AI面接の対策は、もう「笑顔」ではない――採点されているのは顔ではなかった

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動画面接大手のHireVueは2020年に表情分析をやめている。非言語データが予測精度に寄与していたのは、約0.25%だった。

顔の採点は、2020年に終わっていた

誰もいない部屋で、カメラに向かって一人で話す。画面に秒読みが出る。多くの人はそこで口角を上げ、できるだけ明るい表情を作ろうとする。

その努力は、たぶんほとんど採点されていない。


動画面接サービス大手のHireVueは、応募者の表情を採点に使うのをやめた。社内で停止したのが2020年、公表したのが2021年1月である。理由は同社の説明によれば単純で、非言語データがモデルの予測精度に寄与していたのは、多くの場合およそ0.25%にすぎなかった。対人職の評価でも4%である。

0.25%である。

同社は、この寄与の小ささと、バイアスへの懸念を並べて廃止を決めた。背景には外からの圧力もあった。2019年、非営利団体の電子プライバシー情報センター(EPIC)が、HireVueのAI動画面接による評価は「不公正かつ欺瞞的な商行為」にあたるとして米連邦取引委員会(FTC)に申立てを行っている。その後、数学者Cathy O’Neilが設立したO’Neil Risk Consulting and Algorithmic Auditing(ORCAA)がアルゴリズム監査に入った。監査はバイアス排除の取り組みをおおむね支持したうえで、訛りによる評価の偏りを調べるよう勧告している。

当時のCEOはKevin Parker。チーフデータサイエンティストのLindsey Zuloagaは、答えの中身こそが最も予測力を持つ要素だと説明している。

ただし、これはHireVue1社の話である。ほかのサービスが表情を見ていないとまでは言えない。分かっているのは、この分野で最大手の1社が、顔の筋肉の動きから手を引いたという事実だけだ。

では、何を採点されているのか

日本側に、答えに近い実例がある。労働政策研究・研修機構(JILPT)の『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年1・2月号が、対話型AI面接サービス「SHaiN」の企業事例を取材している。提供元は株式会社タレントアンドアセスメント。2014年10月設立、東京都港区、代表取締役は山﨑俊明、社員は約30人という規模である。

面接は所要およそ45分。スマートフォンで受けられ、24時間365日いつでも、場所を問わず受検できる。


評価は、質問で見る7項目と、受け答えの様子から観察する3項目に分かれている。質問項目はバイタリティ、主体性、対人影響力、柔軟性、感受性、自主独立性、計画力。観察項目は理解力、表現力、ストレス耐性。2025年12月にリリースされた次世代版では、コミュニケーション能力、クリティカルシンキング、チャレンジ精神、やり遂げる力、慎重性、トップリーダー資質、マネージャー資質、チームワーク志向の8項目が追加された。

各項目は0.0から10.0の数値で採点され、偏差値も付く。導入企業は2025年12月3日時点で927社、累計受検者は148,477人にのぼる。

ここまでで、服装の話も、笑顔の話も、一度も出てきていない。

職種によって見るものが変わる例もある。音声AI採用ソフトのRibbonの面接では、溶接工には特定の技能や資格が問われ、営業職なら「熱意」の点数が含まれることがある。評価表は職種ごとに違う。応募する職種で、採点される軸そのものが変わるということだ。

山﨑は、この仕組みが表面的な特徴ではなく、その人に内在する資質がどうであるかをとらえるものだと説明する。人間の面接官の評価は、一日のうちの疲労で揺れる。「評価基準が一貫しているぶん、人間の面接官より公平な選考ができる」というのが提供側の主張である。

短く答えると、それだけで不利になりうる

対策として最も実用的なのは、この一点かもしれない。

ORCAAの監査は、マイノリティの応募者の短い回答が、不釣り合いに多く人間のレビュー行きとしてフラグされていたと指摘している。短く答えることが、それ自体で「引っかかる」側に寄せてしまう場合がある。

SHaiNの構造を思い出すと、理屈は通る。AIは構造化面接法にもとづいて質問し、回答に応じて深掘りの質問を重ねてくる。受検後は自動でテキスト解析され、15分以内に評価レポートが出る。観察項目には「表現力」がある。深掘りされているのに短く返せば、話す中身が足りないと判定されうる。

応募者側の不安の中心も、実はここにある。録画した映像がどう使われるのか、説明されない。特定の言葉を言わなかったというだけで落とされることがあるのかどうかも分からない。ORCAAが選考プロセスについて応募者への説明を改善するよう促したのは、この点である。

