「100時間で100部屋を」 ジャブラ事業責任者が語るシンプル設計、大会議室向けに新ソリューション

「これがないせいで、私たちはずいぶん苦しいバトルをしてきた」。GNオーディオジャパンの安藤靖社長は、5月14日の発表会で、そう本音をのぞかせた。

同社が展開するJabraブランドが、長く手薄だった大会議室向けビデオ会議ソリューションをついに投入。中核となる新製品「Jabra PanaCast 55 VBS」を軸に、拡張スピーカーマイクと最大5台までの拡張カメラを組み合わせ、ハドルスペースから22名規模の大会議室まで、一気通貫でカバーする構成だ。あわせて小規模会議室・ハドル向けのUSBビデオバー「Jabra PanaCast U30」も発表した。

新製品「Jabra PanaCast 55 VBS」と関連プロダクト

大会議室への「苦しいバトル」から脱却

発表会には想定を超える来場があり、3日前に急遽広い会場へ振り替えたという。安藤社長は「日本のジャブラは、世界の中でも相当伸びている」と述べ、グローバルのビデオビジネス責任者やアジア各国の販売幹部が「日本はどんなことをやっているのか」と視察に来日していると明かした。

中核のPanaCast 55 VBSは、既存の50 VBSの進化版。180度パノラマ映像の特性を維持したまま、ノイズキャンセリング性能を引き上げた。背面にUSBポートを新設したことで、新開発のスピーカーマイクや拡張カメラを後付けで連結できる。バー単体での集音は半径6m、スピーカーマイクを組み合わせれば合計11mまで広がる。

「100部屋を100時間で」 シンプルさを巡る設計思想

キーノートに登壇したビデオ事業部シニア・バイス・プレジデントのHolger Reisinger氏は、製品スペックではなく価値観の話から入った。「私たちが毎朝起きて考えているのは、解像度やピクセル、音量のことではない。もっと深いところで、人と人を近づけたい」。Reisinger氏はジャブラの価値観を「Freedom(選択の自由)」「Innovation(革新)」「Trust(信頼)」の頭文字を取った「FIT」という枠組みで提示した。

象徴的だったのは、本人が「100万ドルの問い」と呼ぶエピソードだ。「100時間を自由に使えるとしたら、最高の役員会議室を1部屋作るのか、それとも組織に100部屋の会議室を整備するのか」。多くの企業は両方を望む。それを成立させるには、シンプルさと拡張性の両立が欠かせない。社内には「箱を開け、壁に取り付け、稼働させるまで15分」というチャレンジも課したという。「最良の技術は、それ自体が消えてしまっても機能するものだ」というのがReisinger氏の哲学だ。

今回のソリューションは、この哲学を1つのSKUで会議室の規模に応じた段階構成が取れる設計に落とし込んでいる。中会議室ならバー単体、少し広い空間ではモニター上部に拡張カメラ1台、22名規模ならカメラ2〜3台を中間地点に追加する。デバイス管理は無料のクラウドツール「Jabra+」で一元化し、各拠点のステータス確認やアップデートのスケジューリングを行える。

会議室規模に応じた段階構成のイメージ
「100時間で100部屋を」シンプルさを巡る設計思想
新橋オフィスに新設されたデモルーム

AIエージェントを支えるデバイス性能

ゲストセッションには日本マイクロソフトの水本美穂氏が登壇。水本氏は「Copilotの利用はTeamsリリース当初を上回るペースで広がっている」とし、「日本はアメリカに次ぐ世界第2位の利用国で、日経225を構成する企業の85%がすでに導入を開始している」と数字を示した。会議で使うAIは情報を返すだけの段階を終え、業務の一部を自動で実行する自律型AIエージェントへと進化しつつある。デモでは、多言語の壁を取り除く「Interpreterエージェント」と、会議の調整から進行、フォローアップまで担う「Facilitatorエージェント」が披露された。

水本氏が強調したのは、AIの精度を支える土台がデバイス性能にあるという点だ。「音声分離も発言者特定も、デバイスの性能が高いほど識別の精度が上がる」。Reisinger氏も同じ方向の発言を残している。「AIが機能するためには耳と目が必要だ。カメラは人間の目、マイクロフォンは人間の耳に当たる」。

新製品が組み合わせるAI機能搭載マルチカメラ「Huddly」シリーズは、6K解像度・画角92度を備え、顔の62箇所を認識して3箇所をスコアリングし、最もスコアの高い人物を映像として選び取る。AIエージェントが当然のように会議に加わる時代に向けて、ハードの精度はそのまま会議体験の質に直結する。

Reisinger氏は2026年第4四半期に一体型ディスプレイ製品「PanaCast Board」を投入する計画も明かした。Jabraは新橋オフィスに大会議室を想定したデモルームを新設し、新製品を体験できるよう開放している。安藤社長は「ぜひ皆さんの会議室で使ってほしい」と呼びかけた。AIが会議の輪に加わる風景を、同社は段階的に形にしていく。

編集部: