個人的な嗜好を強く持つアーティストと映像作家が出会った
2021年9月16日、都下・多摩地区のとある川沿いである曲のMV撮影が行われた。活動歴10年を超えるシンガーソングライター・AKRM(仮)のワールドワイドデビュー曲[Dead In A Hundred Years]だ。
演出は、気鋭の映像作家・植野有子氏。プロデュースは、有名企業のCM・メジャーアーティストのMV等を多数手掛ける映像制作プロダクション (株)TYOの藤原拓海氏が務める。
「2020年に発売されたアルバムをSNSで拝見しまして、そのアルバムが内容もジャケットもとても素敵でしたので、是非一度、仕事でご一緒してみたいと思いご連絡しました。彼女の個性として、個人的な嗜好を強くお持ちだと感じましたので、同じく“個人的な嗜好”を強く持つ方と思い、植野監督に演出をお願いしました」(藤原氏)
日本国内では、トイ・ハンマーを手に男に翻弄される女心を歌う軽妙なテクノ・ポップ「Whac-A-Mole Song」が人気のAKRM(仮)。だが、なぜ、いま世界デビューなのか。
「もともと2020年に参加を予定していた、フランスで開催されるJAPAN EXPO用にフランス語曲の配信を企画していました。しかしコロナ禍でJAPAN EXPOが延期に。そんな中、ソロ用とは別に作っていたこの曲が、思いがけず今を生きる全人類への普遍的なテーマになっていることに気が付き、英語でリリースすることにしたのです」(スタッフ)
曲のきっかけは日本の有名映画『男はつらいよ』の名セリフから
[Dead In A Hundred Years]に込めた思いをAKRM(仮)に聞いた。
「2021年の初めに作ったのかな。気分転換に日本の映画を見たんだけど、『男はつらいよ』って知ってる? 有名なシーンでね、主人公の寅さんって人が『人はなぜ生きるのか』と問われて、『“あぁ、生まれてきて良かったな” って思う事が何べんかあるじゃない。そのために生きてんじゃねえか?』って言うの。それを聞いてね、スラスラッとこの曲が出来ちゃったのよ! この曲が、勇気を出して前に進むためのきっかけとなるような存在になってほしい。同時にもう1曲制作していたんだけど、曲中でも言っているとおり『いつかやろうと思っていたら死んでた』ってことにならないように、一番最初に出すことにしたの」
「熱量」を目撃して欲しい
植野監督にはどんな映像プランが思い浮かんだのか。
「この曲は死によって生を歌いますが、悲観的になることもなく、高ぶることもなく、あくまで坦々と、日常のリズムを刻みます。私は、とにかくラフを描いて、自分自身がグッとくる絵を探りました。そこから、コンセプトを『流れる』としました。川の流れは、人生(=時の流れ)とリンクしています。このMVは、“主人公の女性が、川を遡り、思いもよらぬ所で二度と会えない人に会い、そして帰ってくる話”です。私が子どもの頃、あたらしい世界を見せてくれた作家たちや、多くの時間を過ごした海、また会えると信じていた人に向けて作りました。観る人にはそこが伝わらなくても、ハッとする瞬間があったり、なんだかわけがわからなかったとしても『ものすごい熱量のものを目撃した』という感覚になってもらえれば良いなと思っています」
絵コンテを見たAKRM(仮)の感想は。
「川を進んでいく美しい絵コンテから植野さんの熱い想いを感じて、そしてまた『男はつらいよ』のことが浮かんだの。寅さんがオーストリアのドナウ川を眺めて[大利根月夜]なんか歌っちゃうんだけど、そこで『どこの川の流れも同じだなぁ。流れ流れて、どこかの海に注ぐんだろう?』って言うの。このMVも、きっと世界中の人の心を動かすものになるんだと確信したわ」
台風14号の影響から荒天が心配された9月16日当日、果たして撮影は無事に進んだのか。その模様は次回(11月20日頃)お届けする。
[参考]
植野有子監督オフィシャルサイト https://uenodir.wixsite.com/official
株式会社TYO https://tyo.co.jp