一色萌のアイドル、色々。第3回 「アイドルと生誕ライブ」

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こんにちは。プログレアイドル・xoxo(kiss&hug) EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

文章を書くのが、突然恥ずかしくなってしまいました。

私はアイドルについて四六時中考えているから、アイドルについて私が考えていることを書こう!と、この連載を始めさせていただきました。

ですが、いざ書いてみると「なぜそう考えるのか」という部分の前提や補強のためにけっこう自分のことを踏み込んで書く必要があることに気がついて、ふとした瞬間に「あれ、こんなに自分のことばっかり書いていていいんだろうか……」という気持ちが頭をもたげてきたのです。

そんなふうにモヤモヤしている時、ライブ会場や特典会でこの連載についての感想や応援の言葉をかけてくださる皆さんにとても励まされました。

おかげさまでなんとか立て直し、今もこうして筆を進めることができています。
その節は本当にありがとうございました。
コラムとブログの間くらいを目指して頑張りたいと思います。

今回のテーマは「アイドルと生誕ライブ」です。

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私は年間に100本ほどのアイドルライブに足を運んでいます。自分が演者として出演しているものも含めると、年間200日前後。ざっくりとした計算で、一年の3分の2程度をアイドル現場の空気に触れて過ごしていることになります。
そんな現場に入り浸りの日々のうち、年に何回かは“特別な公演”に遭遇します。

例えば、「お披露目ライブ」。「結成○周年ライブ」。「レコ発ライブ」。なるべくならあまり出くわしたくないですが、「卒業ライブ」や「解散ライブ」。
一組のアイドルさんが月に十数本から数十本のライブをしているライブアイドルの世界では、大小様々な出来事が特別なテーマとしてライブの主軸になり得ます。

そんな中でも、私が特に好きなものが「生誕ライブ」です。
どのくらい好きかというと、生誕ライブの告知を見つけたら知らないグループでも一旦自分のスケジュールを確認してみるくらいには、大好きです。
そして足を運んだら大抵の場合、その場にいるだけで空気にのまれてわけもわからず号泣していました。生誕になると現れて、なぜかめっちゃ泣いてる女ヲタ。我ながらかなり不気味なのですが。。

生誕ライブの何にそんなに心惹かれるのか?
明快なようで、一言で表そうとするとけっこう難しいこの問い。
生誕ライブに行ったことのある人も行ったことのない人も、一緒に思いをめぐらせてみませんか。

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まずひとつ、生誕ライブに先立つものとしてお尋ねしたいものがあります。
「お誕生日会」って、どういうものなのでしょうか。
その言葉を聞いて、どんなものを、どんな様子を、思い浮かべますか?

私が属する家庭での誕生日のお祝いといえば、家族に誕生日を迎えた人がいる日の夕飯のデザートがケーキになるという程度のものです。
ケーキが出てくるだけ、誕生日に無頓着というわけではないと思うのですが、これはわざわざ「会」というほどのものでもない気がします。

対して、本やアニメの世界から知識として学んだ私の「お誕生日会」のイメージというと。誕生日の子の家に着飾った友人が集まり、カラフルな装飾に囲まれてご馳走・ケーキを前にみんなでわいわい過ごす。クラッカーとか、プレゼントなんかも用意しちゃったりして……どうですか、合ってますか?

なんとも賑やかな催しのようなイメージがあるのですが、いかんせん見たことも聞いたこともないので現実のこととは思えないのです。毎日誰かのお誕生日の世の中で二十数年生きてきて、一度も見聞きしたことがないのだからこの言い草も大げさではないでしょう。

もしもあなたが「お誕生日会」の経験者なら、世のお誕生日会の実情を私に教えてください。うーん、なんかすごくさみしい人みたいですが。。
友達がいないわけじゃないですよ、念のため。少ないけど。

ともあれ、私が初めてアイドルの生誕ライブを体験した時に感じたのは、長らく非現実的なものとして実在すら疑っていた「ザ・お誕生日会」が、今目の前で行われている!そんな感動でした。

つまり、前述のお誕生日会のイメージを生誕ライブの場合に置き換えると、

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誕生日の子の家=生誕ライブは大抵本人ないし所属事務所の主催であることが多い。
着飾った友人=生誕グッズを身にまとったファンやメンバー、共演者。
カラフルな装飾=会場内に有志の方々による装飾などが施されることがままある。
ご馳走・ケーキ=ケーキでお祝いするのは定番だが、特に凝ったケーキなどが用意されていることがある。
クラッカーとかプレゼント=用意されていることがある。
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ざっくりですがこんな具合で、一個人宅で実現するにはなかなか気合の要りそうなあれやこれやが、ライブハウスで定番として行われていることにとても驚いたのでした。

そしてこの場でなければきっと交わることのなかったであろう人たちが、「誕生日を祝う」「誕生日を迎えた子を喜ばせる」ために団結して、その目的を果たしている姿にとても感動しました。

私が地下のライブハウスに通い始めたばかりの頃、ライブの後に毎回感想をメモしていたノートには、BELLRING少女ハート(現・There There Theres)のメンバーさんの生誕ライブでアイドルとファンの距離の近さやその信頼関係の不思議な美しさにおもしろさを感じた、ということが書いてありました。
その公演が、私がアイドル現場へ足を運ぶ頻度を増やすきっかけのひとつとなったのは間違いありません。

