アイドルのライブはなぜ泣けるのか? 乃木坂46、夢みるアドレセンス、Negicco、ベルハー等を…人気アーティストが解説


『サイプレス上野とロベルト吉野の アイドル ライヴ  オン ダイレクト』
『サイプレス上野とロベルト吉野の アイドル ライヴ オン ダイレクト』

もはや当たり前、そんなカルチャーへと成熟したアイドルシーン。AKB48グループのような集団の物語性として解説されたことはあっても、シーンに通底する“感動”は、たしかな根拠から解説されたことはない。「アイドルはなぜ泣けるのか」そんなテーマに迫った一冊が興味深い。それが人気ヒップホップユニット「サイプレス上野とロベルト吉野」による新刊『アイドル ライヴ オン ダイレクト』だ。

■プロも注目する「ステージのプロ」がアイドルを解説

同書は正確に言えば、年間数百のステージをこなすラッパーによる「ステージ論」。サイプレス上野とロベルト吉野、通称サ上とロ吉のライブと言えば、同業者はもとより、アイドル、海外アーティスト、特撮、時代劇、ゆるキャラ関係者までが、「盛り上げる」圧倒的なステージング力を参考にするため。そのライブを観にくるとも言われている。

■乃木坂46生駒里奈「凄玉」論が面白い

ステージのプロフェッショナルが解き明かす、アイドルたちのステージ。たとえば乃木坂46の生駒里奈、夢みるアドレセンスの荻野可鈴らを“凄玉”という言葉から解説。日本の政界では土井たか子、片山さつきなどが“凄玉”と言われ国会答弁でのパフォーマンス力を評価されてきたことを、個人的には彷彿とさせられた。ステージングとメンバーの性格、また他のメンバーとのマネジメント論としても白眉だ。

2015年最ブレイクアイドルと言われるNegicco、また昨年解散した注目グループBiSについては、オーディエンスが「嫁にしたい」「嫁にしたくない」と思うかという、わかりやすいジェンダー論的観点もまじえて解説。

■未成熟なメンバーたちの、成熟したステージ

また大人が10代の少女たちに熱をあげていることへの“世間の視線と実際”については、山梨の人気アイドルPeach sugar snowのステージと、絶対的な実力から“真の魅力”について解説。小中学生のアイドルが出演した際の、ライブハウスの女性スタッフの様子といった細かい点にも着目しているところも慧眼だ。

インディーズアイドルシーンでは、もっとも実力と人気があるというBELLRING少女ハートのライブレポートも興味深い。一般的な理解が得やすい/得にくいのはざまをいくグループについて、漫画家の丸尾末広、フレッシュネスバーガーなどを例にして(?)独特な解釈を提示している。

■アイドルファンじゃなくても爆笑&爆涙な一冊

「アイドルはなぜ泣けるのか」その明確な答えが語られるわけではないが、ステージのプロによる解説は、そのアイドルたちのステージを観たことがある人たちなら膝を打つものだろう。また筆者のようなアイドルにあまり関心がない者でも、“観てみたい!”と思わせる、笑って泣ける内容だった。アイドルファン、そうでない人もエモーショナルに読める一冊だろう。

AKB、ももクロなどまったく興味がなかった筆者だが、ここに取り上げられていた青SHUN学園、BELLRING少女ハート、lyrical schoolなど観に行ってみたくなった次第。

文/田嶌誠一


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