一色萌のアイドル、色々。第7回 「アイドルとヲタ用語」

暑かったり寒かったり、不安定な気候が続き、そうこうしているうちにあちらこちらがイルミネーションで飾られる時期になりました。
そんな今日この頃、私は思いっきり風邪をひきましたが、みなさんはいかがお過ごしですか。(そういえば先月も体調を崩していた気がする……。)

こんにちは。プログレアイドル・xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。通称・キスエク)の一色萌(ひいろ・もえ)です。

1ヶ月に一回のペースで更新しているこの連載、回をおうごとに体感周期が短くなっているような気がしています。
これもせわしない年末に着々と向かっている証でしょうか。
キスエクは年末デビューのグループなので、おのずと年の瀬に大きなライブが連続します。なのでできればもう体調は崩したくない……。
病は気からと言いますので、気力だけはしっかり持ってなんとか過ごしていきたいと思います。

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さて。先日、定期的にお呼びいただいているトークイベント「若干文字数多めなタイプのアイドル女子会 #もじどる」の第四回が開催されました。

このイベントはほぼ同時期にアイドルデビューしたSAKA-SAMAのDr.まひるんさん、HAMIDASYSTEMのHASEGAWA BEETさん、そしてxoxo(Kiss&Hug) EXTREMEの一色萌の3人を中心に、アイドルたちが普段頭の中でモヤモヤと考えていることを語り合うというイベントです。

【参考リンク:今までのイベントの様子まとめ】
第一夜まとめ(2017.9.6)
https://togetter.com/li/1148253
第二夜まとめ(2018.2.6)
https://togetter.com/li/1196993
第三夜まとめ(2018.5.28)
https://togetter.com/li/1231906
第四夜まとめ(2018.11.12)
https://togetter.com/li/1288053

話す方としては毎回
「こんな話をして楽しんでいただけているのだろうか……」
「むしろファンが減るのでは……」
といった具合で客席を気にしたり気にしなかったりしながら好き勝手話しているのですが、ありがたいことになぜかご好評をいただいて回を重ねさせていただいております。
(これは本当にありがたいことで、こんなに自然体で話すことが許されるイベントは本当に本当に他にないので、聞き手のみなさんがうんざりしない限りずっと続けばいいな……と密かに願っています。)

そんな前回の#もじどるの中で、「生誕ライブ」という言葉自体が気になる、という話が上がりました。

アイドルのライブ現場に足を踏み入れたことのある方の中には、そこで使われている言葉について、驚いたり、違和感を持ったりした経験がある方も少なくないのではないでしょうか。

今回はそこからお話を広げて、アイドルやそのヲタクたちの間で使われる「ヲタ用語」について考えていきたいと思います。
少し文章が堅く感じる部分もあるかもしれませんが、どうぞ言葉遊びと思って、お気軽に。

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「生誕ライブ」について。

イベントの第二回でも生誕ライブの話題が出ていて、この連載でも過去に同様のテーマについての記事を公開しているので“またこの話題か”と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし上記の二つについては「生誕ライブをする/されるにあたっての心構え」のお話で、今回議題に上がったのは「生誕」という表現そのものに関する疑問でした。

冷静になって一度考えてみると、一人の女の子の誕生日を祝うのに、「生誕」って仰々しいような感じがしませんか。

そういえば「お誕生日会」は耳にするけれど、「生誕会」という呼び方は聞いたことがありません。
それもそのはずで、そもそも「生誕」とは神様や仏様のような神聖な存在に向けて使われる言葉なので、生身の人間に対して使うことはまずないのです。
用法としては、「キリストの生誕」「お釈迦さまの生誕」のようなケースが挙げられます。

本来の意味にも関わらず、生身の人間であるアイドルに対して「生誕」と言う言葉が使われ、そのファンの間で定着したというのは、ファンのアイドルに対する神聖視の現れなのでしょうか。

