルのご飯には粒の立った甘みがある。方向は違うのに、どちらも十分に仕上がっている。優劣をつけようとすると、そこで手が止まる。
レベルが上がりきってしまうと、残るのは表現の違いなのだろう。「ちいかわ」のちいかわとハチワレ、「機動戦士ガンダム」のアムロとシャア、「SLAM DUNK」の流川楓と桜木花道。どちらが上かを競わせてもあまり意味はなく、どちらが好きかという話に移っていく。同社の炊飯器は、炊飯を極めすぎた結果、そんな領域に近づいているのかもしれない。
「食べ比べ亭」は9月5日の東京ミッドタウンを皮切りに、札幌、大阪、福岡、名古屋の5都市で開かれる。会場で試されるのは、炊飯器の性能というより自分の好みのほうかもしれない。



