今もっとも勢いがある温泉地と言われているのが、群馬県渋川市の伊香保温泉だ。今年からは登山をテーマにしたテレビアニメ「ヤマノススメ サードシーズン」とのタイアップや、ハワイ王国公使別邸があることから伊香保ハワイアンフェスティバル2019が開催されるなど話題にことかかない。
様々なイベントだけではなく、都内から2時間程度のアクセスで、自然の中で温泉を楽しめることもあり観光客から再び注目される温泉となっているのだ。また電車などで訪れる観光客にむけて、有料の手荷物配送「手ぶら観光サービス」がはじまるなど、温泉地としての利便性がさらに高まっている。
そんな今“熱い”伊香保温泉を実地レポート!
5月下旬、全国各地が猛暑に襲われるなか、避暑地の伊香保は新緑を通してくる風が気持ちいい。そんな爽やかな空気を楽しみながら、カップル、家族、社員旅行などの観光客が楽しそうに街を闊歩していた。
今回宿泊し、たっぷりと温泉を楽しんだのは伊香保一の人気を誇るホテル天坊。
天坊は伊香保温泉を代表するホテル・旅館のひとつで、昭和42年からの歴史をほこる老舗。観光客ではなく地元の名士などにも頻繁に使われる名門として知られている。
ユニバーサルデザインの機能を取り入れたリノベーションを実施し、高齢者や障がい者の方が利用しやすいバリアフリーを積極的に導入、車椅子の貸し出し台数も年々増やしている(バリアフリーの部屋をご利用になりたい際は天坊を予約の際にご確認を)。
また天坊では畳の宴会中心の食事スタイルを改め、地元の食材をふんだんにとりいれながら、個室でのおもてなしスタイルからオープンキッチンの食座、メニュー豊富なバイキングなど多様な食事方法を導入している。
温泉地の中心街の喧騒から少しだけ離れた静かな場所に宿はあり、観光客のざわめきや酔客の喧騒に悩まされることない。天坊は伊香保において温泉数と部屋数がもっとも多い宿であり、ロビー、廊下、客室、温泉とすべてがゆったりとした広く静かな空間となっている。そのため小さい子供がいるご家族でも、気兼ねなく宿泊を楽しむことができるだろう。
居心地の良さがとにかくすごい
ホテル天坊に到着すると着物のスタッフたちが笑顔でお出迎え。またロビーには鮮やかな生花がいけられているなど、ホテルに入った瞬間思わず声が出そうな豪華な空間が拡がっている。ロビーだけではなく、廊下から風呂場まですべてがモダンで温かみのあるデザインとなっており、とにかく居心地が良い(あまりの良さに街にくりだすのがためらわれるほど!)。
部屋の窓を開けると、庭園のせせらぎの音。また天坊の別の部屋からは渋川市が一望できるなど、部屋からの景観も素敵。また全室無料のWi-Fiが完備されているのも嬉しいところだ。伊香保に唯一の屋外プールもあるので、夏季は温泉以外の楽しみ方もできる。
金銀ふたつの名湯を楽しめる
また天坊でとにかく素晴らしいのが大浴場だ。温泉は2種類の源泉を引いており、1000坪の広大敷地に広がる大浴場「天晴(あっぱれ)の湯」と天然記念物の三波石を600トン使用した「岩風呂」(こちらは時間によって男女が入れ替わり)を楽しめる。今回は利用しなかったが貸切露天風呂や、露天風呂付きの客室もあるので家族やカップルはぜひ。
天晴の湯は、広くて湯量たっぷりの内風呂も良いし、緑に囲まれた露天風呂も最高だ。お湯は平成になって開発された伊香保温泉の新しい源泉はしろがねの湯、伊香保温泉に古くから湧き出る源泉はこがね色のこがねの湯の2種類がある。前者は病後回復期・疲労回復・健康増進の効能があり、後者は源泉かけ流しで、神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・冷え性・疲労回復…など効能は多種多様。
個人的には男風呂の「ねたろうの湯」が最高。緑をながめ小鳥の声を聞きながら、寝たまま伊香保の名湯を楽しめる。そのそばにある「だんだんの湯」では打たせ湯もできて、肩こりをはじめ体のこわばりをしっかりとほぐすことができた。
そして岩風呂は、天然記念物の三波石をつかった庭園のように広い大浴場。奇岩が配置された浴場内は、庭園のような美しさ。その中でのんびりと温泉につかることができる。こちらもしろがねの湯とこがねの湯があり、泉質の違う2つの湯で存分にリラックスができた。また昼間は岩の荘厳なイメージ、夜はお湯と石の幻想的なイメージと、時間によっても違う雰囲気。
ちなみに天坊で素晴らしいと思ったのは、大浴場の下足入れ。下駄箱内には紫外線をつかったスリッパの消毒が行われるシステムがあり、また付箋とペンが置いてあって、自分のスリッパに名前が書けるようになっている。宿でよくある自分のものを他人が履いていってしまう心配がないのだ。
クリアでクリーンな温泉に浸かった後、自分の清潔なスリッパで部屋に帰れるのが嬉しいかぎり。
丁寧な接客と料理は舌も心もとろかせる
天坊での今回の夕食は個室会席「湯の花亭」。すべての部屋が個室で、畳敷きの広い廊下を案内され部屋に行くのだが、その体験だけでもとってもゴージャス。
この日のメニューは、前菜(車海老葛打ち、芹胡麻和え、北寄貝酢味噌がけ、沖目鯛蕗味噌焼、わらび烏賊、鴨燻製、花麩)、お造り(桜鯛皮霜つくり、赤貝殻盛り、こんにゃく、妻一式)、吸物(竹の子真薯、白魚、わらび、桜花、木の芽)、揚げ物(山菜天麩羅<こごみ・独活・タラの芽・蕗の茎>、レモン、塩)、焼物(焼き竹の子、牛炙り焼き、フォアグラ、蕗山椒煮)、食事(桜海老釜飯)、赤出汁、漬物、水菓子(柏餅、メロン、洋梨ケーキ、わらび餅)。
この文字の並びの通り豪華な内容だ。しかも一部には地元の食材を使いながら、伊香保トップクラスの腕前の料理人たちが作るのだからもちろん美味しい。またこちらの食事のペースに合わせて、一品ずつ持ってくれるので、熱々のものは熱々に、冷たいもの冷たいままに美味しく食べられる。
食事場所は湯の花亭の他に、せいろ蒸しとワインが楽しめるダイニングルーム・アスティア、掘りごたつ式で地産地消のメニューや網焼きが楽しめる船尾、バイキングが楽しめる食座・旬の坊がある。
朝食は旬の坊でのモーニング・ビュッフェ。地元食材をふんだんに使った料理や、渋川・伊香保の郷土メニューがたくさん。とにかくすごいのはその品数だ。またオープンキッチンでは、焼き立ての目玉焼き、魚、オムレツなどを提供。ふわとろのオムレツは絶品で、そのあまりの美味しさに多くの客が並んでいるが、ぜひチャレンジを!
ガッツリ食べたい人には麻婆豆腐やヘルシー肉団子といった中華メニュー、すっきり食べたい人には、手作りの豆腐や蒸し野菜なども、好きなだけ食べられる。朝だというのに、何度もおかわりにはしる人がたくさん。それだけからも料理の美味しさがわかるだろう。
夏は避暑地、冬は温泉と、どんな季節でもじっくり楽しめる伊香保において、地元随一と言われるホテル天坊は、お湯よし食よし居心地よし。こちらは人気ホテルのため、早めにチェックしないとすぐに予約が取れなくなってしまうそうだから、気になった方は早めのチェックがよいだろう。