「Z世代」のニュース信頼度、大手メディアとSNSが“ほぼ同格”に。米調査が示す深刻な「メディア不信」の実態

かつて「信頼できる情報源」の代名詞であったはずの「大手報道機関(全国ニュース)」。しかし、その権威は今、足元から崩れ去ろうとしているのかもしれません。

アメリカの権威ある調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が発表した最新の世論調査で、特に30歳未満の若者層(Z世代)にとって、全国ニュースから得る情報の信頼度(51%)が、「SNS」から得る情報の信頼度(50%)と、ほぼ変わらないレベルにまで落ち込んでいるという、衝撃的な事実が明らかになりました。

これは、社会の分断や「フェイクニュース」問題に揺れる現代において、深刻な「メディア不信」が、政党や年齢の垣根を超えて進行していることを示しています。

全世代・全政党で進む「ニュース離れ」

今回の調査で明らかになったのは、2025年3月の一時的な信頼回復が終わり、再びアメリカ社会全体でニュースへの信頼が低下しているという厳しい現実です。

全国ニュースへの信頼が激減: 全国ニュースの情報を「信頼できる」とするアメリカ成人は、全体で56%に留まりました。これは2016年(82%)から20ポイント以上も激減しており、低下傾向に歯止めがかかっていません。

「地元のニュース」も例外ではない: 「地元のニュース(地方局)」は、全国ニュースよりは高い信頼(70%)を維持していますが、こちらも2016年の82%からは大きく数字を落としています。

政治的な「分断」がそのまま「信頼の分断」に

この「メディア不信」は、アメリカ社会の政治的な「分断」と強く連動しています。

共和党支持者(保守派): 全国ニュースを信頼しているのは、わずか44%。もともと低い水準でしたが、さらに低下しています。

民主党支持者(リベラル派): 伝統的にメディアを信頼してきた民主党支持者でさえ、全国ニュースへの信頼は69%と、調査開始以来、過去最低のレベルにまで落ち込みました。

皮肉なことに、信頼度が低いとされる「SNSの情報を信頼する」と答えた割合は、共和党も民主党も、奇しくも全く同じ37%でした。

最大の懸念―若者にとって「大手メディア」は特別な存在ではない

この調査で最も深刻なのは、若者世代の「メディア不信」です。

50歳以上の人々がまだ全国ニュース(52%)をSNSよりも信頼しているのに対し、30歳未満の若者は、前述の通り、全国ニュース(51%)とSNS(50%)を、情報源として「ほぼ同格」と見なしています。

この傾向は、メディアを信頼する傾向が強い民主党支持者の間でも同様です。65歳以上の民主党支持者の79%が全国ニュースを信頼するのに対し、30歳未満の民主党支持者では、その割合は61%にまで低下します。

この調査は、アメリカ社会がいかに深刻な「メディア不信」の渦中にあるかを浮き彫りにしました。特に、社会の未来を担う「Z世代」が、従来の権威あるメディアと、玉石混交のSNSを同じ天秤にかけているという現実は、「フェイクニュース」対策が叫ばれる日本にとっても、決して他人事ではありません。

「信頼できる情報」とは何か、その定義自体が、今まさに社会全体で揺らいでいるのです。

編集部: