体操教室を探していた人はほとんどいない——それでも5.5倍成長、ネイスが海外へ

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ショッピングセンターの通路を歩いていると、大きな窓越しにカラフルな器具が見えた。虹色のトランポリンでポンポンと跳ねる子どもたちを見て、わが子が「あれやりたい」と言い出した——。全国171店舗を展開する子ども向け体操教室チェーン「ネイス」の代表・南友介氏は、2月26日に都内で開いた発表会でそう切り出した。「入会される方のほとんどは、もともと体操教室を探していたわけではないんです」。

創業は2010年。元体操選手の南氏が29歳で立ち上げた会社だ。直近5年で店舗数・会員数ともに約5倍に伸び、先期の売上は28億円。今期もさらに5億円程度の増収を見込む。成長の柱が、171店舗のうち約9割をショッピングセンター内に構える出店戦略だ。

「親御さんは最終的な意思決定者。買い物と習い事の動線を一致させることで、週1回通う負担を減らせる」。月謝は週1回モデルで8,900円(ボリュームゾーン)、約7割の店舗はフランチャイズ運営で地域密着の加盟企業が担う。国内では将来的に500店舗以上を目指す構想を掲げており、「それでもまだ拠点は足りていない」と南氏は言い切る。

教室のコンセプトは、競技育成とは真逆に置かれている。「オリンピック選手を目指す子はほかの体操クラブをご案内している。うちのプログラムが重きを置いているのは、自己肯定感だ」。飛び箱が1段跳べた、2段になった。そのスモールステップが成功体験を積み重ね、自信を育む。南氏自身がADHDの診断を受けており、「うまく社会で働けなかったその経験が、今のプログラムに生きている」と発表会で明かした。講師の質を担保する仕組みも独自だ。本社に品質管理部を置き、全店舗に2〜4台のカメラを設置。体験後の入会率をKPIの一つとして、リアルタイムで各店舗の指導をモニタリングする体制を整えている。


取材当日は南代表が子どもたちの前で見事な技を披露!

この南氏、2004年アテネ五輪で団体金メダルを獲得した富田洋之・水鳥寿思と同期の元日本代表選手でもある。「3人でトップ3、一緒に海外遠征をしていた。アテネは俺たちの世代だと話していたが、私は大けがで断念した」。そして、テレビの前で「ずっとコケてくれと思っていた。本人にも言っているので大丈夫です」と笑いを交えて語った。その挫折が、競技と距離を置いた「楽しさで運動習慣をつける」という教室づくりの出発点になっている。

2021年には発達支援事業「ネイスぷらす」も始めた。きっかけは体操教室で発達障害のある子どもを受け入れられないケースの増加だった。「サードプレイスを作ると言いながら、断らざるを得ない現実への違和感があった。運動のプロである自分たちが、運動療育という形でできることがあると判断した」。現在11店舗を展開し、児童発達支援と放課後等デイサービスを提供している。

発表会のもう一つの主題が、海外初進出だ。行き先はマレーシアの首都クアラルンプール。国民の3人に1人が肥満という社会課題に加え、年中夏で屋外での運動が難しい気候が進出の根拠となった。昨年、現地で2日間のテストイベントを開催したところ「いつ開校するんだ、早くやってくれ」という声が相次いだという。

プログラムのローカライズはしない方針だ。「整列する、目を見てハイと返事する、日本では当たり前のことが、海外では非常に珍しい」。飛び箱を製造依頼した中国の工場から「なぜ日本人は箱を跳ぶのか」と問われたエピソードも披露した。学習指導要領に組み込まれた100年以上の文化を、そのまま輸出することが強みになると南氏は言う。5年以内にマレーシアで10店舗以上を開校し、将来的にはASEAN各国への拡大も視野に入れる。「運動と健康を世界に届ける、リーディングカンパニーを目指す」——子ども数が減り続ける国内市場の先を、元体操選手の創業者は海外に見据えている。

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