ホラー漫画家版「まんが道」が面白すぎて話題 伊藤潤二、日野日出志、犬木加奈子、古賀新一の恐怖青春コミック

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『怪奇まんが道』(集英社ホームコミック)
『怪奇まんが道』(集英社ホームコミック)

『エコエコアザラク』『地獄変』『富江』『不思議のたたりちゃん』など、多くの読者にトラウマをうえつけたレジェンド作品、そんな作者たちのホラー漫画人生にせまった『怪奇まんが道』が本日発売。大きな反響を呼んでいる。

■レジェンドホラー作家たちの青春と苦悩

古賀新一、日野日出志、伊藤潤二、犬木加奈子という、ホラー界の大御所へのインタビューを漫画に再構成したもので、原作は宮﨑克、作画はあだちつよし。作品の恐ろしさや禍々しさとは裏腹で、舞台裏にあった作者たちの苦悩と青春のエピソードは胸を打つものばかり。

■古賀新一とカベさんの侠気エピソードがかっこよすぎ

女子中高生に魔術ブームを起こした『エコエコアザラク』、作者の古賀新一は、連載中に多くの心霊現象に悩まされ連載終了を決意するのだが、秋田書店のレジェンド・壁村耐三編集長が「(恐いことが起こったら)俺を呼べ」と言うのなんて、恐怖ではない鳥肌もののかっこよさ。

■日野日出志を救った手塚と赤塚

日野日出志といえば、『地獄の子守唄』のラスト、「きみはこのまんがを見てから3日後かならず死ぬ」というシーンを読んで、子供たちからの「僕、死んじゃうんですか!?」という電話が編集部に殺到したエピソードでおなじみだ。そんなホラー漫画界の“神”が、かつて描けなくなった時、それは救ったのは“漫画の神様”手塚治虫と“ギャグの神様”赤塚不二夫だったのだ。

■伊藤潤二と犬木加奈子というライバル

また伊藤潤二と犬木加奈子の両先生が、『月刊ハロウィン』の「楳図(かずお)賞」を争い、伊藤先生が入選、犬木先生は佳作だったことや、一方は今も現役、一方は筆置くという作家としてのその後の人生について、相手に複雑な感情を覗かせる様子にも、筆者はグッときた次第。

そんな目をひきやすいエピソードでなくとも、若くして最高の恐怖を想像し、死を見つめてきた作家たちの、淡くも情熱あふれる青春譚にあふれた一冊。かつて『ハロウィン』や『サスペンス&ホラー』にはまった少女少年たちには必ず響くはず。

また筆者的には男臭い作品イメージだったあだちつよしの作画も、ホラー作家たちの世界観を壊さないよう絶妙に描いており素晴らしい!

文/高野景子