気鋭の映像作家・植野有子氏が シンガーソングライター・AKRM(仮)のワールドデビューMVを制作! 半密着レポート #02

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撮影はすべて川の中で

国内キャリア10年を超えるシンガーソングライター・AKRM(仮)のワールドワイドデビュー曲[Dead In A Hundred Years]のMV撮影は9月16日に行われた。
「当日は朝5時半に都内を出発、7時頃、撮影地の河川に到着しました。8時から撮影を開始、18時半頃に終了しました。撮影日近辺で台風の接近が数度あり、天候はやや読みづらい状況でしたが、雨天にはなりませんでした。気温はそこまで低くありませんでしたが、水温はやはり9月中頃でしたので、やや低かったです」(株式会社TYO・藤原拓海プロデューサー)

撮影はスケジュール通りに進んだのか。
「予定にほぼ沿った形で撮影できました。また、コンテには無かったカットなど、現場で生まれたアイデアでの撮影も含めて行えました」(藤原プロデューサー)
「幸運にも日中陽が差すタイミングが何度もありました。曇り想定の香盤でしたが、天候に合わせて撮影順を前後させたりしました」(植野有子監督)

実際にはどのようなシーンが撮影されたのか。コンテから一部を抜粋してみよう。

 フェードで山並みが出現
 どんどん川に近づいてくる(C1)

[AKRM]さんが川を上るサイドショット
 水面が、画面上半分の反射になってゆく
 山並みや空の色、形、テクスチャが変化(C4)

 水中に何かあると気づいた[AKRM]さん
 ハッとして川の中に手を伸ばす(C8)

 水面の上に浮く脚(C16)

 繋がれた手が、離れ離れになる(C16)

 何かを見つめる横顔に、景色(or マチエール)が重なる(C18)

 [AKRM]さんは、夕日に照らされながら前へと歩いてゆく(C20)

「シチュエーションとしては3ヶ所、人物の入るカットは10シーンほど撮影しました。今回の作品は素材で絵を作るという感覚で編集を組むつもりでしたので、エキストラカットや合成用の素材もなるべく多く撮影しました。これといったハプニングはありませんでしたが、カメラ前にいたスタッフは、私を含め全員が気付けば下半身ずぶ濡れになっていました。ガッツのあるメンバーで良かったです。とても助けられました」(植野監督)

地球がこのMV撮影を反対せずに認めてくれた

[AKRM]に撮影の感想を聞いた。
「『地球にお手伝いしていただいた』」という感じ。水の流れとか天候とか、こちらで調整できないでしょう。『雨が降りませんように』とか神頼みの部分もたくさんあったんだけど、こちらの強い願いが通じたのか順調に進んでホッとしたわ。
もちろんスタッフの皆さんのおかげなんだけど、まず地球がこのMV撮影を反対せずに認めてくれたからこそ無事に撮影することができたんだと思うの。
だからこそ真剣に取り組まなきゃって、本番当日はかなり集中したわ」

これまでのMV撮影と違っていたところはあったのか。
「植野さんからシーンによって細かく指示をもらったの。これはMV撮影では初めての経験だったわ。『”亡くなったけど会いたい人”のことを思って!』とか。植野さんって本当に凄いアーティストよ。だから表情や動きにも注目して見てほしいわね」

被写体としての[AKRM]は、植野監督・藤原プロデューサーの目にはこう映ったという。
「例えば、銭湯で『なんだかみんな、きれいだな』という瞬間ってあると思うんですが、その感覚に近いかもしれません。自分の居場所を守り、命をまっとうしている。その日々がからだに刻まれている。ひたむきに生きてきた証です。そういうものを感じました。彼女には表情を作ってもらうのではなく、曲を作った時の心境に近づいてもらい、こちらはその時に彼女が纏う“空気感”を捉えることを意識しました」(植野監督)
「身体を使った撮影はご経験の中でも多くは無かったかと思いますが、終始ポジティブに臨まれている印象でした。山奥河川での撮影は(水温的に)かなりハードだったかとは思いますが、植野監督と二人でどんどん水の中に入っていく姿が印象的でした」(藤原プロデューサー)

植野監督・[AKRM]にお気に入りのショットを挙げてもらった。
「天を仰ぐ横顔のアップショット。今までにない表情を撮れたのではと思っています。そしてこのカットには、全編を通して唯一、人工物が映っています。これは全く意図していませんでしたが、[AKRM]さんと橋が重なって十字架に見えたり、編集の時に色々な見方ができて楽しかったですね」(植野監督)
「水に手を入れる瞬間のシーンね。植野さんから“全ての指が見える角度で…”など繊細なアドバイスを受けながら何度もトライしたわ。そして私自身も今まで見せたことのない表情をしているはず。ぜひチェックしてほしいわ」[AKRM]

確実に出来が期待されるこのMV、編集後の本編はどう仕上がったのか。試写の模様は次回(12月20日頃)お届けする。ティザー動画も公開の予定だ。

[参考]
植野有子監督オフィシャルサイト https://uenodir.wixsite.com/official
株式会社TYO https://tyo.co.jp