4月11日に永眠した「ラーメンの鬼」であり「麺聖」とも呼ばれた佐野実さん(63歳)。糖尿病による多臓器不全が原因だった。ラーメンの道を厳しく極めるというスタンスと、その面倒見の良さから、業界では多くの人から慕われていた佐野さん。
そんな佐野さんの人生は波瀾万丈だったのは間違いない。貧乏からのスタートと理解されない己のこだわり、最初の妻との離婚、盟友の死など、様々な苦難のなか、至極の一杯を作り続けた。またそんな佐野さんは、人気店から「あの男を逮捕してくれ」と告発されたこともある。
「山梨県甲府市の人気ラーメン店・蓬莱軒の初代店主との間でトラブルがあったんですよ。当時は週刊誌も賑わせましたね。店主によれば、コックコートをきた佐野さんが突然店に乗り込んできて『まずいラーメンを食べにきた』と怒声をあげ、椅子を振り上げて暴れまわったと主張しているんです」(ラーメン誌関係者)
たしかに蓬莱軒のホームページを見てみると、「隠蔽体質は教育界だけじゃない! マスコミによって伏せられた真実がここに!」というページがあり、トラブルについて蓬莱軒側から描かれている。
「当時は週刊現代とポストがとりあげました。だが事件性がなかったとして結局、1回きりの報道になっている。佐野さん関係者からの言い分もあったようですし、まあ触らぬ神に祟りなしで終わったようです」(週刊誌記者)
蓬莱軒の店主もコックコートを着てオールバック、また支那そばという名前を早くから使っていたことから、地元では印象の“かぶる”佐野さんへの反感ももともと強かったという。とはいえ、佐野さんももちろんコックコートでオールバック、支那そばという名前をオリジナルで編み出している。
そういった偶然の一致もあり、思わぬ因縁を作ったようだ。そんなトラブルがあったにせよ、現在のラーメン業界の隆盛を佐野さんが作った部分はかなり大きいわけで、その偉業になんら傷がつくわけではないだろう。
文/鷹村優