パナソニック、日本社会の未来に合わせた大きな変化を 家電とサービスで実現

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家電メーカー、パナソニックが9月21日行った「新製品群・新サービス群発表会 ~ 一人ひとりに“ちょうどいい”くらしへ」は、ただの新製品のお披露目ではなく、今後の社会における新しい家電像を示すという意味で、興味深いものとなった。

同社は創業100周年となる2018年に、「2021年までに、家電のすべての商品カテゴリーにおいて、知能化を図る」というIoTとAIへの取り組みを宣言。家電メーカーにとどまらず、それらを使ったサービスまで踏み込んでいく、“ハードとソフトの融合”への姿勢を見せていたが、今回の発表会ではさらに進んだ新製品や、今後の方向性について発表した形だ。

今回の発表によれば、パナソニックアプライアンス社では、2024年までにIoT家電の構成比率を6割まで引き上げ、またそれらを含むサービスで1,000万人とつながるという。

IoT家電を6割まで引き上げ

今回の発表によれば、パナソニックの白物家電における現状でのインターネット接続率は約3割。同社のテレビといった、ネットと親和性の高いAV機器が6~7割であることを考えれば、きわめて低い数字といえるだろう。その白物家電を倍の接続率まで引き上げ、1000万人を目指すのはとても大きい目標だ。

それを考えるうえで指標に思えるのが、同社製品の会員WEBサービス「CLUB Panasonic」。会員数は約900万人にものぼるという。

だが今回示された1,000万人という目標は、CLUB Panasonicの900万人の会員数を、100万人増やすという単純なものではない。パナソニックの家電やサービスで、常にネットワークでつながっている人を、1,000万人にするということだ。1000万人のユーザーを獲得することの困難さは容易に想像できるが、それでも目指すべき目標だということだ。

実際、パナソニックの家電の6割が、インターネットを通じて1000万人のユーザーと繋がっていれば、同社製品を将来的にも使っていくことは予想できるし、収益性の高いインターネットサービスによる収益も期待できるだろう。

それにIoTだからこその、ユーザーの利用データ、生活スタイルの変化についての知見を得ることは、それにあわせた商品やサービス開発につなげられるし、そのデータの基づいた改良は顧客のロイヤリティを高めることにもつながる。

今回の発表によれば、家電事業におけるノンハードビジネスの事業構成比1割を目指すというが、小さく見えてもこれは将来を見据えた“大きな一歩”を表現したものだ。

リアル/フィジカルも重要視

一見デジタルシフトとも見えるが、パナソニックはリアル、フィジカルについても捉え直した新たなアクションへも言及している。

今回、新たに発表したIoT対応家電向けサービス「Panasonic Care」は、IoT家電のメンテナンスや修理が便利になるもので、1台1台の使用状況に応じて、お手入れのタイミングを知らせるとともに、部品や消耗品を届け、快適に使用できるようにサポート。これまでの1年間等の期限付き長期保証とは異なり、ユーザーとリアル、フィジカルでも繋がり続けるという意思を見せている。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 副社長 兼 日本地域コンシューマーマーケティング部門長 河野明氏も「フィジカルなタッチポイントを持っていることが同社の強み」と語り、1000万人とつながる目標はデジタル上だけではなく、リアルにも達成される目標と言えるだろう。

顧客の視点に寄り添ったマイスペック家電

今発表会のテーマ「一人ひとりにちょうどいい暮らし」を実現する新たな家電およびサービスを体現しているのが、2021年9月から発売したマイスペック家電。これまでの機能過多な家電とは一線を画すもので、アプリから自らの用途に最適な機能だけを選択。ユーザーは、自らの生活スタイルや嗜好にそって機能を差し引きすることができる、シンプルに使いやすい製品群だ。

現在発表されているものでは、IHジャー炊飯器「ライス&クッカー SR-UNX101」、オーブンレンジ「ビストロ NE-UBS5A」。「ライス&クッカー」では、スマホアプリから、25通りのコースのうち3つのコースを登録でき、「ビストロ」では、グリル皿やスチームポットを別途購入し、スマホアプリから新たな調理機能を登録すると、グリル料理や蒸し焼き料理などの調理ができるようになる。

そんなマイスペック家電を企画した背景として、同社の調査によれば、430通りの炊き分けができる同社製品でも、多くの利用者が1カ月間に使用しているのは3コースだけだったという。ユーザーが求めていないものを作り続けていた、そんな反省をふまえ、顧客起点からものづくりだったのだ。

また顧客起点という意味で、大きな是正をされたのが、パナソニックの家電における「世帯」の問題だ。同社はこれまで「標準世帯」という概念、夫婦と子供2人という家族構成から商品企画をスタートしていた。

だがコロナ禍における新しい生活様式が定着し、そして少子化、晩婚化、未婚化などの小世帯の増加など、日本社会におけるこれまでのスタンダードという考え方では対応が難しくなってきた。そんな多様化への、パナソニックのスマートな回答が、「一人ひとり」に向けたモノづくりであり、マイスペック家電という形だったのだ。

今回の発表会で、パナソニック株式会社 専務執行役員 アプライアンス社 品田正弘社長は「パナソニックはこの100年間、誰もがテクノロジーを使える形にして、暮らしの定番となる商品を作ってきた。これからも、未来に続く定番となるような商品を作っていきたい」と宣言。同社の製品、サービスの今後の動向にこれからも注目していきたい。

今回発表されたルームエアコンの「エオリアLXシリーズ」。スマートフォンのGPSで帰宅中であることを検出すると、自動でエアコンを運転、部屋を快適にしておいてくれる。またAIが寝室への入室時間や入眠時間を学習し、事前のエアコン始動を勧めたり、睡眠に合わせたエアーコントロールを行ってくれる。

43V型液晶テレビ「4Kビエラ TH-43LF1」は“レイアウトフリーテレビ”。モニター部とチューナー部が分離し、電源コード1本だけで、自由に視聴場所を動かすことができる。