こんにちは。プログレアイドル・xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。
世間は夏休み・お盆休み真っ只中ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
この時期にワイドショーやツイッターを見ていると「電車がガラガラ!」「高速道路が渋滞!」「プールが満員!」と、”いかにも夏休みっぽい”光景が流れてきます。
しかし、どの画もあまり身近に感じられず、なんだか別世界の景色のようです。
思えば「お盆の連休」と呼ばれる期間(2019年は8月10〜18日がそれにあたるみたいです)にも、ライブハウスではいつも通りアイドルイベントがばんばん開催されているわけで、そもそもアイドルとそのファンには「連休」という概念自体が希薄というか、休みこそライブを心ゆくまで楽しめるチャンス!と考えると、もはや日常の一部となっている“ライブ”の濃度がむしろ上がる期間なわけです。
この時期にアイドル現場に流れている空気は、いつか誰もが“夏休み”という言葉に想起したゆったりと流れる非日常の感覚よりも、もっと濃くてスピード感のある“日常”の感覚が近いのかもしれません。
別世界も何も私がどっぷりと身を浸している世界はきっと、テレビの中ではしゃいでいる子どもたちとは本当にまるっきり別世界なのでした。
そしてその世界こそ、私が自ら選びとった最も生きやすい世界であるのです。
しかしそんな私も、実はこれから一旦愛すべき世界を出て群馬へ帰省をします。
ご先祖様へご挨拶に行くこと自体はやぶさかではないものの、親戚の集まりで「ところで萌ちゃんはいま何をしているの?」と質問責めにあうことを想像すると、きゅーっと頭が痛くなってきます。
深海魚が急に引き揚げられたら死んでしまうのと同じ理屈で、世界の境界線を越える時はいつだってそれなりの圧力がかかるものです。
同志の皆さんもどうかご無事で。そういえばお正月もこんな感じだった気がするな……。
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さて、話題を変えましょう。夏といえば。
昨年の今頃、私はこの連載で『TOKYO IDOL FESTIVAL 2018』に参加した際のレポートを公開しました(一色萌のアイドル、色々。第4回「アイドルと私の夏」)。
アイドルになる前もなってからも、私の夏の数少ない楽しみとして重要な位置付けのイベントです。
ありがたいことにキスエクもライブのお仕事をたくさんいただき、TOKYO IDOL FESTIVAL(以下・TIF)の開催期間にも別現場でのお仕事がありました。
タイムスケジュール的に昨年や一昨年のようにお台場と都心を行ったり来たりすることはできなかったのですが、最終日だけは足を運ぶことができました。
今年のTIFのラインナップをざっと見渡してまず思ったのは、昨年の解散・脱退ラッシュのあおりをかなり受けているな、ということでした。
これまでメイン級のステージに名前を連ねていたアイドルさんがごっそりと抜け、昨年まで小〜中規模のステージに出演していたアイドルさんのお名前が大きなステージのラインナップに多く見られました。
また、初出演やデビューから日の浅いアイドルさんの出演も多く、アイドル同士の間に明確な線引はなくても”世代交代”という言葉を連想しました。
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TIFではたくさんのアイドルのライブを一度に見ることができるというだけでなく、コラボレーションやスペシャルユニット、腕相撲やプロレスなどの催し物など、この日限りの特別なステージがいくつか用意されています。
私が足を運んだ最終日、まる1日たくさんのステージを見て特に印象に残ったのは、やはり昨年に引き続きSKY STAGEでの光景です。
イベント最終日、今年のSKY STAGEのラストを飾ったのは、sora tob sakanaさん、amiinAさん、そしてsora tob sakanaさんとamiinAさんのコラボステージでした。
楽曲やメンバーさんの作りだす世界観など様々な面で親和性が高く、お互いの主催に呼び合う仲の二組。
タイムテーブル発表時から注目がされていただけあって、当日は多くの人々がステージ前に集まっていました。
すっかり日が落ち、闇に包まれたステージ。
SEで先に登場したのはamiinAの二人。特徴であるコンテンポラリーダンスのような振り付けで、一気に会場の空気をステージのペースに持っていきます。
続いて登場したsora tob sakanaの3人を見た時、5人が揃いの衣装であることに気がつきました。夕闇に映える、真っ白のワンピースでした。
数分前までほの明るかった、生まれたての夜空の下でのsora tob sakanaさんの楽曲「夜空を全部」はあまりにも儚くて美しい時間でした。
そして続いて披露されたamiinAさんの代表曲「Canvas」。
指を空に突き出し全員で大きく飛び跳ねるサビでは、空とステージとその場の人々すべてが一体になっていく感覚がして、野外ライブの醍醐味を感じました。
大きく曲のアレンジがされているわけでなく、お互いの個性を主張し合うわけでもない。
二組が完全に一体化して、それぞれの曲の世界を作りあげる。
