梅酒というと、梅由来の健康イメージが先に立ったり、その甘みから女子の入門しやすいお酒というイメージがあるかもしれない。そんないささかヌルい印象の梅酒に喝を入れるかのように誕生したのが『山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒』である。ジャパニーズウイスキーの名品「山崎」の蒸溜所で生まれたこの梅酒、普通の梅酒と思ったら大間違い!
ウイスキーは樽に始まり、樽に終わる…。そんなウイスキー作りのノウハウを活かした新たなる梅酒『山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒』の秘密
一般的には中国などアジア富裕層の増大でウイスキー消費量が多くなったことが要因と考えられている、世界中のウイスキー原酒不足。中でも「山崎」「白州」に代表されるサントリーのジャパニーズウイスキーも評価が高く、原酒不足に陥った。ウイスキーはおよそ5年以上の熟成期間が必要なので、売れたからといって増産というのにも限界がある。
そこでメーカーとしては、その技術で熟成期間が短くて済むジンやウオッカの生産で急をしのぐ戦術に出た。そしてその流れで、梅酒にも注目が集まり、今回の製品化となった。それがサントリースピリッツ『山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒』(750ml・希望小売価格 税抜3,000円・2018年10月6日発売)。ただこの梅酒、ただの梅酒ではない。それはどういうことか。
千利休由来の名水の地に建てられた日本初のモルトウイスキー蒸留所が山崎蒸溜所
山崎蒸溜所が生まれたのは1923年。スコッチの本場・スコットランドの技術を得て作られた。なので一般にジャパニーズウイスキーと言えば、スコッチ由来の流れをくむものである。ただ独自に進化していくうちに、日本ブランドとして世界に名を轟かせることとなる。
ウイスキーの基本は樽。樽に入れて熟成されるものなのだが、作りたての樽がいいという訳ではない。楢や樫を材料とするオーク樽(その中で産地によりアメリカンとヨーロピアンに分かれる)、純日本産のミズナラ樽、甘みが特徴のシェリー樽、文字通りバーボン熟成に使った後のバーボン樽などが代表的。
つまり他の酒の熟成に使った中古(?)の樽の方が、価値があったりする。そして山崎蒸溜所ではウイスキーの熟成に使うホッグスヘッド(ホワイトオーク)樽を何と、珈琲豆のように焙煎して使用している。樽の内側からじっくり焙煎すると、木材から染み出してくるバニリン。これはいわゆるバニラ臭の主成分となる甘い香りだ。
そんなこだわり抜いた樽を使用して、梅酒を熟成してしまったというからよだれが出てくる…。
こだわりのウイスキー樽で熟成した梅酒に、梅酒樽で熟成したウイスキーをブレンドするというややこしやな製法で生まれた究極の梅酒!
こだわりのウイスキー樽で熟成した梅酒、それだけでも良いではないかと思ってしまう。
しかし今回紹介する『山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒』はそこに、よりウイスキー感を高めるべく、梅酒樽で熟成したウイスキーを入れて仕上げたという、まさに梅酒の進化系的新製品なのである。ウイスキー樽で熟成した梅酒に、梅酒樽で熟成したウイスキーをブレンドというかなりややこしい製法。その結果がどうなったかは、実際に飲んで確認してみたい。
バニラのような甘い香りとスイートな梅酒の味わい、そこに重厚なウイスキー感が加わって、絶妙な味わいに! これぞ新定番
瓶を見ただけでわかる、きれいな黄金色。それを実際にストレートで味わってみる。開栓すると確かに昔母親が漬けていた梅酒の香りもするのだが、どこかが違う甘い香り。クイッと飲むとふくよかで芳醇な梅由来の香りと梅酒の丸みのある味が口いっぱいに広がる。しかしそこには大人の本格派酒好きでも唸る重厚感も加わっているのだ。
これを梅酒と思って飲むと、不思議に感じるくらい、その香りだちと甘みと梅感は新しい美味しさ。ややこしい製法をとるだけの理由を、しっかりと納得した。
もちろんアルコール度数は17%あるので、飲みやすいからとクイクイいってしまえば泥酔だ。ちびちびと舐めるように味わうか、キリッと氷と共にロックで、さらにソーダで割る方が安心だろう。最近飲んでいない人は特に、改めて梅酒の実力に感銘を受けて、ハマってしまうかもしれない。
もちろんその特有のハーモニーは、どんな飲み方をしてもしっかりと主張してくるので安心を。食がすすむタイプの味わいでもあるが、できればじっくり単品で嗜みたくなる、特別なお酒だと思った。
入手は全国の酒販店などで可能だ。
ちなみにこの美味しさを簡単に味わえるRTD缶タイプの「山崎蒸溜所貯蔵 焙煎樽熟成梅酒 ソーダ割り」(350ml缶・税抜198円・発売中※アルコール度数5%)も存在する。