使い始めた頃こそそのニュアンスはあったかもしれませんが、今となってはただの共通言語として何の気なしに使われているような印象を受けます。
あまりにもよく聞く言葉だからこそ、あえて疑問に思うこともないのかもしれません。

だからこそ、この言葉を使われる側であるアイドルの立場から「生誕」の響きについての疑問提起が発されたことはごく自然なことのように感じました。
自分が神様ではなく人間であることは、アイドル自身が一番よくわかっているからです。

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他にもアイドル文化の中で普通に使われている言葉の中には、改めて考えるとおもしろい言い回しがたくさんあります。

例えば、「ファンをやめる」ということを意味する言葉として、アイドルヲタクの間では「他界」という言葉が広く使われます。

一般的にはあまり縁起がよい言葉ではないので初めて聞いた時はどきっとしましたが、これも共通言語であると一度認識してからは、アイドル文化の中で使用する場合に限っては特に意識することはなくなりました。

この言葉からはアイドルを応援している間その人にとってはそれが世界のすべてで、アイドルを応援しなくなるという状況がすなわち死んだも同然だ、というニュアンスを読み取れるのではないでしょうか。
ここからもまた、ファンのアイドルに対する神聖視の姿勢が垣間見えるような気がします。

もちろんそんな大仰な心意気で応援している人だけが使うことを許された言葉というわけでなく、ライトにアイドルを応援している人の間でもカジュアルに使われる言葉です。

しかしこの意味を共有しない人が耳にしたら、物騒な印象を受けてしまうであろうこともまた事実です。というのも、私自身がアイドルに詳しくない友人とアイドルについて話していたとき、不意に「他界」という言葉を使ってしまい、「アイドルのファンってやめたら死んじゃうの!?」と驚かせてしまった経験があるのです……。
それ以降、非アイドルヲタの友人と話すときには相手に伝わらない言葉を使っていないか、少し注意しながら話すようになりました。

ライトに「他界」して、また新しくアイドルを応援して、またいつか「他界」する。とんでもなく早いサイクルで輪廻転生が繰り返されるアイドル現場は、ある意味極楽と言えるかもしれません。

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ちなみに、「ファンをやめる」という言葉の言い換えとして、ジャニーズを応援している方々の間では「降りる」、ヴィジュアル系を応援している方々の間では「上がる」という言い方がされています。

ファン層のあまりかぶらない分野でも同じようにファン同士での共通言語が生まれ、時には「降りる」と「上がる」のように、本来全く正反対の言葉であるにもかかわらず同じ意味として使われるとケースがあるということは、とても関心をそそられる事象です。

また、それぞれの言葉から、応援される対象とそのファンがどのような位置関係で関わっているのかということがなんとなく見えてきます。
同じ「ファンをやめる」ということを表しているにも関わらず、そのコミュニティによってこんなにも言葉に違いがあるというのは、とても興味深いことです。

きっともっと私のまだ知らない分野にもこういった文化がたくさん存在していて、比較するとおもしろい言葉があるのでしょう。
こういうのって学問でいうとどんな分野に分類されるのでしょうか。
言語学系?社会学系?それとも人文学系?
こういった分野にお詳しい先生がいらっしゃったらお話を伺ってみたいと常々思っておりますので、お心当たりの方がいらっしゃいましたらぜひご一報ください……!

【プロフィール】
一色 萌(ひいろ もえ)

ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと
WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)

https://twitter.com/hiiro_moe
https://twitter.com/xoxo_extreme
https://www.youtube.com/channel/UCA7fn3DZFJGDmlxZZg8WQVA
Email : contact@twelve-notes.com

【グループプロフィール】
xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)
楠 芽瑠・一色 萌・小日向 まお・小嶋 りんの4名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。プログレとは、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等が特徴の楽曲です。

2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。

ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。

2018年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。

同年2月4日に記念すべき初のワンマンライヴを鹿鳴館にて開催。プログレッシヴロックを知っている人も知らない人も楽しめるLIVEと評判。

編集部: