人気ナンバーワン少年漫画誌「週刊少年ジャンプ」の発売日は、一般的には月曜日、だが、土曜や日曜なんかに「早売り」している店がある。みなさんもその昔、そういう店にそわそわと通ったことがあるのではないだろうか。“仁義なき早売り”の店に、最近の漫画事情を聞いてみた。
ジャンプ自体は現在でも『暗殺教室』『NARUTO』『ONE PIECE』『黒子のバスケ』などなど、人気漫画は多数掲載されている。だが、早売りで購入している人たちにはちょっとした変化があるようだ。
早売りは違法なのか?
この店は都内某所のバラエティショップ。日用雑貨からビデオ、DVD、雑誌などを幅広く扱っているところだ。この店では10年近くにわたって『週刊少年ジャンプ』『週刊少年マガジン』などの1日か2日早い販売を行ってきた。
今では「フライングゲット」と言われるようになった早売りは、違法というわけではないが、それが出版社や取次などに知られると、もう商品を卸しても彫らなくなるなどの制裁が課されることもある。それだけにリスクのある“ヤバい”行為であるのは間違いない。
しかしそれでも続けているのは「ドン・キホーテなどに押されてうちみたいな店はバッタ屋は大変」(店長 63歳)
早売りで買う客に高齢化の波
興味深いのは早売りで週刊漫画誌を買う客層について。かつて少年たちが一日も早く、あの話の続きを読みたいということで買っていた。筆者も毎回ちっとも進まない『ドラゴンボール』のフリーザ編が読みたくて、地元の薬局で早売りのジャンプを買っていたものだが。
「今早売りで買いに来るお客さんは、30代から40代の背広を着たサラリーマンの人が多いね。どちらかというと、ちょっとオタクっぽいというか、地味で真面目そうな感じ」(同前)
集英社のADページに掲載されているジャンプの読者層を見てみると、一番多いのが13歳〜15歳/37.1%、10歳〜12歳/25.9%、16歳〜18歳/21.4%、19歳〜24歳/7.0%、9歳以下5.1%、25歳以上/3.5%という構成になっている。オッサンは、ほとんど読んでいない数字になっている。
先の店長によれば「子供も買いにくるけど、昔より減っている。やはりメインはサラリーマン」というから、上記のデータとは異なった印象。たしかに、アダルトなものも扱っている同店は、子供たちからすれば、やや入りにくいと思われる。
ジャンプのフラゲだけが唯一の楽しみの中年サラリーマン
店長によれば「ジャンプの早買いだけが『唯一の楽しみ』なんて人もいるから、けっして褒められたことをやってるわけではないけれど、売ってよかったと思う時もある」。
早売りは完全に違法というわけではないが、それがインターネット上にアップロードされてしまえば、著作権違法となるし、これまでにも何件も刑事事件化している。そういった“犯罪”との関連性や、ビジネスとしての公平を損なうことから、当然ながら許されていいものではないだろう。
だがそこから見える、少年ばかりが読んでいるはずの漫画誌を、元少年たちが“唯一の娯楽”としてフラゲしてまで買っている姿は、どこかせつないものがある。
文/原田大