牛丼チェーンの吉野家は酒とつまみを充実させた店舗を「吉呑み」と売り出しているように、ジャンク&ファーストフード各社が「居酒屋業態」に手をのばしている。アルコール類の利益率の高いメニューで少しでも売上をあげようとする戦略だ。そんな中、意外と言えるチェーンが参戦した、それは首都圏では有名立ち食いそばチェーンの富士そばだ。
富士そばは現在、生ビール350円を240円(24を「ふじ」と読ませる)に、ひそかに値下げしているのだ。つまりビールが格安で飲めるわけで「富士呑み」を誘っているのだ、たぶんだけど。
吉呑みできる吉野家も生ビールは310円なので、富士そばの値段は圧倒的に安い。
富士呑みを推奨するのはフードライターの土佐源一氏。
「海苔や天ぷらをアテに一杯ひっかけ、最後にそばをたぐるというのが、昔ながらのかっこいいそば屋でのふるまい。だけど、ふつうのそば屋でそうすると最低でも2000円ぐらいはかかっていたし、一方、回転率命の立ち食いそばは酒を飲ませるのには力を入れてこなかった。それだけにこれは革命です」
一番安い飲み方としては、110円ぐらいの天ぷらでビールを飲む。そんな富士呑みの最低金額はわずか350円。
さっそく富士そばに行って、券売機で生ビール(缶ビールしかない店もあるので注意を)を購入、天ぷら単品はカウンターでの現金渡しだ。店員さんが「天ぷらにあったかい汁かけますかー」というので同チェーンのクセのある出汁を、じゅわっとかきあげとちくわ天にかけてもらった。
天ぷらにたっぷりの七味唐辛子をかけて、そしてビールを飲み始めると“これはいい!”のだ。正直ものすごく美味いわけではないのだが、なんだか、かっこいい大人になった気分になる。そばは注文しなくても怒られないし、ほんのひととき、ビールとちんまい天ぷらを食べるのは楽しい。
土佐氏によれば「会社帰りにそばを食べるほどじゃない時や、居酒屋に行くほどじゃない時に、富士呑みはオススメ」とのこと。今晩辺り一杯いかがでしょうか、暑い一日だったので、いい慰みになるのではと。
文/鷹村優