同じ卵なのに値段が違う? ネットスーパーがAIを使って「人によって価格を変えている」実態が判明

「ネットスーパーで買い物をしていたら、友人よりも高い値段が表示されていた」――もしそんなことが起きたら、あなたは気づけるでしょうか?

便利さの裏で、私たちの足元を見るような「AIによる価格操作」が行われている可能性を、米国の消費者団体「コンシューマー・レポート」などの調査が暴き出しました。

米国の大手ネットスーパー「インスタカート(Instacart)」が、AI技術を用いて、同じ店舗の同じ商品であるにもかかわらず、ユーザーによって最大20%も異なる価格を表示していたことが判明したのです。

AIがあなたの「懐事情」を見透かしている?

この調査は、コストコやターゲットといった有名スーパーの商品を対象に、437人のボランティアが同時に同じ商品を検索するという形で行われました。

その結果、衝撃的な事実が明らかになりました。

人によって価格がバラバラ

例えば、あるスーパーの「卵1パック」の価格が、人によって3.99ドルだったり、4.79ドルだったりと、4通りの異なる価格で表示されていました。コーンフレークに至っては、最安値と最高値で23%もの差がありました。

「安くしないと買わない人」を見極める: これは、需給によって価格が変わる「ダイナミックプライシング(変動料金制)」とは異なります。AIがユーザーの行動を分析し、「この人はいくらまでなら払うか(価格感度)」を見極め、「高くても買う人」には高い値段を提示するという、個別の価格設定実験が行われていたのです。

年間18万円の損? 知らぬ間に実験台にされる消費者

調査レポートは、インスタカートを利用するすべての消費者が「知らぬ間にAIを使った広範な価格実験の一部にされている」と警告しています。

もしAIによって常に高い価格を提示され続けた場合、消費者の負担は年間で約1,200ドル(約18万円)も増える可能性があると試算されています。

調査団体は、「価格が透明でなければ比較検討もできず、予測できなければ家計の予算も立てられない」と、こうした企業の慣行を強く批判しています。

企業側の言い分:「リアル店舗でもやっていること」
この指摘に対し、インスタカート側は「小売店が実店舗で消費者の好みを理解するために価格テストを行うのと同じように、一部の小売パートナーがオンラインでも同様のことを行っている」と説明。

「限定的かつ短期間のランダムなテスト」であり、どの商品を安く提供すべきかを判断するためのものだと主張しています。

まとめ:ネット通販の「定価」はもう信じられない?
日本でもネットスーパーや通販サイトの利用は日常化していますが、画面に表示されている「価格」が、実は「あなた専用の特別価格(悪い意味で)」かもしれないという疑念は、消費者の信頼を根底から揺るがすものです。

AIが私たちの購買行動を丸裸にし、「足元を見る」ために使われる未来。そんなディストピアじみた商習慣が、便利さの裏側で静かに広がろうとしています。

編集部: