国際模倣品対策連合(IACC)は2026年10月20日、グローバルECプラットフォームのTemuとの共同プログラム「IACC-Temuプログラム」を通じて、13,300件を超える権利侵害出品が積極的に削除されたと発表した。
この数字の注目すべき点は、ブランド側からの申告により削除したのではないという点だ。権利者が申し立てるより前に、プラットフォームが自ら削除することができた件数なのである。
模倣品対策に大きな成果
Temuはグローバルに展開する人気ECプラットフォームで、IACCは模倣品対策に取り組む国際団体。両者はIACC加盟ブランド向けの知的財産権保護プログラムを通じて連携を強化してきた。今回公表されたのは、そのプログラムの初期成果だ。
仕組みとしてはシンプルなものとなっている。各社が自社製品の画像やキーワードをプログラムに提供し、Temuはそれを照合の手がかりとして使う。侵害の疑いがある出品が見つかれば、権利者の申告を待たずに特定し、早急に削除を行う。IACCの発表によれば、この流れで13,300件超が取り下げられたという。
IACC会長のBob Barchiesi氏は、プログラムの立ち上げに至る協議を「両者の関係を強化する重要な一歩」と位置づけ、「共同プログラムの初期成果は加盟ブランドにとって良好なものとなっており、知的財産権に関する課題に取り組むうえで、すべての関係者が連携することの大きな価値を示しています」と述べている。
このプログラムは自主参加型である。Temuには、すべての権利者が使える知的財産権侵害の申告窓口が従来からあり、IACC-Temuプログラムはそれを置き換えるものではなく、補完する位置づけとなっている。
積極監視の対象ブランドを拡大
「申告を待たない」という設計は、Temuが2026年7月に公表した「2026年度 知的財産権保護レポート」の数字にも表れている。対象期間は2025年6月から2026年5月までの1年間だ。同レポートによれば、権利者の申告にもとづく削除1件に対して、Temuが自主的に削除した出品は331件にのぼる。前年の比率は約200対1だった。
| 項目 | 2026年度レポートの数値 |
|---|---|
| 自主削除と申告による削除の比率 | 331対1(前年は約200対1) |
| 積極監視の対象ブランド | 15,000超(前年は5,000超) |
| 検出データベース | 画像4,700万件超、キーワード950万件超 |
| 申告案件の解決までの時間 | 平均24時間以内 |
| 知財違反を繰り返した店舗の閉鎖 | 16,000店超(過去1年間) |
| 連携する知財関連団体 | 130超(前年から約2倍) |
伸び幅が大きいのは監視の網そのものだ。積極監視の対象ブランドは1年で約3倍に増え、照合に使う画像の監視範囲は前年比9倍超に広がった。登録された画像は4,700万件を超え、キーワードは950万件を超える。照合する材料が増えれば、申告の前に引っかかる確率は上がる。
出店前、掲載前、掲載後の三層で監視
Temuが説明する保護体制は3段階に分かれている。第1段階は出店前の販売事業者の審査で、審査基準を満たさなかった新規出店申請の40%超が登録に至らなかった。第2段階は掲載前のスクリーニングである。出品されたすべての商品は、公開される前に画像とキーワードの検出データベースと照合される。
第3段階が掲載後の監視だ。24時間365日の継続監視に加えて、「偽物」といった検索語は非表示にし、利用者に注意を促す。入口で絞り、公開前に照合し、公開後も見続ける。3つの層のどこかで引っかければ商品は消費者に届かない、という厚みのある構えとなっている。
加盟ブランドができる3つのこと
IACC-Temuプログラムが加盟ブランドに開いている窓口は3つある。1つ目は複雑な案件のエスカレーションだ。IACCのグローバルポータルを通じて、対応が保留になっている申告、結果の再審査を求める申告、そして却下された申告を上位の対応に上げられる。差し戻しの経路が用意されている点が、通常の申告窓口との違いになる。
2つ目は、申告の前に侵害を止める経路である。ブランドがキーワードや画像を提供すると、申告が行われる前の段階で潜在的な侵害出品が特定・削除され、同じ材料がTemuの積極監視にも使われる。
3つ目はTemuの知財チームとの直接の連携だ。専用窓口では48時間以内に回答があり、四半期ごとの定期協議に加えて、詳細なフィードバックや進捗報告、分析情報が提供される。
釣具「DAIWA」も認めたその効果
国内ブランドの事例として資料に挙がっているのが、釣具ブランド「DAIWA」を展開するグローブライド株式会社のものである。同社が抱えていた課題は、手続きの見えにくさだった。侵害の報告を受けても、削除までの流れがつかめず、時間がかかっていた。
だが、同社は2024年、Temuが同年4月に始めたブランド連携の枠組み「Brand Guardian Initiative(BGI)」に参加。以後はTemuの知財チームと定期的に協議し、監視の状況やインサイトレポートを通じて侵害の傾向を把握している。その結果として、侵害商品の多くが消費者に届く前に削除されるようになり、クレームも減ったという。
2024年春から積み上げた外部連携
今回の発表は、単発の取り組みの報告ではない。Temuは2024年春から、ブランドや業界団体との接点を段階的に増やしているのだ。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2024年4月 | 「Brand Guardian Initiative(BGI)」を開始。現在3,000超のブランドと直接連携し、うち約500社が中小企業。Temuで販売していないブランドも参加できる |
| 2025年5月 | IACCとMOUを締結。業界横断フォーラム「Marketplace Advisory Council(MAC)」に創設メンバーとして参画 |
| 2025年7月 | 国際商標協会(INTA)に法人会員として加盟し、模倣品対策委員会に参画 |
| 2026年4月 | 国際模倣品対策連合(IACC)に一般会員として加盟 |
| 2026年7月 | 「2026年度 知的財産権保護レポート」を発表 |
| 2026年10月 | IACCが「IACC-Temuプログラム」の成果を発表 |
中でも目を引くのは、BGIがTemuで販売していないブランドにも開かれている点だ。出店していないプラットフォームで名前を使われる側にとっては、そこで何が起きているかがふだん視界に入らない。BGIの連携先3,000ブランド超のうち約500社が中小企業だという内訳は、その層の需要を映している。
Temuの広報担当者は「効果的な知的財産権保護には、強固な権利行使の仕組みと、権利者との緊密な連携の両方が不可欠」としたうえで、IACC-Temuプログラムは「これらの取り組みを組み合わせることで、複雑な案件への対応を改善し、積極的な権利侵害対策を支援するものです」と説明。
削除の件数を積み上げる仕組みと、ブランド側から材料と不満を受け取る経路を、同時に動かすという設計だ。13,300件という初期成果は、後手の受動的対応だけでは出てこない数字である。この権利侵害出品へのこれらの対応は、今世界的にも注目を集めており、今後も注視していきたい。
出典は、IACC「IACC-Temu Program Delivers Results Through Collaboration」(2026年10月20日)、およびTemu「2026年度 知的財産権保護レポート」(2026年7月14日発表、対象期間2025年6月から2026年5月)。