若者撃退”モスキート音”は子供や障害者への悪影響 海外では禁止の方向性も

大阪・豊中市の自宅の庭で、家族でプール遊びを楽しんでいた家族ら4人が救急搬送され、その原因が隣家からの大音量“モスキート音”だったのではないかと話題になっています。

このモスキート音、それは若者には聞こえるが、大人には聞こえにくい高周波音のこと。この音を発生させる装置「モスキート」は、若者のたむろを防ぐための防犯ツールとして利用されてきました。しかし、その使用をめぐっては、様々な議論が巻き起こっています。

モスキート音の歴史と使用法

モスキート音は、一般的に17kHz前後の高周波音で、その名の通り蚊の羽音に似た不快な音です。人間の聴覚は加齢とともに高音域を聞き取りにくくなるため、モスキート音は主に若者にとって不快に感じられます。この特性を利用して、若者のたむろを抑制する目的で開発されたのが「モスキート」装置です。

モスキートは、2005年にハワード・ステープルトン氏によって発明されました。彼は、自身の娘が店で若者グループに嫌がらせを受けた経験から、この装置を開発したといいます。当初は、イギリスの食料品店の前で若者のたむろを減らすことに成功し、その後、世界中で販売されるようになりました。

モスキートは、主に公共の場や店舗などで使用されています。若者が長時間滞在することを防ぎ、騒音や vandalism(公共物破壊行為)などを抑制する効果があるとされています。

モスキート音の身体への影響:不快感だけではない深刻なリスク

モスキート音は、若者には不快な耳鳴りのように聞こえますが、大人にはほとんど聞こえません。これは、人間の聴覚能力が加齢とともに低下するためです。

しかし、モスキート音は、単に不快なだけでなく、健康への悪影響も懸念されています。ドイツ連邦労働安全衛生研究所は、モスキート音の長時間曝露によって、めまいや頭痛、吐き気、さらには平衡感覚の障害などを引き起こす可能性があると指摘しています。

自閉症や赤ちゃんへの影響:声なき声への配慮を

特に、自閉症の人や聴覚過敏を持つ人にとっては、モスキート音は耐え難い苦痛となる可能性があります。また、赤ちゃんや幼児など、自分の意志をうまく伝えられない人々も、モスキート音の影響を受けやすいと考えられます。しかし、彼らは不快感を言葉で訴えることが難しいため、深刻なストレスや健康被害に繋がる可能性も懸念されています。

モスキート音が抱える問題点

モスキート音の使用をめぐっては、以下のような問題点が指摘されています。

人権侵害: モスキート音は、若者という特定のグループを無差別に排除するものであり、人権侵害にあたるという批判があります。
差別: モスキート音は、若者全体を問題視するようなメッセージを発信し、世代間の分断を深める可能性があります。
健康被害: モスキート音は、身体的な不快感だけでなく、健康被害を引き起こす可能性があります。特に、子供や障害者への影響が懸念されています。

モスキート音の法的規制

モスキート音の使用に関する法的規制は、国によって異なります。イギリスでは、政府はモスキートを禁止していませんが、一部の地域では使用が制限されています。

欧州評議会は、モスキート音の使用は人権法に違反する可能性があると指摘し、欧州での禁止を呼びかけています。ベルギーでは、モスキートのような装置の使用を禁止する決議が可決されています。

モスキート音は、若者のたむろを防ぐという点では一定の効果があるかもしれませんが、その使用には多くの問題点が伴います。

私たちは、モスキート音のような排除的な方法ではなく、若者との対話や理解を通じて、より良い社会を築いていく必要があるのではないでしょうか。

編集部: