Googleが検索のAIモードに航空券の価格追跡とホテル予約を追加した。検索が、調べる場所から終わらせる場所に変わり始めている。
2026年8月27日、Googleが検索のAIモードに旅行の機能を足すと発表した。航空券の価格を見張らせる。マイルやポイントで値段を表示する。そしてホテルを、検索画面から出ずに予約する。
旅行の準備には、これまで決まった手順があった。検索する。比較サイトを開く。タブを4つ5つ並べる。値段を見比べる。予約サイトに移る。今回の変更が狙っているのは、この一連の動作のうち「移る」の部分を消すことだ。
AIモードの中で、旅行が完結するようになった
機能は3つある。
1つ目は航空券の価格追跡だ。AIモードとの会話の中で行き先と日程を伝えると、価格を見張ってくれる。比較する相手は300を超える航空会社と旅行サイト。値段が動けばメールが届く。提供は180を超える国と地域だが、欧州経済領域の利用者は対象外である。
2つ目はポイントとマイルの表示。航空券やホテルの費用を、現金ではなくマイルで見られる。開始時点で対応しているのはアラスカ航空とハワイアン航空、アメリカン航空、チョイスホテルズ、ヒルトン、ウィンダム。アコー、フライングブルー、ハイアット、LATAM航空、ルフトハンザグループは今後の対応予定だ。
3つ目が本命である。ホテルの予約が、AIモードの中で終わる。写真とレビューを見比べて、部屋を選んで、Google Payで払う。提携先にはブッキング・ドットコム、エクスペディア、ホテルズ・ドットコム、プライスライン、トリップ・ドットコムといった大手予約サイトと、ヒルトン、マリオット、IHG、ウィンダム、チョイスホテルズのチェーンが並ぶ。
Googleの説明はこうだ。「気に入ったホテルが見つかったら、予約は速く、手間のかからないものであるべきだ」。
異論の出にくい言い分である。実際、手間は減るだろう。減った手間の分だけ、誰かのサイトが開かれなくなるという話でもあるのだが。
Googleは自分では売らない
ここで注意して読むべき点がある。Googleは売り手になっていない。
予約の流れを追うと分かる。AIモードに希望を伝える。候補が出る。Continue on Google のボタンを押す。部屋の詳細とキャンセル規定を確認する。Google Payで払う。ここまではGoogleの画面だ。だが取引の当事者と、その後の顧客対応は、ホテルや予約サイトの側にある。
マイルと旅行を扱うブログ View from the Wing のゲイリー・レフは、この設計を冷ややかに見ている。Googleは2015年に Book on Google という直接予約の仕組みを始めており、消費者にもパートナーにも使われないまま2022年に畳んでいる。今回もエクスペディアのようなマーチャントになろうとしているわけではない、というのが彼の読みだ。取りに行っているのは利用者の意図データで、運用のリスクは航空会社とホテルに残す。
そう考えると、旅行会社側が反発しない理由も見えてくる。レフによれば、ブッキング・ホールディングスの2025年のマーケティング支出は82億ドル、エクスペディアは73.5億ドル。両社ともGoogle検索からの流入に依存している。つまりこれは、旅行業界を出し抜く動きではない。旅行業界を、検索の内側に囲い直す動きである。
マイル検索は、まだ雑である
新機能の中で、いちばん歓声が上がりそうなのがマイル表示だろう。ただしレフの評価は辛い。
弱点を4つ挙げている。特典の価格が、現金運賃と並べて表示されない。プログラムを1つ選ぶ形式なので、どのマイルなら同じ便が取れるのかが見えない。提携先への移行ルートや、移行ボーナスの案内もない。特典価格のアラートも、柔軟な日程カレンダーもない。
結論はこうだ。「今日の時点では、特典航空券の買い物と判断のツールとしては Points Path のほうが優れている」。
もっとも、これは目的が違う道具を比べた話でもある。マイルを本気で回している人は専用ツールを使えばいい。Googleが取りに来ているのは、そこまではやらない大多数のほうだ。年に一度か二度、家族旅行のために貯まったマイルを思い出す人。そういう層にとっては、検索窓に打ち込むだけで数字が出るという一点が、機能の粗さより効く。
日本ではどこまで使えるのか
さて、日本の話をする。
検索のAIモード自体は、すでに日本語で使える。提供が始まったのは2025年9月9日で、同年12月までに200を超える国と地域へ広がった。
だが今回の3機能は、全部が日本に来ているわけではない。ホテル予約は米国で英語から提供が始まったところで、日本では使えない。価格追跡は180を超える国と地域が対象と公表されているが、Googleは国名を並べていない。日本で使えるかどうかは、自分のAIモードで試してみるまで分からないというのが正確な言い方になる。
ポイント表示については、対応ブランドの顔ぶれが答えを出している。アラスカ、アメリカン、ヒルトン、ウィンダム、チョイス。日本の航空会社もホテルチェーンも、今のところ1社も入っていない。
日本人はAIで探し、AIを信じていない
では、日本の旅行者はいまどうやって宿を決めているのか。ここに、この話でいちばん面白い数字がある。
アイリッジが2026年5月に実施した国内旅行の調査がある。20歳から69歳まで2,139人へのインターネット調査だ。結果を見ると、生成AIは若年層の情報収集手段としてテレビやInstagramを上回っていた。使われてはいるのだ。
ところが信頼度を聞くと、順位がひっくり返る。「公式サイト・公式SNS」が57%。生成AIの回答は10.9%で、最下位だった。
10人に1人しか信じていないものを、多くの人が使っている。矛盾しているようだが、行動としては筋が通っている。候補を集める作業はAIに投げ、決める段になったら公式を見に行く。下調べと意思決定を、別の道具に分けているのだ。
裏づけになる数字もある。同じ調査で、宿泊予約は楽天トラベルとじゃらんが合わせて約55%を占めていた。そのうえで、ホテルや旅館の公式サイトからの予約が4%から12.7%へと約3倍に伸びている。値段が理由だ。アイリッジはこれをOTA独占の崩れとして説明している。
日本の旅行者は、いま予約を仲介から公式へ戻しつつある。Googleがやろうとしているのは、その逆方向だ。検索の内側に予約を引き込む。この2つの流れがぶつかったとき、どちらが勝つのかは、まだ誰にも分からない。
よくある質問
GoogleのAIモードで日本のホテルを予約できるのか
現時点ではできない。ホテル予約機能は2026年8月27日に米国で英語から提供が始まったもので、今後数週間かけて広がるとされている。日本での提供時期は公表されていない。提携先として発表されたのはブッキング・ドットコム、エクスペディア、ヒルトン、マリオット、IHGなど10社で、日本のホテルチェーンや予約サイトは含まれていない。
AIモードの航空券価格追跡は日本で使えるのか
Googleは180を超える国と地域で提供すると発表しているが、対象国のリストは公表していない。欧州経済領域の利用者が対象外であることだけが明記されている。日本で使えるかどうかは、自分の検索画面のAIモードで実際に試して確認するのが確実である。
Googleはホテル予約の売り手になるのか
ならない。予約はGoogle Payで完了するが、取引の当事者と予約後の顧客対応はホテルや予約プラットフォームの側にある。Googleが提供しているのは検索から決済までの導線であり、在庫を仕入れて売る立場ではない。マイルと旅行を扱うブログ View from the Wing のゲイリー・レフは、Googleの狙いを利用者の意図データの取得にあると分析している。
日本人は旅行の情報収集にAIを使っているのか
使っている。ただし信じてはいない。アイリッジが2026年5月に20〜69歳の2,139人へ行った国内旅行の調査では、生成AIは若年層の情報収集手段としてテレビやInstagramを上回った一方、情報源としての信頼度は10.9%で最下位だった。最も信頼されたのは公式サイト・公式SNSの57%である。
まとめ──開かれなくなるページは、誰のものか
AIモードの旅行機能を並べると、Googleがやろうとしていることは一つに見える。検索を、答えを見せる場所から、行動が終わる場所へ動かすことだ。航空券の見張り、マイルの換算、部屋の予約。どれも従来なら別のサイトを開いてやっていた作業である。
その作業が検索の中で片づくようになったとき、開かれなくなるページが出てくる。比較サイトのページ、旅行ブログのページ、そしてホテルの公式サイトのページだ。
だが日本の旅行者は、いままさに公式サイトへ戻り始めている。しかも生成AIの答えを10.9%しか信じていない。手間を減らす道具と、信じられる情報源。この2つが同じ場所にないことを、利用者はすでに知っているように見える。
Googleの新機能は便利だ。便利であることと、信じられることは別である。旅行を決めるとき、その2つのどちらを優先するかは、結局のところ使う側が決める。