月500ドルのマッチングアプリが現れた──AIに恋愛を外注する値段を、Grindrが本気で探している

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GrindrがAI搭載の最上位プラン「Edge」の価格を米国とカナダでテストしている。上限は月499.99ドル。恋愛の外注にいくら払えるかの実験だ。

マッチングアプリの月額は、だいたい決まっていると思われてきた。男性で数千円。女性は基本機能なら無料。そういう相場である。

その前提を、Grindrが試しに壊しにいっている。

同社がテストしているAI搭載の最上位プラン「Edge」の価格帯は、週80ドルから200ドル。月額では349.99ドルと499.99ドルの水準も試されている。ニューヨークでは月350ドルまでの価格が出た。いちばん高い水準で1年間続ければ、支払いは4,199.88ドルから5,999.88ドルになる。

念のため書いておくと、これは確定価格ではない。テストである。だが、テストするということは、払う人がいるかもしれないと本気で思っているということだ。

この値段で、何が手に入るのか

Edgeに入っているものは、意外と地味である。

最高製品責任者のAJ・バランスの説明によれば、機能は3つ。相手との会話の要約。自分に合わせて個別化されたマッチの推薦。そして相手のプロフィールについての分析だ。加えて、既存の最上位プランGrindr Unlimitedの機能をすべて含み、第三者の広告が出なくなる。

バランスはこう言っている。「目指しているのは目新しさではなく結果だ。より確信を持って人とつながること、より良い会話、そしてより多くの前進」。

言い換えれば、売られているのは機能ではない。打率である。

同じ時間アプリを開いていても、誰にメッセージを送るべきか、何を書くべきか、どの相手が脈ありかを間違えなければ、結果が変わる。その判断を外注する権利に、月500ドルという値札が試されている。


なぜGrindrが先陣を切っているのか

この実験をやっているのがGrindrである、というのは偶然ではない。

同社がAIウィングマンの構想を最初に公表したのは2024年10月だった。Edgeのテストはまずオーストラリアとニュージーランドで始まり、2026年2月には北米の一部都市へ広がっている。8月30日にはテストの拡大が改めて公表された。2年近くかけて、じわじわ進めてきた話なのだ。

そして本業が好調である。2026年第2四半期の売上高は1億3,800万ドルで、前年同期比33%増。市場予想の約1億3,200万ドルを上回った。通期の売上見通しも約5億3,500万ドルから約5億4,000万ドルへ引き上げている。

CEOのジョージ・アリソンの言い方は率直だ。「我々の戦略は常に、使えるところすべてでAIを使うということだった」。社内向けにもそれは徹底されていて、同社は2025年7月から2026年4月にかけてエンジニアリングの総産出が約2.5倍になったと見積もっている。自己申告の数字ではあるが、方針は明快である。

アリソンはEdgeのテスト結果に満足していると述べている。ただし契約者が何人いるのか、価格が最終的にどこに落ち着くのかは明らかにしていない。同社が重要な年と位置づけているのは2027年だ。Out誌の報道によれば、アリソンはAIウィングマン機能が2027年までに1,500万人近い利用者に届くと述べている。

つまり今は、値付けの探索期間である。いくらまでなら払うのかを、実際に人に払わせて調べている段階だ。

日本の相場と並べてみる

日本のマッチングアプリはどうか。

男性向けの1か月プランは3,500円から4,000円が相場で、ペアーズ、Omiai、with、タップルはおおむねこの帯に収まっている。支払い方法でも変わり、2026年7月時点のペアーズはウェブ経由が4,100円、Apple経由が4,800円だった。女性は基本機能を無料で使えるアプリが多い。

月499.99ドルを、仮に1ドル150円で換算してみる。約7万5,000円である。日本の相場のおよそ19倍。年間なら約90万円になる。

米国内で比べても異常値だ。BumbleとHingeの上位プランは月19.99ドルから100ドルの範囲にある。Grindrがテストしている上限は、その5倍から25倍にあたる。


もっとも、比較する土俵が違うという見方もできる。日本のアプリが売っているのは「出会いの場へのアクセス」だ。Edgeが売ろうとしているのは「誰にどう話しかけるかの判断」である。前者は場所代で、後者はコンサルティング料に近い。結婚相談所の入会金と月会費を思い浮かべれば、月7万5,000円という数字の据わりは少し変わってくる。

そして、アプリを消した人がいる

反応はもちろん一枚岩ではない。

コラムニストのアレクサンダー・チーブスは、費用とセキュリティへの懸念を挙げてアプリを削除したと書いた。そのうえで問いを残している。AIを介したプラットフォームで、人は本当により良いつながりを得られるのか。

これは個人の見解であって、利用者全体の傾向ではない。だが、この問いは値段の話とは別のところを突いている。

会話の要約を読んで相手を判断し、推薦されたマッチにAIが分析した内容をもとに話しかける。それで会えたとして、会っているのは誰と誰なのか。相手も同じものを使っていたら、最初の数往復は事実上AI同士の会話になる。これまでマッチングアプリで問題視されてきたのは、利用者が勝手にAIに返信を書かせることだった。今度はそれが公式機能として、しかも高額オプションとして売られようとしている。

Grindrはそこも織り込んでいるようには見える。アリソンは会社を上場企業のままにすると述べ、若い利用者を惹きつけるために手厚い無料版を維持する方針も示している。上は月500ドル、下は無料。同じアプリの中で、判断を買える人と買えない人が分かれていく設計だ。

よくある質問

AIウィングマンとは何か

マッチングアプリの利用者に代わって、誰にどう話しかけるかをAIが助ける機能を指す。Grindrが2024年10月に構想を公表した言い方で、同社の最上位プランEdgeでは、相手との会話の要約、個別化されたマッチの推薦、相手のプロフィールの分析という形で提供される。売られているのは出会いの場へのアクセスではなく、誰にどう話しかけるかの判断である。

GrindrのEdgeはいくらなのか

確定していない。2026年時点で価格をテストしている段階で、週80ドルから200ドル、月額では349.99ドルと499.99ドルの水準が試されている。ニューヨークでは月350ドルまでの価格が出た。最も高い水準で1年間使うと4,199.88ドルから5,999.88ドルになる。同社は契約者数も最終価格も公表していない。

日本のマッチングアプリの相場はいくらか

男性向けの1か月プランで3,500円から4,000円が相場である。ペアーズ、Omiai、with、タップルがこの帯にあり、女性は基本機能を無料で使えるアプリが多い。支払い方法でも変わり、2026年7月時点のペアーズはウェブ経由が4,100円、Apple経由が4,800円だった。仮に1ドル150円で換算すると、Grindrがテストしている月499.99ドルは日本の相場のおよそ19倍にあたる。

AIが恋愛を助けることに問題はないのか

議論がある。コラムニストのアレクサンダー・チーブスは費用とセキュリティへの懸念からアプリを削除し、AIを介したプラットフォームで人がより良いつながりを得られるのかと問いかけた。相手も同じ機能を使っていれば、最初のやりとりは事実上AI同士の会話になるという指摘もある。一方でGrindrの最高製品責任者は、目指しているのは目新しさではなく結果だと説明している。

まとめ──値段がついたということの意味

これまでAIによる恋愛支援は、無料の付加機能として配られてきた。プロフィールの添削、メッセージの下書き、写真の選定。どれもアプリが利用者をつなぎとめるためのおまけだった。

Grindrがやろうとしているのは、それを商品として切り出し、値札をつけることだ。月500ドルという数字が高すぎるかどうかは、正直まだ分からない。分かるのは、恋愛における判断の外注に市場価格が設定されようとしている、ということである。

答えが出るのは2027年だと同社は言っている。そのとき決まるのは、Grindrの収益だけではない。人が自分の恋愛の判断にいくらまで払うのか、という数字が一つ、世の中に残る。

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