私たちの健康や環境を脅かす「PFAS(ピーファス)」。自然界で分解されず、人体に蓄積することから「永遠の化学物質」とも呼ばれるこの有機フッ素化合物は、今や世界的な社会問題となっています。
実はこのPFAS、私たちの生活に欠かせないスマートフォンやPC、そして普及が進む電気自動車(EV)にも、深く関わっています。電子部品を熱から守るために使われる「フッ素ポリマー」は、PFASの一種なのです。
しかし今、この厄介なPFAS問題を根本から解決するかもしれない、画期的な新素材がアメリカの大学で開発され、大きな期待が寄せられています。
問題の核心「フッ素」を使わない画期的な代替品
科学誌『Science』で発表されたこの新素材は、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究チームが生み出したものです。
PFAS問題の核心である「フッ素」を一切使わずに、従来のフッ素ポリマーが持つ高い耐熱性や絶縁性といった利点を維持することに成功しました。環境への負荷をなくし、性能はそのままという、まさに“夢の新素材”です。
研究を率いたレイ・チュー氏は、「研究資金が底をついても…私たちは研究を続けました。そして、ついに大当たりを引き当てたのです」と、長年の探求が実を結んだ喜びを語っています。
なぜ「画期的」なのか?根本から異なる仕組み
この新素材が画期的なのは、PFASフリーであるという点に留まりません。チュー氏によると、「この素材が電気的な特性を生み出す仕組みも、根本的に新しい」のです。
従来の素材が必要としていた「結晶化」というプロセスを経ずに、優れた電気的特性を発揮するため、よりシンプルで効率的な製造に繋がる可能性があります。これは、材料科学における大きなブレークスルーと言えます。
PFAS規制強化の動きにも対応可能?EVや航空宇宙分野での活躍に期待
現在、世界中でPFASに対する規制は急速に強化されており、多くの産業が代替材料の確保に迫られています。
高い耐熱性を持つ素材が不可欠な電気自動車(EV)や航空宇宙産業、そしてエネルギーインフラといった成長分野にとって、この新素材は規制をクリアし、持続可能な成長を可能にする切り札となり得ます。
PFASという大きな課題を抱える産業界にとって、まさに救世主のような存在になるかもしれません。
私たちの便利な生活が、知らず知らずのうちに環境を汚染しているかもしれない。そんな不安を解消してくれる、この度の画期的な開発。ある大学の研究室から生まれた「大当たり」が、有害なPFASに依存しない、クリーンな未来への扉を開くことを期待せずにはいられません。