この記事は「日本がSNSで「AIは盗作か」を争う間に、世界は法廷とストライキへ進んだ──国外で再設計される生成AIのルール」の読みやすいダイジェスト版です。じっくり読みたい方はロング版はこちら。
声や顔を勝手にコピーするディープフェイクへの反発が、海外では訴訟・ストライキ・新しい法律という「制度」に変わり始めています。
日本のSNSでは「AI絵師」対「反AI」の言い合いが続きがちですが、アメリカやヨーロッパの状況はまるで違います。もう感情のぶつかり合いではなく、お金とルールが動く現実の話になっているのです。いくつか、おもしろいポイントをのぞいてみましょう。

俳優たちは「声と顔」を守るために11か月戦った
象徴的なのが、米国の俳優組合SAG-AFTRAが2024年7月から2025年6月まで、なんと11か月も続けたビデオゲームのストライキです。
いちばんの争点は、お給料よりも「自分の声や姿を、AIに勝手にコピーされない権利」でした。声優さんやモーション俳優さんが、過去の演技データをAIに学習され、いつか「自分のそっくりさん」に仕事を奪われてしまう。その不安が、ストライキの引き金になったのです。
結果、2025年7月には95.04%という圧倒的な賛成で、新しい協定がまとまりました。AIで声や姿を使うなら、その都度きちんと内容を説明して同意をとり、お金もちゃんと払う。そんなルールが、業界の当たり前になったのです。
「声を守る法律」まで生まれた
すごいのは、ルール作りが業界の中だけで終わらなかったことです。音楽の街として知られるテネシー州では、2024年7月に「ELVIS法」という法律ができました。人の「声」をはっきりと保護の対象に加えた、アメリカで初めての州法です。
国レベルでも「NO FAKES Act」という法案が、与党も野党もこえて進んでいます。本人そっくりのAI(デジタル・レプリカ)を無断で作ると、1件あたり最大75万ドルの罰金。しかもその権利は、本人が亡くなってから70年も守られます。EU(ヨーロッパ連合)でも、AIで作った画像や動画には「これはAI製です」とわかる印を入れる義務が、2026年から本格的に始まる予定です。
「AIの学習は盗用か」も、ついに法廷へ
クリエイターの「無断で学習に使われた」という怒りも、ついに裁判という形になりました。アメリカでは新聞社のThe New York Timesが、自社の記事がAIにほぼ丸写しで出力されてしまう「吐き出し」という現象を証拠に、OpenAIなどを訴えています。
おもしろいのは、イギリスの裁判所が2025年11月に示した、ちょっと意外な判断です。「AIモデルの中身(重み)そのものは、画像のコピーではない」というのです。ただし、出力された画像に他社の透かしロゴが写り込んでいた点については、問題があると認めました。AIの「入り口(学習)」と「出口(生成)」を分けて考える流れが、世界に広がっています。
最後の頼みは「本物だと証明し続ける技術」
絵をAIから守るための対抗ツールもありました。画像に特殊なノイズをしのばせて模倣を防ぐ「Glaze」や「Nightshade」です。世界中で数百万回もダウンロードされましたが、2026年にはケンブリッジ大学などの研究で、その保護を99.98%の精度ではがせてしまうことがわかりました。残念ながら、イタチごっこなのです。
そこで本命とされているのが、「C2PA(コンテンツクレデンシャル)」という技術です。誰がいつ何で作ったかを、暗号の署名としてファイルに埋め込みます。2026年にはGoogleのスマホPixel 10やライカのカメラにも入り始めました。フェイクを後から見破るのではなく、最初から「これは本物です」と証明し続ける。その発想に、世界はかじを切りつつあります。
日本はこれからどうする?
海外の動きを見ていると、AIをめぐる議論が「良いか悪いか」の感情論から、ルールと仕組みづくりへと、一歩も二歩も先に進んでいることがわかります。日本でも、SNSの言い合いから、働く人の権利や、本物を証明する仕組みづくりへ。そんな具体的な話へと、ステージが上がっていくのかもしれませんね。
よくある質問(FAQ)
海外で俳優がストライキしたのはなぜ?
声や姿をAIに無断でコピーされない権利を求めて、米国の俳優組合SAG-AFTRAが2024年7月から11か月間ストライキを行いました。2025年7月に95.04%の賛成で、使用ごとの同意と支払いを定めた協定が結ばれて終わりました。
ディープフェイクを規制する法律はあるの?
米テネシー州の「ELVIS法」が声を保護対象に加え、連邦でも「NO FAKES Act」が無断のそっくりAIに最大75万ドルの罰金を科そうとしています。EUでもAI生成物への表示義務が2026年から始まる予定です。
AIが作ったものか見分ける方法は?
ノイズで模倣を防ぐGlazeなどは破られやすいことがわかり、いまは「C2PA」という、誰がいつ作ったかを署名で証明する技術が本命です。スマホのPixel 10やライカのカメラにも搭載され始めています。


