■30円のなつかしのアイスはまだ元気
子供の頃、10円玉を3枚握りしめて買いにいったアイス、ホームランバー。いまでもあれ、存在している。というかすっかり“アダルト”なホームランバーへと変貌しているのだ。またネオン街では、水商売の女性に人気であるために“夜のホームランバー”なんて呼ばれることも。
■現在は90円の“大人版”が発売
今発売されてるのは「ホームランバーNEO 濃厚チーズケーキ」でお値段は90円、手軽な値段とはいえ、子供ならひっくりかえるほど味は濃い。新宿歌舞伎町のコンビニ店員によれば
「郷愁を誘うんでしょうね、疲れた夜の蝶たちにはかなり人気。キャバ嬢たちが、うちのコンビニの前でたむろしてペロペロ食べている姿は、幼な気でグッときます。恋愛相談でもしてたのか、2人のキャバの子がホームランバーなめながら泣いてお互いに話している姿は、ちょっと感動しちゃいました」とのこと。
また、さすがにいい年の大人が30円のアイスを食べるのは気恥ずかしいが、この大人のホームランバーならちょうどいい。
■ハーゲンダッツに圧勝する、子供心くすぐる味
ホームランバーといえば、まわりの銀紙をはいでいくと、中からあんまりアイスっぽくないヌメッとしたブツが出てきた記憶がある。それでバニラっぽい味があんまりしなくて、チープな味わいだったはず。だがいまやビニールのパッケージ、アイスもちょっと大人な、ふつうのアイスっぽくなっている。かじってみると、値段が3倍になっているように、濃さも3倍。
だが、けっしてハーゲンダッツのような過剰な味わいではない。
我々の胸の奥をゆるがすような、アンナチュラルなこってりとした甘さがあって、その底には駄菓子感を失っていないのだ。たしかに、歌舞伎町のお水たちが、このアイスのなかに甘い昔を思い出すのは当然だ。
■ほの寒い季節こそ大人のホームランバー
これだけ肌寒くなってくると「アイスなんか」と思うだろうが、お酒をたっぷり飲んだあと、コンビニ行ってついつい買ってみてほしい。酒でほてった身体にちょうどいい。大人っぽい味なんだけど、よく味わうとチープでジャンクで、なつかしさがちょっと涙腺をうつ。
子供の頃はよかったな、まさか自分がバイトかけもちの木っ端ライター、おまけに四十路直前の独身女になるなんて思わなかった。ケーキ屋さんとお嫁さんが、本気で夢だった。そんなことを思いながら食べた次第。キャバ嬢の子たちも、こんなことを思ったのかしら。
ちなみに知人がスナックでモテようとこれを大量に持ち込んだら、オバチャンたちにも好評だったとか。安ウィスキーにも合うそうな。
文/高野景子