一色萌のアイドル、色々。第 31回 「アイドルと船」

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こんにちは。プログレアイドル・XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

12月に入り、季節は一気に冬らしくなりました。
寒い日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私はというと11月末に今年の一大イベントであったキスエクのワンマンライブが終わり、それ以降抜け殻のようになっています。
抜け殻といっても、ワンマンライブで燃え尽きてしまったという意味ではなく、「気持ち的にはやる気満々だけど、体の疲れがどっときた」といった具合です。

目を覚ますと大体、布団に体がべったりと固定されてしまったかのように、自分の意思ではどうにも動かせない状態になっています。
起き上がりたいけど起き上がれない、と布団の上で一人戦っているうちに、猫がやってきて私の足の上で丸くなります。
心地よい重さが加わってますます起き上がれなくなると、いつの間にか眠りに落ちていて、そうしているうちに一日が終わっていくのです。
人よりも猫と過ごす時間が多くなり、両親からも猫と名前を間違えて呼ばれることが増えました。
いつの間にか私は猫になってしまったようです。
私は人間に戻ることができるのでしょうか……。

ともあれ「いつもと違う」状況下でのワンマンライブが無事に開催できたということは、本当にほっとしました。

今回のワンマンライブは、世の中の状況に気を配りつつ、生バンドでのライブの練習や新曲の歌の練習、振り入れ、新衣装の要望出し、そして新メンバーの真城奈央子ちゃんと既存曲を復刻しながら、シークレットでお披露目する研修生の星野瞳々ちゃんのレッスンも並行していて、準備の段階からやることが盛り沢山でした。

目の前のことに精一杯で当日まではとにかく必死だったけれど、ワンマンを終えていつものように対バンライブに出演すると、共演のアイドルさんやファンの皆さんの反応が思ったよりも大きいぞということに気がつきました。

メンバーが増えたこと。
曲が一気に5曲増えたこと。
衣装が変わったこと。

どれか一つでもなかなか大きな変化ですが、それらが一度にやってきたのですから無理もありません。
「全然違うグループになったみたいだね!」と、数日のうちに何度も言われました。
そしてライブの後には「やっぱりキスエクはキスエクだった」とも、言われました。

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私は昔から、アイドルは「船」のようなものだと思っています。

まずアイドルという船体があって、運営さんが船頭として舵を取り、メンバーが乗組員として乗船し、ファンの皆さんは乗客として色んな船を乗ったり降りたりしながら、みんなで芸事の世界という海を渡っていくイメージです。

船にはしばしば「○○丸」とか「△△号」のように固有の名前が付けられるということも、私の中でアイドルのイメージと合致してしっくりきます。

見た目も性能も抜群な豪華客船はたくさんの乗客を乗せるキャパシティがあります。
でも、ボロいクルーザーでもいいエンジンやレーダーを積んでいるかもしれないし、小さな手漕ぎの船でも乗組員がめちゃめちゃパワフルだったりして機械に劣らない推進力があるかもしれません。

航海の途中では、思わぬ障害物にぶつかって沈没してしまったり、ボロボロになってしまった船体を新しくする船団がいるかと思いきや、はたまた“アイドル洋”から離れて地球の裏側まで行ってしまう一行もいたり……一気に想像が膨らみます。

では、私の所属するキスエクは、一体どんな船だろう?
今までのメンバーが変わった時や曲が増えた時、衣装が変わった時のことを思い返してみると、まだ船体がしっかりしていなかった頃は、少しの変化があるたびにぐらぐらと揺れていたような気がします。

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アイドル×プログレという未知のマッチングを試みる上では、始まってから今まで何もかもが予想もつかないことばかりでしたが、私はいつも衣装の塩梅が特に難しいなといつも感じていました。
かわいい衣装を着たいアイドルと、重厚で一筋縄では行かないプログレッシヴな曲たちが、どうもマッチしないようなのです。

明るい曲に合わせると暗い曲に合わないし、演劇のようにドラマティックな展開の多い曲に合わせるとみんなで盛り上がる感じの曲に合わないというように感じ、私たちは悩んでいました。
なんとか世界観を統一しようとメンバーなりに工夫して着てみても、お客さん、特に初見の方から「曲と衣装が合っていない」と言われる事が何回かあり、「もうそこは意外性として見てください!」と、正直なところ、半ばお手上げ状態でした。

