市役所の屋根では作れない再エネを、どう調達するか。堺市が出した答えは、民間施設を活用することだった。
多くの自治体では、太陽光パネルの設置場所が確保できないという課題を抱えている。その理由は、施設の老朽化や建物の構造上の制約など、さまざまである。 堺市においても同様に、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーをいかに増やすかが検討課題となっていた。そこで同市は、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ(東京都港区、代表取締役社長・秋田智一)と連携し、再エネ導入を進めたくても進められないという自治体共通の壁に、「堺モデル」として課題解決に挑んだ。 同社は2月26日、この堺市との取り組みについて発表した。すでに2月1日からは、堺市役所本庁舎への再生可能エネルギー供給が本格稼働している。

アイ・グリッドの屋根を最大活用する仕組み
鍵になるのは、余剰電力という考え方だ。太陽光パネルを施設の自家消費分に合わせて設置するのではなく、屋根の全面積に置く。すると、施設内で使い切れない電力が生まれる。秋田社長は発表会で「新たな土地造成を一切必要とせず、屋根を有効に活用するだけで大きなポテンシャルが生まれる」と説明した。同社がすでに全国46都府県に開発した約1,300か所の屋根上太陽光発電所では、76MW分の余剰電力が生まれているという。
堺モデルでは、市内11社・15施設に太陽光設備を導入し、各施設の余剰電力をAIで集約・制御して市庁舎に供給する。年間の総発電量は550万kWh、CO2削減量は年間約2,600tを見込む。執行役員・岩崎哲氏は「IoTとAIで各施設の発電状況と電力使用量をリアルタイムに把握しながら、余剰を予測して循環させていく」と語った。

「フィジカルに紐付いた」再エネ
発表後の質疑で際立ったのが、環境価値の扱いについてだった。再エネ由来の電力では、電気としての価値と環境価値(カーボンクレジット)が切り離されて流通するケースが多い。
一般的なカーボンクレジットは、石炭等の火力発電由来の電力に対して、非化石証書(クレジット)を後から紐づけてCO2フリーとみなしている。一方で、今回の「堺モデル」では、実際に市内で発電した余剰電力を電気的価値ごとリアルタイムで供給している。

小さな地域GXの成功例を全国に広げる
余剰電力が市役所で使い切れない場合は、堺市内に融通する。市役所以外への活用も堺市と協議中だ。他自治体への展開については、複数の自治体と協議や意見交換などを行っている。
同社はこの取り組みを「GX City構想」の実装モデルと位置づける。分散型再エネの地産地消を起点に、脱炭素化だけでなくエネルギー安全保障の強化や地域経済の活性化につなげていく構想だ。屋根の上に眠っていた余剰電力が、都市の脱炭素インフラになる。その取り組みが、堺から動き出した。


