一色萌のアイドル、色々。第 30回 「アイドルと”意味”」

こんにちは。プログレアイドル・XOXO EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

この連載今回でも30回目となりました。
当初は「○○回まで続けよう!」などとは特に決めずに始めたものですが、こうしてある程度続くと過去の記事を読み返して、なんだか懐かしいような、感慨深いような気持ちになります。

更新日近くに忙しくなってしまったり、体調を崩してしまったり、色々とご迷惑をおかけしながらなんとか続けさせていただいているような状況で、ほとんど毎回申し訳ない気持ちと共に原稿を送信しているのですが、「更新楽しみにしているね」の言葉に支えられて毎月文字を綴っています。
なるべく第一回の時に感じていたワクワクモヤモヤとした気持ちのまま、続けて行きたいものです。

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「アイドル活動をする意味」について考えることがあります。

多くの場合、アイドル志望の子は夢や希望を胸にこの業界へやって来て、アイドルになってからも「たくさんの人に元気を与えられる存在になりたい」とか、「人気者になってテレビに出たい」とか、何らかの目標に向かって上を目指していくという大筋の上でそれぞれのストーリーが紡ぎ出されていきます。

思えば、私がアイドルライブに通い始めた2012〜2014年頃はたくさんのアイドルさんが「日本武道館でワンマンライブをすること」を目標にしのぎを削っていました。
大きな目標を達成するために各グループ・各個人が惜しみなく努力してそれぞれの魅力を獲得していく過程は一瞬でも目を離したらいけないと思わせる凄みがあって、その動向をハラハラドキドキしながら懸命に追ったものです。

そんなタイミングでライブアイドルの世界を知った私は、「何かを成し遂げるために頑張っているアイドルたち」による多種多様な成長物語を、当たり前のものとして楽しみ、一ファンとして魅了されてきました。

そして時は流れ、私自身もアイドルとして活動をするようになります。
かつて見たアイドルさんたちの姿を思い浮かべながら、私の目指しているものは何だろう?アイドルとして達成したい目標は何だろう?と自問自答した時、「特に何も思い浮かばない」自分に気が付きました。

「この歌のこの部分をもっと上手に歌いたい」とか、「いつかこのイベントに出られたらいいな」というような、個人的で細かい目標はあるといえばあるのですが、「最終的にこうなることが目標!」「これを達成するためにアイドル活動を頑張るぞ!」みたいな、アイドルとして活動していく上での指標にできるような具体的なビジョンが、どうもうまくイメージできないのです。

アイドルとは「何かを成し遂げるために頑張っている」人のものではなかったのでしょうか。
目標がないなら、何を原動力として、何のために私はこの活動をしているのでしょう。

自分のことなのに分からなくて、とても混乱しました。
また、やる気だけは一定以上の水準でずっと保たれ続けているのも不思議でした。

もともと私は言動一つ一つ全てに意味や理由を求めてしまうタイプで、無理にでもそれらを見出せないと行動することができない性格です。
しかしアイドル活動に関しては、意味や理由をこじつけなくても自然と続けることができています。

現状として不満なく活動できているのなら、わざわざこんなことを深く考える必要はないのかもしれません。それでも。

意味や理由がなくても、ここにいていいのだろうか−−−−?

そんな気持ちが、ふと頭をよぎる瞬間があります。
だから私は私に納得してもらうため、私なりの「アイドル活動をする意味」を探してみることにしました。

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当たり前のように目標や将来についての話題が出る環境で、明確な答えを持ち合わせていないために回答に困ってしまうアイドルさんは、結構多いのでは?と思っています。

新型コロナ禍においてライブ活動が思うようにできなくなり、ファンの方との交流が減り、閉塞的な空気の中で時間だけは膨大にあって、自分の存在意義について考え悩むアイドルさんの姿をS N Sで見かけることが増えました。
自粛ムードの濃かった期間には特に多かったように思います。

これは私の所感ですが、この半年ほどで卒業・脱退していったアイドルさんの“辞める理由”もメンタルの不調に関連するものがこれまでに比べて目立っているような気がしました。

目標や今やるべきことが明確に見えていて、かつ気力と体力のある人たちが次々と新しいアクションを起こしていくのをただ見ていることしかできないもどかしさと無力感は、表現活動をする人間としてはかなりキツイものです。

「目標を達成したから」「やりきったから」というポジティブな理由で晴れやかに卒業していく人がいる一方で、「存在意義が分からなくなってしまった」「目標を見失ってしまった」といった悩みをきっかけとして、志半ばにアイドル活動を辞めてしまった子もいるのだと考えると無念でなりません。