そして映像は、AIが評価表への合致度を採点し、その点数が映像とともに採用担当者へ渡る。ただし現実には、多くの面接は人間に見られないまま終わる。

日本ではやや事情が違う。レバレジーズが2026年2月に企業担当者1,625人へ行った調査では、6割を超える企業がAIのスコアだけで決めずに人間が最終確認する「ハイブリッド判定」を採っていた。高評価と低評価はスコアで判断し、迷うボーダーライン層は人間が動画を見て決めるという企業が36.7%。スコアは参考にとどめ、応募者全員の動画を人間が確認するという企業が21.6%ある。

日本で受けるなら、その映像は人間に見られる前提でいたほうがいい。

やってはいけない対策

機械が相手だと分かると、機械を騙す方法を考える人が出てくる。応募書類に人間には見えない白い文字を仕込み、AIに命令を読ませるという手口である。


採用管理ツールを提供するGreenhouseが2025年に公表した調査では、米国の求職者の41%が、応募書類に隠しテキストを仕込んだことが「ある」と答えた。ところが実測はまるで違う。デューク大学のニール・ゴン准教授と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のティアンロン・チェン准教授を中心とする研究チームが、採用支援企業hireEZの協力を得て、実際に提出された履歴書196,682件を分析した。

隠し命令が含まれていた履歴書は全体の約1%、2,030件だった。応募書類の99%には、そんなものは入っていない。

41%と1%。

さらに、見つかった隠しテキストの中身を分類すると、9割以上はAIへの命令ですらなかった。「これまでの指示を無視せよ」という類の純粋な命令文は、1割にも満たない。多くを占めていたのは、白い文字で書かれた経歴詐称だった。

AIを操作しようとしたのではない。経歴を偽っていただけである。そして経歴詐称は、発覚すれば内定取り消しにも懲戒解雇にもなりうる。

むしろ、面接まで進める人が増えている

ここまで並べると冷たい選別装置のように見えるが、企業側の数字は逆を向いている。

さきほどのレバレジーズの調査で、AI面接の導入に満足していると答えた企業は約9割にあたる86.7%。導入効果の1位は「従来の書類選考基準であれば不合格にしていた層から、優秀な人材を採用できた」で62.4%だった。2位が「選考にかかる時間・工数を削減できた」の52.8%、3位が「面接官との相性に左右されない公平な評価ができるようになった」の37.6%である。

書類で弾かれていた人が、面接まで来ている。

求職者側の受け止めも、思われているほど悪くない。直近3年以内に転職活動をした正社員経験者515人への調査では、一次面接のAI化について約3割が「ポジティブ」と答え、「ネガティブ」の18.2%を上回った。理由として挙がったのは「面接官の態度や相性に左右されず、公平に評価される」という点である。

表情を作る必要は、たしかになくなった。ただしそれは、面接が楽になったという意味ではない。愛想でごまかせていた部分が、そのまま中身の不足として画面に残るようになった、というだけの話である。

AI面接の対策として服装や表情は気にすべきですか

HireVueは2020年に表情分析を採点から外しており、同社によれば非言語データが予測精度に寄与していたのは約0.25%、対人職の評価でも4%だった。同社のチーフデータサイエンティストは、答えの中身こそが最も予測力を持つ要素だと説明している。ただしこれはHireVue1社の説明であり、ほかのサービスが表情を見ていないとまでは言えない。服装や表情に時間をかけるより、答える中身の準備に配分したほうが合理的だ、という程度に受け取るのが妥当である。

AI面接では何を聞かれ、何を評価されるのですか

採点は職種ごとに異なる評価表に沿って行われる。対話型AI面接サービスのSHaiNの場合、質問で見るのはバイタリティ、主体性、対人影響力、柔軟性、感受性、自主独立性、計画力の7項目で、受け答えの様子から観察するのが理解力、表現力、ストレス耐性の3項目。次世代版ではコミュニケーション能力やクリティカルシンキングなど8項目が追加された。音声AI採用ソフトのRibbonの面接では、溶接工には技能や資格が、営業職には「熱意」の点数が含まれることがある。

AI面接の受け答えで気をつけることはありますか

短く答えすぎないことである。ORCAAによるHireVueの監査では、マイノリティの応募者の短い回答が、不釣り合いに多く人間のレビュー行きとしてフラグされていたと指摘された。SHaiNでは構造化面接法にもとづいてAIが質問し、回答に応じて深掘りの質問を重ねてくる。深く聞かれているのに短く返せば、話す中身が足りないと判定されうる。

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