あなたはアイドルが好きですか?
アイドルという存在に、興味がありますか?
アイドルにどんなイメージをもっていますか?
道ゆく人に突然こんな質問をしたらどんな答えが集まるのだろう、とよく考えます。
ポジティブな意見もネガティブな意見も出るとは思いますが、一度でもアイドルを応援したことのある人とない人、その応援の熱量、深度によって回答は大きく異なるのではないかと思います。もしかしたら世間的にはあまり興味がない、むしろ小馬鹿にするような反応が大半を占めるかもしれません。
想像するだけで少し悲しくなってきました……いや、それでもいいんです。
少なくとも今このページを開いているあなたはアイドルについて好意的な方ではないかしらと思っているのですが、いかがでしょう?
初めまして。プログレアイドル・xoxo(kiss&hug) EXTREME(キスアンドハグ エクストリーム。以下、キスエク)の赤色を担当しております、一色萌(ひいろ・もえ)と申します。一色と書いて「ひいろ」と読みます。
ややこしい名前ですみません。そして最初から質問責めにしてすみません。
まずは少し、わたし自身とこのコラムについての紹介をしたいと思います。
わたしはアイドルが好きで、アイドルが好きな皆さん(わたしはこの方々を親しみと敬意を込めてオタク/ヲタクと呼びます。)が好きで、アイドルを取り巻く文化が大好きです。
わたしは父がハロプロ(ハロー!プロジェクトの略。モーニング娘。等が所属するアップフロントグループの運営するアイドルプロジェクト)のヲタクだった影響で、物心ついた頃からアイドルの映像ソフトが身近にあり、アイドルが好きなことが当たり前の環境で育ちました。
高校〜大学生の時期になって自分の意思で外に出かけることを覚えると、家で映像を観ることが最上級の応援だった時期を脱してライブ会場で直接応援することの楽しさにのめりこみ、「地下アイドル」「ライブアイドル」と呼ばれるライブの現場へと足繁く通うようになりました。そうして、順調にアイドル愛をこじらせた結果、アイドルのことをもっと知りたいがために自分がアイドルになってしまいました。
今も昔もわたしの頭の中はいつもアイドルのことでいっぱいです。
活動をする中でアイドルヲタクからアイドルになったからこそ面白いと思えたできごとや、冒頭で問いかけたようなアイドルに関する様々なお題、ライブや音源の感想、考察などが、アウトプットされることなく日々くすぶっています。
このコラムではそんな個人的なモヤモヤを文字に起こしてみなさんと共有することで、「ちょっと面白い暇つぶし」くらいに昇華できたらいいなと思っています。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は第1回ということで「アイドルとあなた」という最も根本的で普遍的な存在について考えていきたいと思います。
「アイドル、色々」とタイトルにつけた通り、現在のアイドルを取り巻く要素は色々で、その影響の及ぶ範囲は今も拡大し続けています。
しかし、言葉だけが拡大・縮小・コピーを繰り返されるうちに人々の間で「アイドル」の定義は曖昧なものになり、「誰でもアイドルになれる」という華々しい言葉には「誰もアイドルではない」という虚無感が表裏一体としてつきまとっているようにも感じます。
アイドル=IDOLは“偶像”と訳されます。しかしながら、いまアイドルとして活動している多くの子たちの在り方は必ずしも偶像的ではなく、むしろ限りなく実在的で身近です。
人間離れしたスター性を持つものこそがアイドルだと信じられた時代を経てその価値観が廃れないまま、ほとんど真逆の存在が同じアイドルとして急速に市民権を得て行く様はなんだかおかしくて、痛快ですらあります。「アイドル」とは、なんと大らかな名詞なのでしょう。
しかし、アイドルは見る人が認めなければ「アイドル」にはなれません。
いくら頑張って歌って踊っても、受け手の承認なしには存在自体が確立できないのです。でもその論理を逆手に取れば、よく行くコンビニの店員さんもあなたにとってのアイドルになり得ます。アイドルにとってあなたの存在は絶対に不可欠です。「アイドル」という存在の定義に大きな変化が起こっても、受け手である「あなた」の立場の重要性は変わることがありません。
一見いびつでありながらうまくかみ合っているこの関係性が面白くて、わたしは自己紹介するときに「アイドルとヲタクが好き」とあわせて宣言しています。
アイドルはオンリーワンでありながら代替可能であるという矛盾を抱えた存在です。
例えば今、どこかで1人のアイドルが卒業したとしても、その穴は残るメンバーもしくは新メンバーが補填して続いていきます。1つのアイドルグループが解散したとしても、今後そのグループが活動していれば出演したであろうイベントには違うグループがブッキングされて、現場は回っていきます。
アイドル個人もグループも飽和状態にあると言える状況になってから久しい昨今、風化のスピードも新しいアイドルの生まれるスピードと同様に加速しています。
推しがいなくなってもヲタクは新しい推しを見つけ、元アイドルは何事もなかったかのように普通の女の子に戻り、悲しいかな、アイドル界の大勢にも影響がないのが現実です。
アイドルになることに対するハードルが低くなると同時に、アイドルを辞めるという選択肢もある程度カジュアルに選べるようになりました。ならば、それを取り巻く人々もタフになっていくことはなんら不思議なことではありません。
個人的には基本、軽い気持ちでアイドルを始めたり辞めたりする子は好ましくないという考えを持っていますが、この活発な新陳代謝によって生まれた新しい価値観や潮流は興味深いと感じています。
軽い気持ちでアイドルを始めた子は「アイドル」ではないとか、そういうことが言いたいわけではないのですが、なかなか納得のいくうまい表現が見つからないので、実体験に基づくお話しをしたいと思います。