どこまでもシンプルにまっすぐに、だけど完璧に披露された二曲を通して、二組の絆の強さとアイドルとしての強度を感じました。
「絶対にいいステージになるに違いない」と誰もがきっと思っていて、期待いっぱいのまなざしの前でなお、期待を越えるステージを披露した5人のステージはトリを飾るにふさわしく、本当に素晴らしいものでした。
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私は折に触れて、「キスエクで夏のアイドルフェスに出演したい」と発言してきました。
それは私の個人的な憧れの気持ちももちろんありますが、アイドルとして当然意識をするべきイベントであると思ったから、また、「大型アイドルフェスに出演したことがある」ことをアイドルを見る際の一定の判断基準としている人たちがいることを知っているから、という事情もあります。
数多のアイドルおよびアイドルイベントが存在するいま、そうやってふるいにかけられてしまうのは寂しいけれど仕方のないことだとも承知しています。
大きいイベントに出ていなくても、素晴らしいアイドルグループがたくさんいることを私は知っています。
そういったイベントに出ないからといってそのアイドルは売れることができないということもありません。
ここ1~2年で少しずつ、でも着実に、アイドルシーンは縮小しています。
ならば良きタイミングでアイドルのシーンから抜け出て、別の場所で勝負をするというのも選択肢の一つです。
アイドルと名乗るのをやめてアーティスト転向する元アイドルさんや、アイドルと言いつつも本格的な音楽性を突き詰めていくタイプのアイドルも、だんだん珍しい存在ではなくなりました。
私の属するキスエクは、おそらく後者にあたります。
アイドルだけど、本格的なプログレをやる。
初めての方には驚きを感想として伝えていただくことが多いですが、その内訳はプログレッシヴ・ロックというジャンルの珍しさに対しての驚きが大半で、アイドルであるということに対しての驚きはアイドルファンであればあるほど薄いように感じています。
それは今までにたくさんのアイドルさんが音楽的な実験と挑戦を繰り返して作ってきた土壌の上に私たちが立っているからで、そうであるならばプログレアイドルがアイドルフェスに出ることはアイドルとしての命題であるようにも感じられました。
しかし、9月にリーダーでありアイドル性の部分を大きく担ってくれていたメンバー・楠芽瑠の卒業を控えて改めて考えたとき。
今年の夏、出演することができなかったらもうアイドルフェスにこだわるのはやめようかな、もういいかな、という気分になっていました。
プログレアイドルであるキスエクが、デビューしてから約3年のうちにアイドルの土壌に浸透することが叶わなかった、悔しいけれどそれを受け入れて、アイドルとしてもプログレッシヴ・ロックの楽曲を歌うグループとしても切り替えた方がいいのかな、と思っていました。
でも、昨年も心を動かされたSKY STAGE。
今年もその場所でそこに立つアイドルさんの音楽を、ダンスを、表情を見て改めて、あぁやっぱり立ちたいなぁ、と思ってしまいました。
東京オリンピック開催予定の来年、2020年の夏。
まだ公式発表はありませんが、夏のアイドルフェスは開催自体を不安視されています。
今年のTIFでも、その事情を慮ってか多くのアイドルさんが「また来年!」と口々に言っているのを耳にしました。
たくさんの夢をのせた舞台たちが、どういった形であれ途切れることなく続いていくことを心から願っています。
【プロフィール】
一色 萌(ひいろ もえ)
ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと
WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)
調布FM「キスエクのラジオ、キク!?」毎週月曜日19:00〜 レギュラー出演中
https://twitter.com/xoxo_extreme
https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA
Email : contact@twelve-notes.com
【グループプロフィール】
xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)
楠 芽瑠・一色 萌・小嶋 りんの3名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。プログレとは、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等が特徴の楽曲です。
2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。
ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。
2018年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
同年2月4日に記念すべき初のワンマンライヴを鹿鳴館にて開催。プログレッシヴロックを知っている人も知らない人も楽しめるLIVEと評判。