本物のコーヒーを作り続けて66年。小川珈琲ではコーヒー豆の栽培からカップに入れるその時まで、徹底した品質向上と品質管理がされた一握りのコーヒー豆を「スペシャルティグレード」と呼んでいる。今回はこの最高グレードのみを扱う『スペシャルティコーヒー シングルオリジン』シリーズの3種類を味わってみよう。
酸味・苦味・バランスの3タイプ。好みに合わせて飲んでほしい
小川珈琲株式会社(京都市右京区)の販売する『スペシャルティコーヒー シングルオリジン』は、「スペシャルティグレード」と呼ばれる同社の扱う商品の中でも徹底した品質向上と品質管理がされたコーヒー豆だ。
スペシャルティコーヒーの具体的な定義は“素晴らしい風味特性のあるコーヒー”とされており、徹底した品質管理と品質向上策を栽培当初から行っているため当然収穫量も少なく価値も必然と高くなっている。
また、このシリーズの最大の特徴と言えるのがシングルオリジンだ。通常コーヒーは地域ごとにまとめて○○産と扱われるのだが、このシリーズは単一農園のコーヒー豆のみを使用している。そのため農園ごとの特色が味にも反映されており、爽やかな明るい酸味や甘さがより際立った味を楽しむことができるのだ。
それはまさにワインと同じように土壌や環境や農園主の影響を受けるため、唯一無二の純粋な味を楽しむことができるコーヒー豆と言えるだろう。カタログなどには生産者の名前が記載されており、「生産者の顔が見えるコーヒー」づくりへのこだわりが垣間見える。
今回検証するのはいずれも2018年9月1日に発売された3つの新商品。
- 『エチオピア タデ GG ナチュラル』(豆120g・希望小売価格 税抜800円)
- 『ブラジル セルタオジーニョ パルプドナチュラル』(豆120g・希望小売価格 税抜700円)
- 『エルサルバドル ロスアルぺス ウォッシュド』(豆120g・希望小売価格 税抜1,000円)
この『スペシャルティコーヒー シングルオリジン』はそれぞれの味が大きく違うのが特徴。中でも影響力を持つのがコーヒー豆となる生豆をとり出す精選方法だ。大きく「ナチュラル」、「パルプドナチュラル」、「ウォッシュド」の3種類があり、各手法によって風味などが変化する。
エチオピア タデ GG ナチュラル
標高2000m以上に位置するグジ地区シャキッソ村にあるタデGG農園で栽培されたコーヒー豆。農学者でもある農園主のタスファイ氏によって均一な熟度の豆に仕上がっている。
精選方法は「ナチュラル」。古くからある伝統的な方法で、収穫後に果皮・果肉を残したまま天日乾燥し貯蔵庫で寝かせた後、脱穀機にかける手法だ。独特な風味が育成され、豆本来の味が生かされる。
香りはレッドグレープ、とのことらしいが記者は加えてチョコレートのような香りも感じた。温度が高いとチョコレートが強く、低くなるにつれて酸味のあるレッドグレープが表れてくるイメージだ。
すっきりとした酸味と控えめの苦味。甘味もしっかり感じられて、甘味⇒酸味⇒苦味と変化をしていく。ナチュラル精選は豆本来の風味を出す一方、雑味などもそのまま出してしまうのだが、さすがはスペシャルティグレード、無駄な味を感じることはなくすんなりと飲むことができた。
紅茶のようなフルーティな酸味と甘味を持ち、苦味はほとんどないので、コーヒーが苦手な人でも飲みやすそうだ。
ブラジル セルタオジーニョ パルプドナチュラル
ブラジルのミナスジェライス州スルデミナスの山岳地帯にあるセルタオジーニョ農園で栽培されたコーヒー豆。小川珈琲では完熟すると黄色になる希少品種「イエローブルボン」のみを指定するなど品質管理にも徹底したこだわりを持っている。
精選方法は「パルプドナチュラル」。「ナチュラル」と「ウォッシュド」の中間にあたり、収穫後水洗いをし、果皮・果肉を剥いた後、ミューシレージと呼ばれるぬめりを残したまま乾燥。貯蔵庫で寝かせた後に脱穀機にかける手法だ。ミューシレージを残すことでコーヒー豆に甘味などの風味を持たせることができるが、乾燥が進むにつれてベトベトとくっつくため、均一に乾燥させるためには定期的に攪拌させるなど細心の注意が必要となる。
香りはビターアーモンドを思わせる香ばしさとクリアな透明感を併せ持つ。
酸味と甘味がありつつも苦味が主張をしており、酸味が苦手な人にもおすすめできるバランスの良い品種。風味と相まってコク深さが後味に残る。
強いパンチは無いがローストや淹れ方次第でまた違う表情が見られそうなので研究してみたいところ。ミルクなどを入れても合いそうだ。
エルサルバドル ロスアルぺス ウォッシュド
エルサルバドル西部にあるサンタアナ火山のふもとに広がるロスアルぺス農園。天然の豊富な養分を含んだ火山性土壌を利用した栽培がされているのが特徴だ。農園では品質向上のために農園主のアイダ氏が従業員に指導を行っている。
精選方法は「ウォッシュド」。世界で広く行われている方法で、収穫後水洗いをし、果皮と果肉を除去。さらにミューシレージを取り除き再度水洗いを行い、乾燥。貯蔵庫で寝かせた後に脱穀機にかける手法だ。
果皮・果肉を取り除き乾燥させることで、スッキリとクリアな風味となりやすい。品質も一定に保ちやすくなる。
香りから酸味の含んだ爽やかさが伝わってくる。ゴクッと一口。酸味が少々強めで後味に甘味が顔を出してくる。苦味は全体的に万遍なくといった感じ。
先ほどの『ブラジル セルタオジーニョ パルプドナチュラル』よりもそれぞれが際立っているのおり、朝の1杯におすすめ。
どれもそのままで飲める高クオリティ!
飲んでみた感想だが、酸味が好きなら『エチオピア タデ GG ナチュラル』、苦味が好き又はミルクなどを入れたい場合は『ブラジル セルタオジーニョ パルプドナチュラル』、ほんのりとした甘味を楽しみたいなら『エルサルバドル ロスアルぺス ウォッシュド』がおすすめ。
いずれのコーヒーも雑味はほとんどなくすっきりとした味わいなので、まずはブラックで豆の特徴を堪能してみてほしい。
全国のスーパー、小川珈琲オンラインショップなどで発売中。