中国のある動物園が、展示していた「パンダ」が実は「染められた犬」だったことを認め、SNS上で「Temu版パンダ」と揶揄され炎上しています。中国では、国宝であるパンダは約200ヶ所ある動物園のうち約50ヶ所でしか飼育されておらず、その希少性からパンダ人気は非常に高いです。しかし、今回のような事例は初めてではなく、過去にも同様の「パンダ犬」騒動が報じられています。なぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか?その背景には、中国におけるパンダを取り巻く特殊な事情があるようです。
パンダが吠えた→「ワンワン!」
山威動物園を訪れた来園者は、展示されていた「パンダ」が息を切らしたり吠えたりする様子を見て、違和感を覚えました。SNSで拡散された動画には、長い尻尾を持つ「パンダ」が映っており、「これはパンダ犬だ!」「Temu(中国の通販サイト)版のパンダだ」といったコメントが殺到しました。
動物園側は、2匹のチャウチャウ(中国北部原産のふわふわした犬種)に白黒のパンダ模様を塗ったことを認め、来園者から返金要求を受けています。
パンダ犬が生まれる背景
中国では、パンダは国宝として大切に保護されており、その飼育には高い技術と費用が必要です。そのため、パンダを飼育できる動物園は限られています。しかし、パンダ人気は非常に高く、動物園にとってパンダは集客の目玉となります。
このような状況下で、一部の動物園は、来園者数を増やすために、犬をパンダに偽装するという手段に訴えることがあります。今回のような事例は過去にもあり、今年5月には江蘇省の泰州動物園でも同様の行為が報じられ、2019年には四川省南西部の犬カフェが6匹のチャウチャウをパンダのように染めたこともありました。さらに、2020年には同じ省の女性が「パンダ犬」を散歩させている動画が話題になったこともあります。
中国では、パンダは単なる動物ではなく、国家の象徴であり、外交の道具としても利用されています。「パンダ外交」と呼ばれるように、友好国へのパンダの貸し出しは、国際関係の強化に役立ってきました。
しかし、その一方で、パンダは商業的な価値も非常に高く、動物園や関連ビジネスにとって大きな利益をもたらす存在でもあります。そのため、パンダを巡る倫理的な問題や、動物福祉への配慮が欠けているという批判も根強くあります。
ニューヨーク・ポストなど、多数の海外メディアが好奇の目で報じている。
動物虐待との批判も
今回の山威動物園のパンダ犬の問題では、国営メディアや一般市民は、動物園が犬を虐待しているとして批判しました。ツイッターに相当する中国のソーシャルメディアプラットフォームWeiboでも「チャウチャウの繊細な肌と生まれつき厚い毛皮により、チャウチャウは皮膚病にかかりやすい。それであのような行為を行うのは虐待である」と投稿されました。しかし、当局は犬を染めるという選択を擁護し、染料によって犬に害は及んでいないと指摘し、人間ができるなら犬にもできると主張しました。
今回の「パンダ犬」騒動は、中国におけるパンダを取り巻く複雑な状況を浮き彫りにしています。パンダへの過剰な商業主義や、動物福祉への意識の低さが、このような問題を引き起こしていると言えるでしょう。
中国では、動物愛護法の整備が進められていますが、まだまだ課題は山積しています。真のパンダ保護と、動物福祉の向上のためには、社会全体の意識改革が必要とされています。