自社のタトゥー入れたら面接、米企業が炎上

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自社ロゴのタトゥーを入れたら即面接。米LemonLimeの告知に7人が応じ、CEOは謝罪に追い込まれた。

日本では、タトゥーは就職の障害として語られてきた。見えるところに入っていれば選考の土俵に上がれない。そう信じている人は多い。

ところが太平洋の反対側では、逆のことが起きた。タトゥーが、面接という入場券と引き換えに差し出されたのである。応じた人が7人いた。

パーティーにタトゥーアーティストを呼んだ会社


舞台はサンフランシスコ。Y CombinatorのStartup Schoolのアフターパーティーが、LemonLimeのオフィスで開かれた。創業5ヶ月、社員5人のAI自動化スタートアップである。CEOはスタンフォード大学を出た24歳、Jordan Zietz。

会場には本物のタトゥーアーティストが呼ばれていた。そしてLemonLimeのタトゥーを入れた人には即面接を出す、と告知された。実際に7人が入れた。消えないものを、その場で。

Zietzは元の投稿でこう書いている。「パーティーに本物のタトゥーアーティストを呼び、LemonLimeのタトゥーを入れた人には即面接を出した」。目的は「優秀な人に会い、我々と同じくらいイカれた人間が誰かを見極めるため」だという。

約束自体は守られた。7人全員がいまも選考の過程に残っている。念のため書いておくと、彼らが手に入れたのは面接であって、採用ではない。

「調子に乗った。私が間違っていた」

パーティーの様子が広まると、批判が集まった。X上には「就職市場は、若者が永久タトゥーを入れなきゃいけないほど壊れてるのか」という声が上がった。「面接のためにLemonLimeのロゴを焼き印される姿を想像してみろ」という投稿もあった。原文のbrandedには、家畜に焼き印を押すという意味がある。

Zietzは元の投稿を削除し、謝罪した。「楽しく記憶に残る出会い方だと思ったが、実際には軽率だった」。そして「調子に乗った。私が間違っていた」。

釈明の核心はここである。「参加者は自分でタトゥーの図柄を選んでおり、誰にも我々のロゴを入れるよう求めていない。だが、タトゥーと採用を結びつけたことが生む圧力と力関係を、私は理解しておくべきだった」。面接は全員に開かれていたとも主張し、後悔した参加者の除去費用を負担する用意があるとも述べた。

ただし、この説明には食い違いがある。参加者のDimple Amitha Garuadapuriは、自分はロゴを入れていないとしたうえで、ほぼ全員がLemonLimeのタトゥーを入れていたとLinkedInに書いた。図柄は自由だったという釈明と、実際に会場で起きたことは、同じではなかったらしい。

伏線は「週7日出社」だった


この騒動を、悪ノリが過ぎた一件として片づけると見落とすものがある。Zietzは以前、こう投稿していた。「我々のチームは全員、週7日オフィスに来る」。

さらに彼は、5時以降や週末に働きたくないという理由で選考を辞退した応募者がいた、とも述べていた。会社の側から見れば、それは辞退ではなくふるい分けの成功だったのだろう。週7日出社を誇り、それを嫌がる人が自分から降りていく。そういう設計になっている。

そう考えると、タトゥーの提案は突然変異ではない。週7日という要求と地続きである。どこまで差し出せるかを測る物差しが、時間から身体に伸びただけだ。面接という切符の対価に、若者は自分の皮膚を使った。

雇う側と雇われる側のあいだには、もともと力の差がある。Zietz自身が謝罪でそう認めた。問題は、その差を面白がってはいけないという線が、どこにあるかである。

日本では、タトゥーは就職の障害として語られてきた


日本で同じことをやれば、志願者はほぼ現れないだろう。タトゥーは就職の切符ではなく、就職を遠ざけるものとして扱われてきたからだ。就業規則で明記する企業があり、面接で確認する企業もあると伝えられている。隠せ、というのが長らくの実務だった。

もっとも、日本のタトゥー人口は増えている。2014年から2022年の間にほぼ倍増し、約140万人。都留文科大学の山本芳美教授(文化人類学)の研究による数字で、WWDJAPANが2024年12月4日に報じた。2020年には最高裁が、タトゥーの施術に医師免許は不要だと判断している。世界の関連市場は2023年に20億3000万ドル、2024年に22億2000万ドルに達し、2032年には48億3000万ドルへ伸びると予測されている。

それでも日本の保有率は人口の数%程度にとどまる。欧米は3〜4割である。少数派であることは間違いない。

ここで、調べていて奇妙に思ったことがある。日本企業がタトゥーのある応募者を実際にどう扱っているかについて、全国規模の統計が存在しないのだ。何%の企業が理由にしているのか、誰も数えていない。就業規則の記述や面接での確認といった話は伝わってくるが、数字がない。

不利だと広く信じられていて、その根拠となる数字は誰も持っていない。応募者は数えられたことのない不利を避けるために、夏でも長袖を着る。LemonLimeの一件が力の乱用なら、こちらは正体のわからない圧力である。向きは逆でも、身体をどう扱うかを職場が決めているという点では、そう遠くない。

なお、選考する側がAIに置き換わってからは、別の落とされ方も始まっている。この話はAI面接で落ちる本当の理由に書いた。

よくある質問

日本ではタトゥーがあると就職に不利なのか

不利だと広く信じられているが、実態を示す全国規模の統計は存在しない。日本企業がタトゥーのある応募者をどう扱っているかを客観的な数字で集計したデータは見当たらないのが現状である。就業規則で明記する企業や、面接で確認する企業があると伝えられてはいるものの、どの程度の割合なのかは分かっていない。根拠となる数字がないまま不利という認識だけが共有されている状態だといえる。

日本にタトゥーを入れている人はどれくらいいるのか

約140万人と推計されている。都留文科大学の山本芳美教授(文化人類学)の研究によれば、日本のタトゥー人口は2014年から2022年の間にほぼ倍増して約140万人に達した。WWDJAPANが2024年12月4日に報じている。ただし人口に占める割合は数%程度にとどまり、3〜4割とされる欧米と比べれば依然として少数派である。

タトゥーを条件に面接を出すことの何が問題なのか

雇う側と応募する側の力の差を利用している点にある。LemonLimeのCEOであるJordan Zietz自身、謝罪で「タトゥーと採用を結びつけたことが生む圧力と力関係を、私は理解しておくべきだった」と述べた。消えないものを面接の対価にすれば、応募者は断りにくい。X上でも「面接のためにLemonLimeのロゴを焼き印される姿を想像してみろ」と批判された。選考の場では、断る自由が実際には機能しにくい。

タトゥーを入れた7人はどうなったのか

7人全員がいまも選考の過程に残っている。彼らが得たのは即面接であって、採用ではない。CEOのJordan Zietzは面接自体は全員に開かれていたと主張しており、タトゥーを後悔した参加者については除去費用を負担する用意があると表明した。ただし参加者のDimple Amitha Garuadapuriは、ほぼ全員がLemonLimeのタトゥーを入れていたとLinkedInで述べており、説明には食い違いが残っている。

日本でタトゥーの施術に医師免許は必要か

不要である。2020年、日本の最高裁がタトゥーの施術に医師免許は必要ないとの判断を示した。それまで医師法違反にあたるかどうかが争われてきたが、この判断で法的な位置づけが整理された。彫り師が施術を行うこと自体は、現在は違法ではない。

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