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クビになった人の53%は「AIのせいだ」と思っている。会社が認めたのは15%──リストラの言い訳として、AIだけが便利すぎる

レイオフされた米国の労働者の53%が「AIが関係した」と考え、会社がそう説明したのは15%だった。食い違いは、そこで終わらない。

米国で過去2年以内に職を失った1,000人に、Resume Geniusが聞いた。あなたのレイオフに、AIや自動化は関係していたと思うか。

53%が、思うと答えた。

ところが、会社から「自動化があなたの職を置き換えた」と直接告げられていたのは22%だけである。残りの31%は、誰にも言われないまま自分で疑っていた。会社が挙げた理由の内訳を見ると、コスト削減が37%、組織再編が31%、経済状況による縮小が27%、部門の廃止が25%。AIによる置き換えは15%にとどまる。

つまり、切られた側の半分は「AIだ」と思っていて、切った側の8割以上は「AIではない」と説明している。

この食い違いは、どちらかが嘘をついているという話に見える。だが調べていくと、話はもっとややこしい。

疑っているのは、AIに近い業種の人ほど多い

同じ調査には、内訳も出ている。

「AIが関係した」と考える割合は、テックで75%、金融で73%、ビジネス・専門サービスで72%。一方、医療は46%、製造・建設は44%、小売・接客と教育は42%だった。世代でも差がある。Z世代が66%、ミレニアル世代が52%、X世代が46%。

若く、ホワイトカラーで、日常的にAIを触っている人ほど、自分がAIに切られたと考えている。妥当な感覚ではある。自分の仕事のどこがAIでできるかを、本人が一番よく知っているからだ。

Resume Geniusのシニア採用マネージャー、ジェフ・スコットはこう言っている。「AIや自動化が誰かのポジションを消すことに実質的な役割を果たしたのなら、雇用主はそれを率直に伝えるべきだ」。

もっともな話だ。ただ、この調査は履歴書サービスの会社が実施したもので、調査期間や手法は公表されていない。数字の重みは、そこを踏まえて受け取る必要がある。


ところが、政権中枢は逆のことを言っている

ここで話が反転する。

ホワイトハウスの科学技術顧問マイケル・クラツィオスは、企業がAIのせいにしすぎていると指摘した。AIとは関係なく、どのみち実施していたであろうレイオフまでAIの名前で説明されている、というのだ。

理由は身も蓋もない。「そのほうが報道受けがいい」。

投資家にも世間にも、そちらのほうが通りがいい。景気が悪いから人を切りましたと言えば経営の失敗に聞こえるが、AI時代への転換のために組織を作り替えましたと言えば、先を行っているように聞こえる。同じ人数を切っても、後者のほうが株価に優しい。

同じ趣旨のことを、OpenAIのサム・アルトマンも同じ年の早い時期に言っていた。レイオフ発表に「AIウォッシング」がある、と。彼の場合はAIが実際にある種の仕事を置き換えていることも認めたうえでの指摘だったが、言っていることの芯は同じである。

数字の裏づけもある。人材コンサルティング会社のチャレンジャーは、2026年6月までに発表された米国の人員削減のうち101,743件で企業がAIを理由に挙げたと集計した。ただしこれは企業が何と言ったかの集計であって、AIが実際にその人を置き換えたことを誰かが検証したわけではない。

そして経営者は「AIは効いていない」と答えている

ここが、この話でいちばん奇妙な部分だ。

アトランタ連邦準備銀行が、約6,000人の企業幹部に聞いている。CFOやCEOが対象で、4か国にまたがる規模の調査である。結果はこうだ。AIはこの3年間、雇用にも生産性にも、ほとんど、あるいはまったく影響していない。そう答えた企業が大半だった。

AIを使っていないから、ではない。使っている企業は69%あり、3年後には75%になると見込まれている。使っている。だが効いていない。

今後3年についても、変化を見込む企業はあるものの、大半はなお影響なしと答えている。

アトランタ連銀のチーフ・エコノミック・アドバイザー、デビッド・アルティグはこう表現した。「生産性は実際に爆発的に伸びた。それでも、生産性への効果という点では、AI革命はまだ我々のところに来ていない」。


なお、この調査はフォーチュンなど複数の媒体で「経営者の90%がAIは生産性を押し上げていないと答えた」という形に要約されて広まった。90%という数字は連銀側の一次の言い方ではないので、そのまま引用するときは注意がいる。ただ、要約の方向自体は間違っていない。使っているのに、効いていないのだ。

ここまでを並べてみる。労働者の53%は「AIに切られた」と思っている。会社の15%しかそうは説明していない。政権顧問は「むしろAIのせいにしすぎだ」と言う。そして経営者自身は「AIは何も変えていない」と答えている。

