「人の仕事を奪うAIを作る人とは付き合えない」──Z世代の3分の1がそう答えた調査と、その出どころ

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Z世代の33%が、労働者を置き換えるAIを作っている相手とのデートに乗り気でないと答えた。交際の条件表に、職の安全が載り始めている。

恋愛の条件として挙げられるものは、時代によって入れ替わる。身長、年収、学歴、価値観、家事の分担。そこに新しい項目が加わりつつあるらしい。

相手の仕事が、AIに消される側か、AIを作る側か。

職の安全が、交際の条件表に載った

マッチングアプリのHilyが、Z世代とミレニアル世代の利用者2,900人に聞いた調査がある。inc.comが2026年9月1日に報じた内容だ。

Z世代の33%が、人間の労働者を置き換えるAIツールを作っている相手とのデートに乗り気でないと答えた。ミレニアル世代でも22%が同じ懸念を示している。

3人に1人。恋愛の相手として、職業そのものが忌避される。しかも忌避されているのは、いま最も給料の高い職種の一つだ。

裏返しの数字もある。Z世代の30%が、自動化から守られた職に就いている相手のほうが魅力的だと答えた。約半数が、AIのリスクに受け身な相手より、積極的にスキルを高めている相手を好むと答えている。

そして、この項目の重みが分かる数字がこれだ。Z世代の83%が、長期的なパートナーを選ぶとき職の安全性は重要だと答えた。87%はそれを収入の水準と結びつけている。


実際に行動した人もいる。Z世代の女性の31%が、相手の職が自動化に弱いという懸念からデートを打ち切ったことがあると答えた。男性では13%である。この男女差は、そのまま経済的な立場の差を映しているように見える。

感情のほうも動いている。66%がAIによる失業のニュースに個人的に動揺すると答え、70%が自動化への懸念を共有する相手にはより近さを感じると答えた。

不安の共有が、親密さの通貨になっている。

AIを「使うこと」自体も嫌われている

Hilyはもう一つ別の調査も公表している。対象は米国のZ世代とミレニアル世代のデート層3,500人。こちらが扱っているのは、相手がAIをどう使っているかだ。

数字が並ぶ。Z世代の64%、ミレニアル世代の56%が、日常的な判断をAIに頼る相手とはデートしないと答えた。

何にAIを使うかで、嫌われ方の順位もついている。最も嫌われたのは、恋愛の対立をAIに分析させることだった。Z世代75%、ミレニアル世代70%。次が感情の整理をAIにさせること、Z世代69%、ミレニアル世代60%。キャリアの助言を求めるのがZ世代56%、金銭の判断がZ世代55%と続く。

つまり、嫌われる度合いは「関係そのものをAIに扱わせたか」で決まっている。自分たちのけんかを機械に読ませた瞬間に、線を越える。


具体的な場面の質問もある。2回目のデートに行くかどうかをAIに決めさせたと分かったら即座に興ざめする、と答えたのがZ世代の75%。逆に、個人的な判断にAIを一切使わないと明かした相手を非常に魅力的だと感じるのがZ世代の60%。そしてZ世代の65%が、結婚の誓いの言葉をAIに書かせた相手とは結婚できないと答えている。

AIを使わないことが、口説き文句になり始めているということだ。

職場のほうでも、空気は変わっている

この変化は恋愛だけで起きているわけではない。

inc.comが引いたGlassdoorのデータによれば、職場のAIを批判する従業員の投稿は、2025年5月から2026年5月にかけて240%増えた。そうした投稿のネガティブな感情の割合も、前年の41%から51%へ上がっている。

世代別に見ると、職場のAIに対するポジティブな投稿の割合はZ世代が全世代で最も低く、33%だった。

いちばんAIを使いこなしている世代が、いちばんAIを歓迎していない。この逆説は、恋愛の数字と地続きである。使えるからこそ、それが自分の仕事に何をするか分かっている。

ただし、この調査を出したのは誰か

ここで一歩下がっておきたい。

2つの調査はどちらも、マッチングアプリのHilyが自社の利用者に対して行ったものだ。調査期間も手法も公表されていない。そしてより重要なのは、Hilyがどういう立場の会社かである。

マッチングアプリ各社がAI機能の搭載を競うなかで、Hilyは人間の知性に賭けるという路線を打ち出してきた。つまりこの会社は、「AIは恋愛に向かない」という結論が出れば得をする側にいる。

だから数字が嘘だと言いたいわけではない。ただ、質問の作り方一つで、この種の調査は望む方向へ寄せられる。「AIに恋愛の対立を分析させる相手をどう思うか」と聞けば、否定的な答えが集まりやすい。逆に「忙しいときにAIが返信を下書きしてくれたら助かるか」と聞けば、別の絵が出るだろう。

同じ2026年に、Grindrは月500ドルでAIが会話と相手選びを助ける課金プランをテストしている。恋愛にAIを使わせまいとする調査と、恋愛のAI外注に値札をつける実験が、同じ年に走っている。どちらが本流かは、まだ決まっていない。

日本の恋愛にも降りてくるか

日本について、同種の数字は見当たらない。だから断定はできない。

ただ、条件が揃っているとは言える。日本でもAIによる雇用の変化が繰り返し報じられ、転職市場では「AIに強い人材」という言葉が定着した。婚活の場で年収や勤務先の安定が長く重視されてきたことを思えば、そこに「その職はあと何年あるのか」という問いが加わるのは自然な流れに見える。

公務員や医療職の人気が高い国である。自動化への耐性という評価軸は、すでに別の言葉で存在していたとも言える。

よくある質問

Z世代はAIを作る仕事の人を避けているのか

避ける傾向は出ている。マッチングアプリHilyがZ世代とミレニアル世代の利用者2,900人に行った調査では、Z世代の33%が、人間の労働者を置き換えるAIツールを作っている相手とのデートに乗り気でないと答えた。ミレニアル世代では22%である。ただしこれはアプリ運営会社の自社調査で、調査期間や手法は公表されていない。

恋愛でAIを使うと嫌われるのか

使い方による。Hilyが3,500人に行った別の調査では、恋愛の対立をAIに分析させることを交際の障害と考える人が最も多く、Z世代で75%だった。感情の整理をAIにさせるのが69%、キャリアの助言が56%、金銭の判断が55%と続く。関係そのものをAIに扱わせる用途ほど強く嫌われている。

職の安全は恋愛の条件になっているのか

なりつつある。同じHilyの調査では、Z世代の83%が長期的なパートナーを選ぶとき職の安全性は重要だと答え、87%がそれを収入水準と結びつけた。Z世代の女性の31%は、相手の職が自動化に弱いという懸念から実際にデートを打ち切ったことがあると答えている。男性では13%だった。

この調査はどこまで信用できるのか

数字の扱いには注意がいる。2つの調査はどちらもマッチングアプリHilyが自社の利用者に対して行ったもので、調査期間と手法は公表されていない。さらにHilyは、各社がAI機能を競うなかで人間の知性に賭ける路線を打ち出している会社であり、AIが恋愛に向かないという結論が出れば有利になる立場にある。傾向を示す資料として読み、確定した事実として扱わないのが妥当である。

まとめ──不安が、好みの形をしてやってくる

この調査が面白いのは、恋愛の話に見えて、実は雇用の話だという点だ。

相手の職業を見るとき、人は昔から安定を見てきた。公務員が人気だったのも、大企業が有利だったのも、同じ理由である。今そこに入ってきた新しい変数が、自動化への耐性だ。数字を出したのが利害のある会社だったとしても、その変数が意識され始めたこと自体は、たぶん本当だろう。

そして70%が「自動化への懸念を共有する相手には近さを感じる」と答えた。同じものを怖がっている人と一緒にいたい、ということである。

AIが変えているのは仕事だけではない。誰を選ぶかの基準まで、静かに書き換えている。

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