9月27日未明、東京都北区田端のラーメン店店内で、体重120kgの男が、トラブルになった男性を“ふみ殺した”事件。容疑者は、相手が倒れているのを尻目に「最後の晩餐だ」とラーメンセット(750円)を追加注文し、警察官が来るまでそれを食べていたという。
現場となったのはJR田端駅からほど近いところにあるラーメン店。「昔からある定食とラーメンの店。サワーや瓶ビールと餃子で一杯という客も多い、地域密着型。夜は『深夜食堂』のような牧歌的な雰囲気なだけに、こんな事件が起きるとは」と、この店に通って20年だという地元の常連客は声をつまらせた。
人気なだけに夜には酔客で店がいっぱいになることもあったというが、ケンカなどのトラブルはこれまでほとんどなかったという。
また、インターネット上では、暴行事件を起こした犯人に、ラーメンを提供するとは「なにごとか」という声もあがっているが、これに対して店側は「断れば自分も暴行されるかと怖かった」と答えている。
「人のいい年配の男性の料理人と、外国人の女性のスタッフで切り盛りしている。両腕にタトゥーの入った巨漢の男に注文されたら、断れるような人たちではない。」(前出・常連客)
容疑者が最後の晩餐として食べたセットは同店イチオシの人気メニューだったという。店を訪れてみると、たしかに客はまばらな様子。さすがに事件後、客足に響いているようだ。だが、同容疑者が“最後の晩餐”とうそぶいたラーメンセットはたしかに絶品。麺も通常の2倍ほどの量があり、チャーシューが脂ものり厚みもあって美味い。
「この店は客単価も700円から800円程度なので、チェーン店や専門店にも押されている。だが、料理も美味しいし居心地もいい店なので、地元では愛されている店。あんな事件を起こした犯人を絶対ゆるせない。しばらくは支えるためにも通おうと思っています」(前出・常連客)
動かなくなった被害者を心配することもなく、冷酷にラーメンセットを食べた容疑者の異常性。“最後の晩餐”といっても、極刑になるとは考えづらく、十数年後には出所すると思われる。本当の“最後”ではない。
被害に遭った男性はもとより、これほど地元で愛されているローカル人気店、あまりにかわいそうだ。
文/田辺高雄