スーパーマーケットで試食販売コーナーが減っているのに、皆さんはお気づきだろうか?
販促効果が少ない試食販売
マネキンと呼ばれる女性たちがソーセージや冷凍食品のサンプルを食べさせてくれるのは、我々が子供の頃には実に楽しい経験だったのに。一体なぜ減ったのだろうか、その答えはシンプル。費用対効果が悪いからだ。
「マネキンの女性の人件費を考えると割に合わない。時給は1200円から1500円、日給で7000円程度。しかも彼女たちは派遣なので業者もはさんでいるため、実際はそれ以上の金額がかかる場合が多い」と語るのは食品メーカー社員。たしかに一つ数百円の商品では、かなりの数を買ってもらわねばペイできない。
食べたら買わなきゃ悪い、のか?
とはいえ、試食で味を試して買ってもらい、将来的に食卓の“定番”にしてもらうのが狙い。その日の売上だけを狙っているわけではない。
それでもメーカーが試食販売を控えるのには理由があるという。「試食しても買ってくれないお客様がここ10年で増えている。タダで食べたら悪い気がするから買う、という感覚のある人が減っている印象がある。薄情と言えなくもない(笑)」(ローカルスーパーの店長)
自分自身をふりかえっても、試食をしたからといって購入するかと言われると微妙なところ。こういった広告効果への疑問が、減少させている原因となっているようだ。そんな我々の“薄情さ”に愛想がつきたのか、試食コーナーを設けずただ宣伝文句のはいったテープやCDを流すだけの店も増えている。
『美味しんぼ』のエピソードも今は昔
アベノミクス景気と言われ、消費マインドもあがっているが、食品メーカーらが試食販売を復活させる兆しはいまだない。漫画『美味しんぼ』の中では、辰さんというホームレスと主人公・山岡が、ケチで有名な社長を百貨店の試食コーナーで“金のかからない接待”するエピソードがあるが、遠い時代のものになってしまった。
文/原田大