そしてそういった脱退理由を見かけるたび、「最初から存在意義も明確な目標も見つからないまま、それでもやる気満々で楽しくアイドル活動をしている私って一体……」という気持ちになりました。

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思えば、私が最後に自分で自分に大きめの“目標”を課したのは、「アイドルになること」だったような気がします。

キスエクのオーディションに合格したという連絡を受けた時、私の脳裏に浮かんだ言葉は

「やっと終わった……?」

でした。
これから始まるアイドル活動への期待や不安も大きなものでしたが、一時的だとしても、それを達成感が上回ってしまったのです。

自分はアイドルにはなれないのだと悟り、歌手希望で初めてオーディションを受けた中学2年生の春休みからずいぶん時が経ち、当初の志望動機などとうに忘れて「アイドルになること」を目標としてオーディションを受ける日々を送っていました。
いつの間にか落ちたオーディションの数は50を超えていて、合格したことを素直に喜ぶには、オーディション受験者としての場数を踏みすぎていました。

私の最も大きな目標は、アイドルになれた時点で達成されてしまっていたのです。
そしてその目標は達成されたと同時に、「アイドルとして、誰よりも近い場所でアイドルを見続けたい」という好奇心に形を変えました。

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ある時、私のことを「ゴールから始まったアイドル」だと表現した方がいました。
その言葉を目にした時、ずっと分からなかった自分のことが少し分かったような気がしました。

最初からゴールにいた私にとってそこから先に起こる出来事は、言うなれば全てがストレッチゴールだったのです。
アイドルなってから起こった全てが想定外の出来事で、全てが夢にも思っていなかった夢のようなことの連続でした。

だから何が起こっても全てが面白いし、やればやるほど続きが気になって、「アイドルをもっと知りたい」という欲望が湧き出てくるのだと思います。
目標は達成したらそこで完結してしまうけれど、欲望には際限がありません。
だから私はアイドルを続けることができているのでしょう。

私がアイドルでいる一番の理由は「たくさんの人を笑顔にするため」でも「大きな舞台に立つため」でもなくて、あくまで自分の好奇心のためです。
でも、アイドルが好きで歌うことが好きな、そんな私を見て楽しんでくれる人がいるのならその人達もまた、私の“理由”の一つとなります。

そしてきっとその“理由”の積み重ねが、私のアイドルである“意味”なのだと思います。

【プロフィール】 一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと

WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

https://twitter.com/hiiro_moe

https://twitter.com/xoxo_extreme

https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA

【活動情報】

11/3発売
一色萌(ひいろもえ)
デビュー7インチ・シングルレコード
「Hammer & Bikkle / TAXI」

XOXO EXTREMEの一色萌が遂にソロデビュー!20年代のパブロック/パワーポップ/モダンポップを追求するNEWアイドルの誕生!佐藤優介Proによる「Hammer & Bikkle」とデフ・スクールの名曲「TAXI」を日本語詞でカバー。何と本家デフ・スクールがバックトラックを新録した奇跡の日英コラボによる7㌅シングル

価格:1,500円+税
レーベル:なりすレコード
品番:NRSP-789

11月27日 (金) XOXO EXTREME 3rd ワンマンライブ ~Re:UNION~@渋谷クラブクアトロ

タイプの違う2バンドを擁しての3rdワンマンライブ!!!

18:00 OPEN/19:00 START 

来場4,000円(+1D)
配信2,000円
Tシャツ付配信4,500円(サイズ S,M,L,XL)
※配信視聴可能期間:11月27日(金) 19:00 〜 11月30(月) 23:59迄
※Tシャツ付は11月12日(木)23:59迄

詳細はこちら!
https://upluslive.udo.jp/schedule/20201127.html

Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】

XOXO EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)

一色 萌・小嶋 りん・浅水るりの3名からなる、プログレッシヴ・ロック(略:プログレ)※をモチーフとした楽曲をパフォーマンスしているアイドル。
※特徴として、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子が多い、といった点が挙げられる。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2019年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
翌2019年には、日本のプログレバンドの雄、金属恵比須とのコラボレーションで、90年代プログレを代表するスウェーデンのバンド、ANEKDOTENの「Nucleus」を公認カヴァー。

同年7月25日には2バンドを擁してのセカンドワンマンライヴを渋谷WWWにて行った。

都内を中心にライヴ活動を行なっており、プログレッシヴ・ロックを知っている人も知らない人も楽しめる、と好評を得ている。

編集部: