アベノミクス終了のおしらせ?
昨年末の政権交代以降、急激に進んでいた円安が、にわかに円高に転じはじめた。5月下旬には1ドル104円に迫るほどだった円相場は、わずか半月あまりで一時95円台まで下がり、今も乱高下を繰り返しながら、じわじわと円高が進んでいる。
円安に呼応して上昇を続けていた日経平均株価も円高に転じた途端に急落し始め、アベノミクスは早くも終焉を迎えたか、とため息を漏らす市場関係者も多い。
しかし、この状況に胸をなでおろしている業界もある。食材の大半を輸入品に頼る外食産業や加工品メーカーなどだ。特に、我々が好むコスパ飯は、安価な輸入食材無しには成り立たない。
景気回復を喜んでいたものの……
景気が上向きだった春先ぐらいまでは、行楽弁当やランチなどの売れ筋が高価格帯にスライドしているなどの”恩恵”もあったが、予想以上のスピードで進んだ円安は、材料の調達コストの膨張を招き、経営を圧迫していた。同時進行の光熱費や燃料費高騰も影響して、小麦粉、ゴマ、マヨネーズ、パン等々、食品メーカーがこぞって値上げに踏み切っていることは、すでにご存知の通り。さらには、豆腐などの大豆製品も輸入に頼るところが大きく、メーカーは苦境を訴えている。
「このままでは仕入れができない、と言うことでウチでは値上げをしたり1食分の量を減らして対応したんですが、これ以上円安になったらもっとヤバイと思ってたんで、正直ホッとしてますよ」(外食企業関係者)
こうした声につぶさに反応し、外食関連の銘柄に活路を見出そうとしている投資家もいるのだという。
展開が速すぎるとの不満も
ただ、安堵した外食関係者が口を揃えて言うのは、急激過ぎる、ということ。乱高下という言葉が使われているように、先が読めないだけでなく上げ幅や下げ幅が大きすぎるがために、相場に応じた取引がしづらいのだそうだ。
「大量注文を入れる時は、ある程度相場の動きを予想して額を決めるんですが、今みたいな値動きだと難しいですね」(バイヤー)
また、いくら食材が安く調達できたとしても、消費者の財布が再び堅くなってしまっては元も子もない。複雑な状況は続いている。
最近の市場の動向について、安倍首相は「徐々に落ち着いていくのではないかと期待している」とコメントしている。その落ち着きがいつやってくるのかは分からないが、もしそうなるのなら、なるべく早く訪れて欲しいものだ。
文/林田卓夫