しかし活動を続けるうちに、なんだか風向きが変わってきます。
いつの間にか、あまり上記のようなことを言われなくなっていたのです。
複数の衣装を使い分けできるようになったとか、みんなの目が慣れてきたとか、理由は色々あるのだと思うのですが、その時私は「船が出来てきたんだ」と思いました。
意識的にも無意識的にもいろいろなことを感知して、乗組員である私たちもどのように振る舞えばこの船を魅力的に見せることができるか?というようなスキルを少しずつ得ていたのではないかと思います。

そのうちに昔の衣装を着てライブをする機会が訪れました。
過去に投げかけられた言葉を思い出して、少し不安に思いながらも以前の衣装に袖を通してライブを終えてみると、その日は誰からも「合わない」と言われることはありませんでした。
むしろ初めてその衣装を見た方から、これもいいねと褒められました。

衣装も着る人も、プログレッシヴな曲も変わっていないのに、この反応の違いはなんだろうと思った時に、私たちが船の一部になりつつあるんだ、と思いました。
似合う似合わない、合う合わないじゃなくて、私たちが私たちの曲を、私たちの衣装で歌い踊ればそれが「キスエク」なんだ。
「キスエク号」の少し頑丈になった外壁に触れたような、そんな感覚がありました。

きっとそんな時期を経てきたからこそ、今回のワンマンで様々な変化を遂げた後でも私たちを見た方に「キスエクはキスエク」と思ってもらえたことは、私にとってとても嬉しいことでした。

アイドルの軸、すなわち船体がしっかりしていれば、どんな子が入っても、どんな曲でも、どんな衣装でも、“そのアイドル”として成立させることができるのではないかと思うのです。

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今回のワンマンライブで増えた新曲の中に、『Do rats desert a sinking ship? (組曲「ねずみは沈む船を見捨てるか?」)』という曲があります。

4年前のデビューの際に作っていただいた、キスエクにとって初めてのオリジナル曲である「悪魔の子守唄」以来の10分を超える超大作なのですが、タイトルにもあるように船を主な舞台としたこの曲の歌詞を初めて読んだ時、私の中のアイドル=船のイメージと強くリンクする部分が多くあり、とても驚きました。

作詞をしてくださったまいさん(@ellemai)にいつか詞についてのお話を伺う機会があればいいなぁと思っているのですが、演者としては深く知らないままの方がよいこともあるかもしれないので悩みどころです。

“6部構成”“フレーズの繰り返しなし”“ステージの枠からはみ出た振り付け”というアイドルソングとしては規定外とも言える作品に仕上がったこの曲。

いかんせん曲が長いので、なかなか普段のライブで披露する機会は多くはないかもしれませんが、今このタイミングで私の思い描くアイドルの概念を詰めこんで表現できる曲をいただけたことをとても嬉しく思っています。

キスエクという船は3rdワンマンを経由地として、また新たに出港しました。
次はどこへ向かっていくのか、次に立ち寄る場所はどこになるのか。
たくさんの方々とその行方を楽しんでいけるような、強くて安定感のある、乗り心地のよい船でありたいものです。

【プロフィール】 一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと

WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

<一色公式Twitter> https://twitter.com/hiiro_moe

<公式Twitter> https://twitter.com/xoxo_extreme

<公式YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA

【活動情報】

一色萌(ひいろもえ)
デビュー7インチ・シングルレコード
「Hammer & Bikkle / TAXI」発売中

XOXO EXTREMEの一色萌が遂にソロデビュー!20年代のパブロック/パワーポップ/モダンポップを追求するNEWアイドルの誕生!佐藤優介Proによる「Hammer & Bikkle」とデフ・スクールの名曲「TAXI」を日本語詞でカバー。何と本家デフ・スクールがバックトラックを新録した奇跡の日英コラボによる7㌅シングル

価格:1,500円+税
レーベル:なりすレコード
品番:NRSP-789

詳細はこちら!
https://upluslive.udo.jp/schedule/20201127.html

<取材・オファー等> Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)

一色 萌・小嶋 りん・浅水るりの3名からなる、プログレッシヴ・ロック(略:プログレ)※をモチーフとした楽曲をパフォーマンスしているアイドル。
※特徴として、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子が多い、といった点が挙げられる。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2019年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
翌2019年には、日本のプログレバンドの雄、金属恵比須とのコラボレーションで、90年代プログレを代表するスウェーデンのバンド、ANEKDOTENの「Nucleus」を公認カヴァー。

同年7月25日には2バンドを擁してのセカンドワンマンライヴを渋谷WWWにて行った。

都内を中心にライヴ活動を行なっており、プログレッシヴ・ロックを知っている人も知らない人も楽しめる、と好評を得ている。