「その昔にね「いい店教えてよ」って流行さんに言って紹介してくれたのが、吉祥寺のラーメン屋。店に行ったら、流行さんのサインも飾ってあってさ…」そう関係者が言葉をつまらせながら教えてくれたのが、東京吉祥寺のハモニカ横丁なかにある珍来亭というラーメン店だ。
■地元でも愛されていた萩原さん
萩原流行(はぎわらながれ)さんは、今月22日に杉並区高円寺の路上で起きたバイク事故で亡くなった。クセのあるキャラクターにテンガロン・ハットで人気だった役者を襲った、突然の悲劇だ。
あの格好で、西荻窪や吉祥寺などでもまれに目撃されていたという萩原さん。そのぶれないキャラクターに、地元でも「変わり者だけど、とってもいい人でした」と好人物ぶりが伝えられている。
■洒落た店構えでも創業は1951年
萩原さんのお気に入りだったという珍来亭は、昼間はラーメン屋、夜は居酒屋というお店。洒落た店構えだが、創業は1951年(昭和26年)という歴史を誇る。創業以来、2万日間継ぎ足してきたというラーメンダレが味の秘訣で、一見“昔ながらの”というやつながら、味はネオクラシック。魚介とガラの旨味があふれる、しっかりとした美味しさで、パンチも強い。
「流行さんも『スープがいいんだよ』と言っていました、そんな思い出の味です」(同前)、というラーメンはたしかに美味しい。古びなくしっかりと主張のある味わいなので、「懐かしい」なんて言わずに「美味い!」と素直に言える味。とはいえこんなに美味しいのに、その後味は今はとてもさみしい、それしかない。
珍来亭/東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-9
文/関本尚子