コロナの中でも飲食店舗の売上増やす「シェアリングブランド」 下北沢の人気店「もつ小屋」は“シェアブラ”で急成長

下北沢の台湾もつ鍋専門店「台湾もつ鍋本舗 もつ小屋」が、新型コロナウイルス禍の中にも関わらず過去最高の売上を更新し、飲食業界から大きな注目を集めている。その躍進の背景にあるのは、同店の「シェアリングブランド」というサービスだ。

この聞き慣れない言葉「シェアリングブランド」、通称「シェアブラ」とは、一つの店舗で複数のブランドのメニューを扱うというものだ。

もつ小屋のメニューを覗いてみると、同店自慢の台湾もつ鍋以外にも、人気店の看板メニュー、たとえば『曾さんの餃』」の「肉汁爆発 焼き餃子」や『ヒノマル食堂』の「石焼ホルモン」、『CRISPY CHICKEN n’ TOMATO』のクリスピーチキン、『SELECT CAFE KKOTBING』の韓国カキ氷などが並んでいる。

人気店舗の看板メニューの他、それらの店の他のメニューも食べられる。

もつ小屋では人気店から一種の“のれん分け”ともいえるパートナー契約を結ぶことで、ブランドロゴ、レシピを借り受け、メニューに加えている。また調理された食材をそこから仕入れることにより、調理工程の簡素化、在庫ロスの削減にもつながっているという。

もつ小屋店長の宮下りささん。

たしかに、店舗側からすればメリットが多い。オリジナルレシピの開発の必要がなく、調理が簡易化されているために、専門スキルのあるスタッフがいなくとも営業することができる。そして接客により集中し、ホスピタリティの上昇に努められる。

一方、もつ小屋ではテイクアウトやUber Eatsで、『CRISPY CHICKEN n’ TOMATO』のクリスピーチキンを提供しており、こちらだけでも月間百万円異常の売上を上げている。メニュー開発等のコストがなく、テイクアウトや出前だけでこれだけ売上が作ることができれば、シェアブラ様様(さまさま)だろう。

また同店によれば、スタッフをパートナー側に研修に行かせたり、スタッフ同士を交流させたりすることで、大きくモチベーションがあがったという。

スタッフたちに「パートナーの看板メニューを扱っているのだから」といった責任感や、相手方のスタッフの接客や調理の良いところを学ぼうという姿勢が育ってきているそうだ。コロナ禍の中、飲食業界の就業は敬遠される向きもあるし、もともと離職率も高い。だが、そういったプライドをもったスタッフたちが定着して育つことは店にとって大きなメリットだ。

『CRISPY CHICKEN n’ TOMATO』のクリスピーチキンは、自身好物だったといいう宮下さん肝煎りの商品だ。

そしてシェアリングブランドは、店にとっての経営的なメリットだけではない。あくまでも客にとって良い店だからこそ、こんな時代にも関わらず売上を順調に上げているのだ。実際に客として利用してみると、たしかに面白いし嬉しい体験ができる。1店舗でも、同時にあの店この店の看板メニューが頼めるのだ。

飲食店ではウリとなるメニューは数を絞るのが普通だ。もし1店舗で、複数の看板メニューを作っても、客は「同じ店の味だから」と、看板メニューをメインに1つ、サブのメニューをいくつか、といった注文になるだろう。実際はメインを複数注文しても良いのだが、心理的にそうなってしまう。

だがもつ小屋では、違うブランドということで心理的な障壁を持つことなく、看板メニューをメインとして複数頼むことができてしまう。だからテーブルの上にならべられた料理は圧巻だし、どれをとっても当然美味しい。客にとっても豪華で豊かな体験ができるのだ(店舗にとっても高価なメニューが複数注文されれば客単価もあがっていいことずくめだろう)。

そんな価値ある体験ができる店だからこそ、新型コロナウイルスの影響下にも関わらず、前年比を大きく越える売上を打ち立て、今業界から注目される店舗になったのは間違いない。

コロナ禍のもと、店舗を持たないゴーストレストランといった新業態が注目を集めているが、客にとって、家とは異なった空間で飲食をして饗応される場として、やはり飲食店は大きな魅力を持っている。そしてシェアリングブランドは、そんな店舗に、複数のブランドメニューを置くことで、1店舗でも複数店舗であるかのような魅力を持つことが可能にした。

そんなシェアリングブランドを打ち立てたもつ小屋は、今後、目黒区の学芸大学駅の方に新店舗を予定しており、シェアブラを使ってさらにユニークで美味しい体験のできる空間を作っていくという。

Uber Eats配送員用のお水の用意も。こんな気遣いも、同店の良い雰囲気を作っている。

【もつ小屋】
〒155-0032
東京都世田谷区代沢5丁目32−3 アクア下北
下北沢駅西南口から徒歩5分

公式HP  https://motsugoya.jp/
電話番号:03-6453-2388
営業時間 
月・火・木・金:17時〜0時
土曜日:10時半〜14時半(ランチ営業)、16時〜0時
日曜日:10時半〜14時半(ランチ営業)、16時〜23時
定休日:水曜日

※コロナウイルス対策として店員のマスク・手袋の着用、手洗いの徹底、アルコール消毒液の設置、十分な換気を行って営業している。

編集部: