「小さな恋のものがたり」サリーのモデル亡くなっていた みつはしちかこ先生のエッセイに

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『ひとりぼっちの幸せ チッチ、年をとるほど、片思いは深くなるね』みつはしちかこ、イースト・プレス。
『ひとりぼっちの幸せ チッチ、年をとるほど、片思いは深くなるね』みつはしちかこ、イースト・プレス。
52年間にわたり続いてきた、みつはしちかこ先生の純愛マンガ「小さな恋のものがたり」。ちんちくりんの女子高生チッチと、のっぽでイケメンのサリーの、淡い青春を描いた作品だ。最終巻となるであろう43巻の帯文には「さよなら…サリー」の文字。またその内容から大きな話題になっている。

そして、このサリーのモデルである同級生だった男性が亡くなっていることが、みつはし先生が2013年に出版したエッセイ『ひとりぼっちの幸せ チッチ、年をとるほど、片思いは深くなるね』(イースト・プレス)につづられている。

同エッセイには最愛の夫を先年に亡くしたこと、病に倒れたこと、そして「永遠の片思い」である、サリーのモデルとなる男性もすでにいないこと、そういうものをひっくるめた“老い”の中でみつけたものを、静かに描いている。

『小さな恋のものがたり』第43集の「さよなら…サリー」という内容と、同エッセイの一節をあわせてみると、さらに胸をうつ。

「片思いのまますれ違うということは、好きなまま、強い思い出が残るということです。今の人ってすぐに結論を求めるように見えますが、こちらのほうがトキメキが長く、強く続いているような気がするんですけどね」

すれ違い、想い続けることに一つの幸せの形があるからこそ、52年にもわたる“片思いマンガ”(チッチはサリーを、サリーはチッチをなので、両片思いというのが本当のところ)として『小さな恋のものがたり』は続いてきたのだろう。

『小恋』はみつはし先生の青春時代、『ハーイあっこです』は結婚時代、それらが過ぎ去ったいまとしての『ひとりぼっちの幸せ』、どれもすてき。

その人たちがいなくても想い続けることの大切さを、みつはし作品は教えてくれます。

文/高野景子