四者の言い分が、全部ずれている。

AIのせいにすると、AIが効かなくなる

このねじれに、一つの説明を与えた研究がある。

ピッツバーグ大学の経営学教授マーク・マーらは、Glassdoorの数百万件の従業員レビュー、数千件の企業業績報告、米国上場企業による数百件のAI投資とレイオフの発表、そして約1万件の決算説明会の記録を、5年分にわたって突き合わせた。

見えてきたのは、自分で自分の首を絞める循環だった。

企業がAI投資を発表する。その後に人員削減を発表する。すると残った従業員は、AIを道具ではなく脅威として見るようになる。反AI感情が生まれる。その感情が生産性を押し下げ、AIによる効率化の分をちょうど打ち消してしまう。

抵抗を生む最大の要因は、職の安全への不安だった。訓練の不足、能力開発の機会の少なさ、AIに関する経営の拙さも並んだ。研究チームの言い方が的確である。「多くの従業員がAIに抵抗しているのは、同僚がAIに職を奪われるのを見てきたからだ」。

見覚えのある光景だろう。Metaでは、社員のPC操作を記録してAIに学習させる仕組みへの反発などから、半期ごとの社内調査で会社への好意的な回答が74%から55%へ落ちた。世界で最もAIに金を注ぐ会社が、AIを理由に人を減らそうとして、社内の協力を失った例である。

株価の面でも、話は経営陣に優しくない。マーらの分析では、レイオフ発表に対する市場の反応は平均してほぼゼロで、半数以上の事例で負またはゼロ近辺だった。AIを理由に切ったからといって、市場が必ず褒めてくれるわけではないのだ。金融テック企業のBlockのように株価が上がった例はある。だが平均はゼロである。

ガートナーが2026年5月に公表した、AIを実際に導入している企業の幹部350人への調査も似た方向を指す。人員削減が最も大きかった企業の財務リターンは、削減が最も小さかった企業とほぼ同じだった。削減の少ない企業のほうが上回る例さえあった。

日本ではどう見えるか

日本には整理解雇の4要件があり、AIを理由に一斉に人を切ることは制度的に難しい。だからこの話は他人事に見えるかもしれない。

だが、ずれの構造は日本のほうが強いとも言える。日本で起きているのは業績が黒字でも人を減らす、いわゆる黒字リストラだ。会社は「構造改革」と言い、対象になった人は別の理由を疑う。理由の説明と、受け取られ方が食い違うという点では、まったく同じ形をしている。

そして日本には、米国でカリフォルニア州が可決したような「AIによる置き換えは事前に通知せよ」という規定もない。説明されない側は、疑うしかない。米国の31%と同じ立場に置かれる。

よくある質問

AIによるリストラは実際にどのくらい起きているのか

正確な数字は誰も持っていない。チャレンジャーの集計では2026年6月までに発表された米国の人員削減のうち101,743件で企業がAIを理由に挙げたが、これは企業の自己申告の集計である。一方でアトランタ連銀が約6,000人の企業幹部に聞いた調査では、この3年間AIは雇用にも生産性にもほとんど影響していないと答えた企業が大半だった。発表と実態の両方を見る必要がある。

AIウォッシングとは何か

AIとは関係なく行ったであろう人員削減を、AIを理由として説明することを指す。ホワイトハウスの科学技術顧問マイケル・クラツィオスは、企業がそうする理由を「そのほうが報道受けがいい」と表現した。OpenAIのサム・アルトマンも同じ年に同種の指摘をしている。景気や経営判断より、AI時代への転換と説明したほうが投資家にも世間にも通りがよいという構図である。

会社はレイオフの理由にAIを挙げているのか

多くは挙げていない。Resume Geniusが米国で過去2年以内に職を失った1,000人に聞いた調査では、会社が挙げた理由はコスト削減が37%、組織再編が31%、経済状況による縮小が27%、部門の廃止が25%で、AIによる置き換えは15%にとどまった。一方、労働者側の53%は「AIが関係した」と考えており、うち31%は会社から何の説明も受けていない。

AIを理由に人を減らすと業績は上がるのか

上がるという証拠は乏しい。ピッツバーグ大学のマーク・マーらの分析では、レイオフ発表に対する株式市場の反応は平均してほぼゼロだった。ガートナーが2026年5月に公表した幹部350人への調査でも、人員削減が最も大きかった企業の財務リターンは削減が最も小さかった企業とほぼ同じで、削減の少ない企業が上回る例もあった。

まとめ──便利すぎる言い訳の代金

AIは、リストラの理由として異様に便利である。景気のせいにすれば経営の失敗に聞こえ、人のせいにすれば揉める。AIのせいにすれば、時代のせいになる。誰も責められない。

その便利さには代金がついている。マーらの研究が示したのは、AIを理由に人を切った会社では、残った社員がAIを敵として扱い始めるということだ。そしてAIから得られるはずだった効率は、その感情によって打ち消される。AIのせいにした会社ほど、AIが効かなくなる。

53%と15%の差は、単なる認識のずれではない。説明されなかった31%が職場に残していったものが、次の生産性を決めている。

編集部: