ファッション大手・豊島とWWFジャパンの提携が話題に 業界にサステナビリティ浸透を目指す

繊維商社大手・豊島株式会社と環境保全団体WWF(世界自然保護基金)ジャパンが、地球環境の保全とサステナブルなファッションの普及拡大に向け、共同の取り組みを行うことを発表して大きな話題となっている。具体的には水スチュワードシップと、サステナブル素材の調達を推進。WWFジャパンとの協働は、日系ファッション企業としては初となる。

豊島の動きはファッション業界に新たな潮流を

なぜ、この取り組が大きな注目を浴びているのか? それはプラスチックごみなどの環境汚染や、持続可能な開発目標(SDGs)への社会的関心が集まる一方、ファッション業界は「世界で2番目の環境汚染産業」として知られるようになってきたからだ。

実は衣服の製造は、気候変動に大きく影響すると言われている。繊維産業は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占有し、全世界の廃水の約20%を生んでいる。また、再利用可能であるにもかかわらず、繊維素材の85%は最終的に埋め立て処分または焼却処分がなされている。

製造するにしても廃棄するにしても、ファンションは消費のサイクルにおいて環境負荷がきわめて高いのだ。海外のファッション業界はこの問題に対して鋭敏に対応を行ってきたが、日本は取り組みが遅れていると言われてきた。

繊維原料から製品まで、年間1億枚の服を供給している豊島株式会社が、ここで大きく動いたことは、日本のファッション業界に大きな潮流を巻き起こす可能性がある。とはいえ、豊島は今回のWWFジャパンとの協働が注目されているが、環境問題への取り組みを、日本企業として早い段階から行ってきたことも間違いない

30年前から環境負荷の低い繊維を

環境負荷を軽減するテンセルといった天然繊維を30年前から取り扱い、国内最大級のオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」や、廃棄食料を再活用するフードテキスタイルなど、継続的にサステナブルなプロジェクトを展開してきた。以下が豊島が注力してきた素材・製品・プロジェクトだ。

  • トレーサビリティーを実現した「トルコオーガニックコットン」
  • レーザー加工により水の使用量を約67%カット、ファスナーテープなどにも再生素材を使った「サステナブルデニム」
  • 樹木パルプのみを使用した再生セルロース繊維「テンセル™」
  • 使用後のペットボトルや紡績工程の廃棄物を含む高品質な100%リサイクル素材「PBR」
  • サステナブル原料を使用した「wonder shape GREEN」
  • リサイクルダウンを使って製品化するプロジェクト「WILL CYCLE DOWN」
  • 不要な繊維製品から再生ポリエステルを生産、新たな服を作る取り組み「BRING」
  • 日本で最も多くのアパレルブランドが参加するオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」
  • ファッション業界から食品廃棄物を考え、再活用するプロジェクト「FOOD TEXTILE」

また、これだけではなく、同社のステートメントは「MY WILL」であり、豊島がいかにサステナビリティを重視しているかが伺える。

サステナビリティの世界標準推進目指す

今後豊島は、ファッション業界全体への普及を目的として、WWFジャパンの豊富な実績と知見の裏付けを元に、水の使用状況の改善、サステナブル素材の調達を強化。

具体的には繊維業界の環境負荷の高い水に関する『水スチュワードシップ』を推進。

「水の利用、化学物質の利用、排水」の水リスク課題について、豊島社内、製造委託先、パートナー企業と共有・把握し、協働して改善活動を行っていく。①豊島社内で実施する啓発セミナー、②該当工場へのアンケートの順次実施、③環境負荷の実態把握調査、④改善活動計画を作成するという。

また、持続可能な繊維素材の調達に関する、自社における改善目標の設定をWWFジャパンと協働して開始する。トレーサビリティがとれていて、かつサステナブルな認証が得られた素材の調達に関する目標を掲げ、サプライチェーン全体での取り組みと、普及啓発活動を継続的に行っていく。

またWWFジャパンのパンダマークの付いたタグを商品に付けて販売することで、トレーサビリティやサステナビリティ認証が取られた商品かどうか、消費者にわかりやすく示していくという。

12月10日の記者会見には、モデルでエシカルファッションプランナーの鎌田安里紗氏と、同社の代表取締役社長・豊島半七氏とトークショーを行った。豊島社長は「世界の環境を守って、次世代に継承していくことが私達の使命です。取引先のファッション企業様の協力を得ながら、持続可能な環境作りに少しでも貢献したい」と語った。

編集部: