パナソニックは6月9日、2026年度テレビ新製品の体験セッションを東京・目黒で報道関係者向けに開いた。テーマは「黒のビエラ 美しい黒は、鮮やかさを際立たせる」。ゲストのPrime Original『沈黙の艦隊』シリーズ・吉野耕平監督が、新型ビエラで自作を見た驚きを語った。そんなプロも驚愕する実力を、会場で確かめてきた。
Mini LEDで黒の限界に挑む
セッション冒頭、テレビ事業部マーケティング部の金澤貞善部長は「テレビは多くの家庭でリビングの一等地に置かれている最重要のメディア。それだけに、スマホやタブレットでは体験できない本物の感動体験を追求していきたい」と方針を示した。テレビのネット接続率が73.8%に達し、人々の視聴体験の中心となっている今こそ、画質と音質という本丸を磨く構えだ。

プラズマ、有機ELと続く歩みを、金澤氏は「黒の再現性への挑戦の歴史」と語る。「真の美しさは、黒の中に宿る」。明るさが持ち味のMini LED液晶にこの思想を載せ、「黒の限界に挑戦します」と宣言。Mini LEDモデルはW97C、W95C、W93Cの3シリーズに拡大し、暗部の光り出しをグラデーションのように緻密に制御する独自技術「ミニマムルミナンスコントロール」を全シリーズに搭載。有機EL最上位のZ95Cも新世代パネルで刷新した。発売はW95C、Z95C、液晶のW80Cが6月下旬、W97CとW93Cが7月下旬の予定だ。

困ったのは、この黒が写真に写らないことだ。筆者のコンデジとiPhoneでは写し取れず、掲載写真が実物に及ばない点は詫びておきたい。ビエラの美しさは最新のビエラでしか表現できないというトートロジーがあり、ビエラより劣るモニターに映るCMや、紙の広告ではその本質が伝わらない。
ビエラの真価に触れるには現物を見るしかないのだ。白状すれば筆者は、ふだんMacのノートで動画を済ませる程度に画質へのこだわりが薄い。その目にも映画のように映ったのだから、逆説的に、筆者のような人間こそ感動が大きいだろう。


『沈黙の艦隊』吉野監督も「ここまで出てしまうのか」

吉野監督は事前に、Mini LED最上位のW97Cで『沈黙の艦隊 北極海大海戦』を視聴。「完成すると、ミスを発見するのが怖くて見返さない」という監督には、めずらしい機会だ。

「映画『沈黙の艦隊』は暗闇の中で黒い潜水艦が闘うという内容、大スクリーンで見るのが前提で作られている。色などの表現は、テレビではそこまで出ないだろう、情報量の6割も残ればいいと甘えているところがあった」と明かし、「それがここまで出てしまうのか…と、ミスを発見しそうでドキドキしながら見させていただきました」と振り返った。
具体例として挙げたのは、北極の闇でオーロラの下に浮上した潜水艦の上、演説をする場面だ。実写でもCGでも一筋縄ではいかない。「まさに黒との戦いがずっと続いていて、夜寝る前に部屋を真っ暗にして手を見たらどう見えるか『みんな家に帰って見てこい』と勉強しながらやっていました」。W97Cではオーロラの鮮やかさや肌の色、見えるか見えないかの粉雪まで再現されていたといい、「出してもらえた嬉しさと、粗が見つかったらどうしようという、二重の意味で嬉しかったです」と打ち明けた。
音についても「セリフも効果音も音楽も、邪魔し合うことなく全部耳に届けてくれる」と評価し、「『沈黙の艦隊』だけじゃなく、全潜水艦映画と相性がいいんじゃないか」と太鼓判を押した。シリーズは最終章までの制作が決まり、撮影は終盤だ。「暗闇の中でまた潜水艦を作り続ける作業が待っています。また劇場に浮上できる日を夢見ながら頑張ります」と、同作品の作り手らしい言葉で結んだ。

今年からは反転攻勢の年
質疑応答では事業の行方も問われた。有機ELとMini LEDの棲み分けについてパナソニック側は、「最高画質・音質のフラグシップは有機ELのZ95C。その定義は変わりません」としたうえで、「Mini LEDも本気で取り組んでいくと表現するため、今回はこのラインナップを中心に据えました」と答えた。
80型超の大画面については、「これまでは構造改革で効率を優先し、耐えてきました。今年からは反転攻勢の年と考えています」と回答。「80型以上のお客様もかなり増えており、真摯に向き合いたい。元気な姿を見せるためにラインナップを揃えていきます」と含みを残した。転倒防止スタンドや最長5年の延長保証といった安心面の取り組みも続ける。
ネット動画をはじめとする機能も行き渡り、テレビは付属機能での差別化が難しい時代である。だからこそ、映りという本質で勝負する。そう腹を括った開発陣の佇まいは、どこかサムライのように硬派だ。その一本気が黒に宿っているなら、一度、売り場で確かめてみてほしい。