わたしにはたくさん好きなアイドルさんがいますが、最初に「推し」として好きになったミチバヤシリオさん(元BiS。2013年9月脱退)は今でも特別だと感じています。
大学生だった彼女は興味本位でアイドルになり、1年5ヶ月の活動ののち、就活をしたいからという理由であっさりとアイドルを辞めてしまいました。
初対面で死ぬほど塩対応をされてから彼女に興味がわき、急激にBiSにハマったことは今のわたしにとってとても重要な経験となっています。
彼女がアイドルではなくなってから5年が経とうとしている今でもこうして名前を出すというのはどれだけ入れ込んだ存在なんだ、と思われるかもしれません。
しかし振り返ってみると、たくさんお金を使ったとか長い期間応援していたとかそんなことは全くなく、学生だったわたしはあまりライブにも行けなかったし、応援し始めてから脱退までの期間もせいぜい半年ちょっと、当時は遠征も難しく卒業公演すら行くことができませんでした。
特に認知されることもなく、密やかかつささやかな応援ののち、彼女にとってわたしは「なんとなく見たことある子」以上になることはないまま終わりました。
それでも彼女が四六時中憧れてやまない存在だったのは、彼女がわたしにとっての「アイドル」だったから、ということ以外に説明のしようがありません。
最近ご結婚されたというニュースが飛び込んできて、“ミチバヤシリオさんだった人”である彼女の幸せを願いつつも、わたしの心の中では彼女は今でもアイドルで、一番最初に推した一番好きだったアイドルさんであるという感覚がまったく変わらないことに驚いたりしました。
アイドルがなんらかの形でそれを見た者の意識に干渉した場合、アイドルの存在はその人の中で確立されるのだと思います。
それが深ければ深いほど強く心に残るというのは、アイドルに限った話ではありません。今思えばわたしの場合は、無意識レベルで刷り込まれていたアイドルは簡単に会えないもの・アイドルはすべてのファンに対して愛想よく振る舞うものといった固定概念を壊し、大きな影響を受けた最初の相手がたまたまBiSであり、ミチバヤシリオさんであり、そのインパクトが心に深く焼きついたというだけのことでした。それはある人にとっては落ち込んでいる時に元気をもらったという経験であったり、楽曲の面白さからいままで敬遠していた世界にどんどんハマっていったという高揚感であるかもしれません。
もっと些細なことであっても、そういった経験を伴ったアイドルさんは偶像とか実在とかアイドルになった理由とか目標すらももはや関係なく、超個人的な“あなたにとっての”忘れられない「アイドル」になるのではないかな、と思い至りました。
結局、わたしにとっての「アイドル」はその時そのタイミングで、大きく心を動かされる存在であることが重要で、「なんかいい!」という心の動きだけできっと十分なのでした。ああだこうだと長々語っておきながら、こんな結びですみません……。
わたしの話をたくさんしてしまいました。改めて質問です。
あなたにとって、アイドルとはどんな存在ですか?
あなたにとって忘れられないアイドルさんのお話とか、いつか聞かせてもらえたら嬉しいです。
そしてどんな形であれ、あなたにとってのアイドルに私もなれたらいいなと、いつもこっそり思っています。
さて、そろそろ終わりにしますね。
初回から大きいテーマを設定しすぎたと、実はちょっと後悔しています。。
手探りで少しずつよい加減を探っていきたいと思いますので、どうかお手柔らかにご指導いただけますと幸いです。
一緒にアイドルのこと、色々考えていきましょう。
アイドルとしても人間としても未熟者のわたしですが、これからどうぞよろしくお願いいたします。
【プロフィール】
一色 萌(ひいろ もえ)
ニックネーム:萌ちゃん、萌氏、誕生日:5月27日、出身:東京都、血液型:A型、趣味:アイドル研究、特技、アイドルについて話すこと
WALLOP放送局「キスエクのギュッと!プログレッシヴ!」レギュラー出演中(2018.4〜)
https://twitter.com/hiiro_moe
https://twitter.com/xoxo_extreme
Email : contact@twelve-notes.com
【グループプロフィール】
xoxo(Kiss&Hug) EXTREME(キス・アンド・ハグ・エクストリーム 通称:キスエク)
楠 芽瑠・一色 萌・小日向 まお・小嶋 りんの4名からなる、プログレッシヴロック(略:プログレ)の楽曲を中心にパフォーマンスしているアイドル。プログレとは、曲調がよく変わる・曲が長い・変拍子…等が特徴の楽曲です。
2017年に、発売したシングル「えれFunと”女子”TALK〜笑う夜には象来る〜」に対して(キング・クリムゾン「エレファント・トーク」オマージュ)元キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューがその動画に「I like it!」とコメントで絶賛。
ライブ活動の他、ディスクユニオン新宿プログレ館で一日店員を務めたり、プログレファンの聖地である吉祥寺シルバーエレファントに、アイドルとして初出演。
2018年にフランスを代表するプログレバンドMAGMA公認カヴァー曲の「The Last Seven Minutes」を初披露。その動画がyoutubeにアップされると、カヴァーを公認したMAGMAが、公式Facebookで紹介したこともあり、一日で2000以上の再生数を得て話題になる。
同年2月4日に記念すべき初のワンマンライヴを鹿鳴館にて開催。プログレッシヴロックをご存知の方もご存知無い方も楽しめるLIVEと評判を頂いています。