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誰でも必ず一年に一度ある、そして絶対に一年に一度しかない誕生日。

その日だけは普段のポジションに関わらず、お誕生日を迎えた子が主役になります。イベント丸ごとその子がプロデュースするようなところもあれば、ソロコーナーを設けるところ、ファンの方たちが主導して企画をするところ、ライブではなくトークやオフ会などのイベントとして開催するところもあります。

もちろん特に何もしないところもありますが、運営主導にしてもファン主導にしても、規模の大小はあれど何かしらは行うアイドルさんが多い印象です。

生誕にあたってどういうものを企画するのか、その形や位置付けは運営さんによって様々です。普段は見られないようなステージが見られるチャンスとも言えます。

しかしながらその特殊さゆえに、生誕の空気が苦手という人も少なからずいらっしゃいます。

生誕の企画に熱が入りすぎると安易な内輪ノリに繋がりかねず、一歩間違えるだけで興行として成立しているのか怪しい有様になってしまう危険性もあります。
企画をする人はその部分のバランスを考えながら準備をすると思うのですが、それこそが最も難しい部分なのかもしれません。

大々的に祝われたくないから誕生日を公表しない、というアイドルの子もお見かけしたことがあります。その理由としては、単に年齢の話題に触れて欲しくないという場合もあれば、前述と同じく内輪ノリになったら嫌だからというケースもあるようです。

かくいう私も、誕生日を家族以外の人からお祝いしていただくことに慣れていないため身の置き方がわからず、特に2017年の生誕ライブでは主役としてはかなり頼りない感じになってしまいました。(参考リンク:私が初めての生誕ライブの後に更新したブログ)

「私のために来てくれてありがとう!」とか、少しは気の利いたことを言えればよいのですが、そんなことはとても言えるような精神状態ではありませんでした。根っからの脇役気質はこういう時に損だなぁと思うのですが、こればかりは性分ですから簡単には変わらないでしょう。私が生誕ライブで立派に主役をつとめる日はまだまだ遠そうです。。

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私は、アイドルでありながらアイドルらしからぬ肉体性や人間くささを晒してステージに上がる姿に、ライブアイドルの魅力を感じました。

そんな私にとって、お祝いされているアイドルとそのファン、その運営、仲のいいアイドル仲間、関係者、等々たくさんの人々の人柄がライブハウスの中に一挙として顕れる「生誕ライブ」の場がまた魅力的に映るのはなんら不思議ではないようにも思えます。

他人のむき出しの愛って、日常でなかなか目にすることのできないものです。
ましてや愛がキャッチボールのように、めまぐるしく飛び交う場面なんて、少なくとも私は地下のライブハウスで目の当たりにするまで見たことがありませんでした。

金銭の発生する公の催し物でありながら、演者と観客の関係性はビジネスというよりも友達や親戚、家族を連想させるようなあり方で、それでいてアイドルとしてちゃんと成立していて、何層にも重なり合った矛盾の上を幸福感が軽々と超えていく。
一見ものすごいことのような書き方をしてしまいましたが、これって実は普段のアイドル現場にもある空気感で、“お誕生を祝う”というきっかけでブーストされているに過ぎないのだと思います。

私は生誕ライブに“愛”や“関係性”を見に行っているのかもしれません。

昨年、初めて自分の生誕ライブを経験した後から、アイドルという概念をとりまく愛の行方についてすごく意識するようになりました。その表れとして、上にリンクを貼ったブログ記事の中で私は

「アイドルは人に愛され、人を愛するお仕事だと思います。」

と書いています。

それは今までに私が見てきた“アイドルの生誕ライブ”と比べて、圧倒的に頭数として足りていない愛。それでも来てくれた人が私にくれたほかとは比べることのできない愛。もらった愛に対して私が返しきれなかった愛。それらが生誕ライブを通してはっきりと見えたからこそ出てきた言葉でした。
すべての愛に対しての感謝や、悔しさ、不甲斐なさ、決心をもう一度昇華するために、次の年もあの日にあの場にいた人のために、一年間で新しく私を見つけてくれた人たちのために、来年も生誕ライブを開催できるような環境にいなきゃ、と思いました。
いつかどこかで聞いた「アイドルの生誕はファンのために開くもの」という言葉が、ここでようやく腑に落ちました。

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ちなみに。
私の属するキスエクは、メンバーの誕生日が4月・5月・6月・8月と比較的まとまっているため、春から夏にかけては生誕ラッシュになります。
半年間ほど落ち着かない期間を過ごすことになるのですが、やはり一公演終わるごとの達成感と喜びはなんとも言えないものがあります。

生誕ライブというものにもし興味がわいた方がいらっしゃったら、8月12日にメンバーの小嶋りんちゃんの生誕ライブがあるので、ぜひおいでくださいませ。
きっと楽しいですよ!

【プロフィール】
一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと
WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

<一色公式Twitter> https://twitter.com/hiiro_moe
<公式Twitter> https://twitter.com/xoxo_extreme
<取材・オファー等> Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】
xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)
楠 芽瑠・一色 萌・小日向 まお・小嶋 りんの4名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。プログレとは、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等が特徴の楽曲です。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2018年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。

同年2月4日に記念すべき初のワンマンライヴを鹿鳴館にて開催。プログレッシヴロックを知っている人も知らない人もも楽しめるLIVEと評判だ。