「ウィズペット」は飼い主とペットが一緒に入ることができる墓。仏事関連総合サービス「メモリアルアートの大野屋」(東京都新宿区)が2003年に販売するやいなや大きな反響を呼んでいる。
少子高齢化や未婚者の増加といった状況から、15歳未満の子供の人口よりも犬や猫の飼育数の方が上回っている。そんな中、ペットは子供の代わりなど、家族の一員として扱われるようになってきた。そのため屋内で大事に飼われ、医療ケアも行われることから長寿化。人生をともに過ごす時間が長くなったことで、ペットはただの動物ではなく家族へと変わっていった。
そしてペットや自分が死んだ後も一緒にいたい、そんな声が増えてきたことから「ウィズペット」が生まれたという。
なぜペットと一緒に墓に入れないのか
そもそもペットと人は同じ墓に入ることはできないのだろうか。ペットの死骸や遺骨は廃棄物処理法上「一般ごみ」に該当するため、人間とは異なって埋葬許可は不要。だが勝手にして良いかというと、慣習的にはNGだ。
仏教用語に動物を「畜生」という言葉があるように(仏教の思想での六道での畜生道など)、仏教において、動物は人間に劣るものだと考えられてきたと言えるだろう。そんな文化・歴史的背景もあり、多くの寺社においては、人間と同じ墓に入れて供養することはできなかった。(一部の宗派や、住職がペット好きなどの場合には例外もあるという)
そのため、自宅の庭や野山、ペット専用霊園などに埋葬・供養する人が多かった。だが、専用の霊園とはいえ人間とは別となってしまうため、あくまで「一緒に眠れる場所」が求められるようになったのだ。
死後、人間ならまだ縁者に墓参りに来てもらうこともできるだろうが、ペットとなれば、あっという間に無縁墓になってしまうことは想像にかたくない。そのため、ペットと一緒の墓に入りたいという気持ちはよくわかる。
大野屋のウィズペットは2003年に東京都町田市の「町田いずみ浄苑」で始まったが、現在は計10カ所の霊園まで拡大し、今後も順次拡大していくという。すでに半数以上が売れており、中には完売する霊園もあるほどだ。
また、墓石の価格は通常のお墓と変わらないコスト感や、自治体の許認可を受けた人の霊園の中に設けられている安心感が、その人気を支えている部分もあるだろう。そしてペットの遺骨だけ先に埋葬することもでき、すでにある墓からの改葬も可能だという。
弔うことでペットロスを軽減
2月12日に都内で開かれた「ウィズペット」説明会には、『老犬との幸せな暮らし方』等の著書がある、獣医師の石井万寿美氏が登壇。石井医師によれば、ペットロスを癒やすには、喪の儀式が効果があるとコメント(喪の儀式とは、お通夜、葬式、初七日といった葬祭にまつわる行為を言う)。石井医師が看取ったペットと、その家族の供養の様子などが示された。
また説明会では、遺骨や毛を収納できるペンダントやブレスレット、「Soul Jewelry」などの商品「ソウルシリーズ」も。故人を偲ぶために生まれた商品だが、ペットの飼い主にも人気だというこういった商品展開は、ペットがいかに大事な家族になったのかを示すものでもあるし、一方でこういったもので自分を癒そうとする、ペットを亡くした人たちの気持ちの現われでもあるだろう。
愛するものを喪失するという辛い体験の中で、ウィズペットのようなお墓いつか再び一緒にいられるようになる、そんな想いをいだければ、たしかに飼い主にとってはいくばくかの癒やしと救いになりそうだ。