毎年年末近くになるとトレンドワードの辞典『現代用語の基礎知識』『朝日キーワード辞典』などが発売される。それらの中でも有名な某書からあるアイドルの名前が削除されたという。一体何が起きたのか?
「某書のエンターテイメントの項目に『ライブアイドル』を入れるかどうか議論になったんですよ。ライブアイドルというのは昔で言えば地下アイドル。ライブハウスを拠点にしたインディーズの女の子たちのグループを言うんです。現在数百以上もあると言われており、日本の音楽エンターテイメントを語る上では、もはや看過できない存在です。国民的アイドルに成長したAKB、ももクロ、Perfumeなんかも元はそうなんですよ」(エンタメ誌編集者)
今年フジテレビ主催で開催されたTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)というアイドルイベントには3万3千人ものファンが集ったのだが、これに参加していたほとんどのグループもライブアイドルだった。そんな状況からしても、この言葉も掲載されるはずであったという。
「たとえばその中でも注目度と人気の高いBiSやBELLRING少女ハート(通称・ベルハー)というグループ、またご当地アイドルとして有名なNegiccoなどの名前が、ライブアイドルの項目に盛り込まれるはずでした。しかし、上層部から『エンタメ性が強すぎる、もうちょっと固いテーマに』と土壇場でひっくり返されてしまったそうです。だからアイドルの名前がというんじゃなくて、ライブアイドルという言葉自体が削除されてしまったということなんですよね。とはいえベルハーやBiSは、アイドルどころか他のカルチャーにも影響を与えており、掲載に値するものなんですが」(音楽誌ライター)
たしかに今年のキーワード系の辞典では安倍政権や原発問題などにページがさかれている傾向があり、その中にアイドルなんて項目があれば、浮いてしまうのも否めない。
「とはいえ行き詰まった感のある日本社会において、アイドルたちが一部で癒やしの社会的機能を担っているのは間違いない。触れておいてもよかったのではと」(同前)
ちなみにそもそもなぜそんな言葉がエントリーされたかというと、ライターによればハードなアイドルオタクの編集者が同書にかかわっていたためだという。「削除されたことにがっかりしたみたいです(笑)」とのことだ。
文/原田大